「こうほうし」を漢字で書く場合、「広報紙を発行する」「広報誌に掲載する」などのように二つの書き方があります。
さらに似たような言葉で「機関紙」や「機関誌」が使われることもあります。今回はこれらの言葉の違いについて詳しく解説しました。
広報紙・広報誌の違い
最初に、それぞれの意味を辞書で引いてみます。
【広報紙(こうほうし)】
⇒広報や連絡や周知などを目的に、定期的に発行される小冊子や小雑誌などのこと。
【広報誌(こうほうし)】
⇒企業や団体が広報活動の一環として刊行する出版物。PR誌。
出典:実用日本語表現辞典
「広報紙」とは「広報や連絡や周知などを目的に、定期的に発行される小冊子や小雑誌」を指します。
一方で、「広報誌」とは「企業や団体が広報活動の一環として刊行する出版物」を指します。
両者に共通する「広報」とは「広く報告すること」、すなわち「一般の人に広く知らせる行為」を意味します。企業以外には、国や都道府県、市町村などが出版することもあります。
いずれにせよ、これらの団体が自分たちの活動や業務内容をPRする際に「こうほうし」を発行するわけです。
では、この二つはどう使い分ければよいのでしょうか?
簡単に言えば、出版物の見た目が「タブロイド版などの新聞紙型」であれば「広報紙」を使うことになります。対して、出版物の見た目がA4判・B5判などの雑誌型であれば「広報誌」を使うことになります。
「タブロイド版」とは「一般的な新聞紙の半ページ分の大きさ」のことを指します。これくらい大きい刊行物は、「広報紙」と呼ぶのです。
一方で、「広報誌」の方はそれよりも小さい「A4~B5サイズほどの大きさ」を指します。ただし、A4判・B5判程度の大きさでも数ページしかない刊行物の場合は「広報紙」と書くことが多いようです。
理由については両者の語源にあります。元々、「広報紙」の「紙」は「新聞紙」の「紙」からきました。対して、「広報誌」の「誌」は「雑誌」の「誌」からきました。
つまり、金具などで綴(と)じられていないものは「紙」を使い、ある程度の厚さがあり、金具で綴じているものは「誌」を使うというのが本来の使い方だったわけです。
したがって、現在では数ページほどの刊行物に対しては、大きさに限らず「広報紙」を使っているのです。
迷った場合は「広報紙」を用いる
両者の違いについては理解できました。基本的には、①「刊行物の大きさ」②「ページ数の多さ」の二点で判断して使い分ければ問題ありません。
ただし、実際には必ずしも上記のような使い分けはされていないようです。例を挙げますと、日本広報協会が毎年行っている「全国広報コンクール」というものがあります。
この大会では、「広報紙都市部」「広報紙町村部」などの部門を使っています。また、文部科学省が行っている「国立大学の広報を表彰する制度」でも、毎年「優秀広報紙」を選んでいます。
もちろん、これらの大会に出される刊行物は、新聞型の「広報紙」だけではありません。むしろ、雑誌型の「広報誌」の方が多いと言われています。ところが、実際には「広報紙」として統一されているのです。
その理由は、「こうほうし」ができた過去の経緯にあります。まず、昭和30年代までは新聞型の広報紙の方が雑誌型の広報誌よりもはるかに多くありました。昔は雑誌そのものの数が少なかったからです。
しかし、時代と共に雑誌が増えてきた結果、「広報誌」も使うようになったのです。つまり、現在「広報紙」を使うことが多いのは、当時の名残りや慣習が残っているからということになります。
その証拠に、現在では新聞紙型と雑誌型を総称して言う時は、「広報紙」を用いるのが一般的です。したがって、もしもどちらを使うか迷った場合は、「広報紙」を使うのが無難だと言えます。
広報紙と機関紙の違い
「広報紙」と似た言葉で、「機関紙(きかんし)」があります。
「機関紙」とは「組織内部に向けた刊行物のこと」です。
主に、政治団体などが組織のメンバーに情報を伝えるような時に刊行されます。日本で言えば、自民党や公明党などが挙げられます。
「機関紙」の特徴としては組織の内部に向けて情報を発することが挙げられます。
一方で、「広報紙」は組織の外部に向けて情報を発します。例えば、自分たちの活動をPRする目的でその内容を紙面に記して発行したりといったことです。
よって、「機関紙」と「広報誌」の違いは「組織の外部と内部、どちらに向けて発行するか?」という点にあります。また、「機関紙」の方は原則として企業が発行する雑誌などには使わないといった違いもあります。
なお、「機関紙」と「機関誌」の違いは、「広報紙」と「広報誌」の違いと全く同じです。すなわち、「新聞紙型」かそれとも「雑誌型」かということになります。
似たような例だと、「紙面」と「誌面」、「紙上」と「誌上」なども同様と言えるでしょう。
まとめ
以上、今回のまとめとなります。
「広報紙」=広報や連絡や周知などを目的に、定期的に発行される小冊子や小雑誌。
「広報誌」=企業や団体が広報活動の一環として刊行する出版物。
【使い分け】⇒出版物の見た目が「タブロイド版などの新聞紙型」であれば「広報紙」を使い、A4判・B5判などの雑誌型であれば「広報誌」を使う。
「機関紙」=組織内部に向けた刊行物。「こうほうし」と異なり、組織の内部に情報を発する。
「広報紙」と「広報誌」は厳密に言えば異なる言葉です。ただ、両者をまとめて言う時は「広報紙」を使うのが一般的です。それぞれの語源や歴史まで覚えておけば、違いを区別しやすいでしょう。