「きせい」という言葉は、漢字だと二つの書き方があります。
「既成概念」「既製品を買う」
両方とも似たような漢字ですが、どのように使い分ければいいのでしょうか?今回は、「既製」と「既成」の違いについて詳しく解説しました。
既成の意味
まずは、「既成」の意味からです。
【既成(きせい)】
⇒すでにできあがっていること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「既成」とは「すでにでき上がっていること」という意味です。例えば、以下のように使います。
- 既成事実(すでに成立している事実)
- 既成概念(すでに成立している概念)
このように、「既成」とは世の中に広く存在しており、物事がすでに出来上がっていることを表す言葉となります。
漢字の成り立ちを確認しておくと、「既成」の「既」は「既(すで)に」と読める漢字です。また、「既成」の「成」は「成功」「完成」などがあるように「なしとげる」という意味があります。
したがって、「既成」を使う対象としては「物事としてすでに成立しているもの」であることが分かるかと思います。
既製の意味
続いて、「既製」の意味です。
【既製(きせい)】
⇒注文に応じて作るのではなく、製品としてすでにでき上がっていること。出来合い。レディーメード。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「既製」とは「すでに製品としてでき上がっていること」という意味です。使い方は以下の通りです。
- 既製品のスーツ。
- 既製品のカーテン。
スーツやカーテンは、事前の注文で「色・サイズ・生地の種類」などを自由に変更することができます。一方で、このようなオーダーメイドな注文ではなく、すでに店頭に並んでいる商品のことを「既製品」と言うわけです。
こちらも漢字の語源を確認しておくと、「製」という字は「製造」「製法」などがあるように「こしらえる」という意味があります。よって、「既製」の方は「製品として完成しているもの」に使うということが分かるでしょう。
既成と既製の違い
ここまでの内容を整理すると、
「既成」=すでにでき上がっていること。
「既製」=すでに製品としてでき上がっていること。
ということでした。
両者の違いを簡単に言うと、「形があるものに使うかどうか」だと言えます。
「既成」は、「概念」や「事実」など原則として「形がないもの」に使います。一方で、「既製」は「衣類」や「カーテン」など「具体的な形があるもの」に使います。
別の言い方をすれば、「目に見える商品や製品に使うかどうか」と考えてもらっても構いません。なぜなら、「既製」の方は企業が作る商品以外にはほとんど使われないからです。
まとめると、
「既成」=目に見えず、形がないもの(物事)に使う。
「既製」=目に見えて、形があるもの(商品)に使う。
となります。
なお、それぞれの「対義語」は次の通りです。
「既成」⇔「未完」「既製」⇔「注文」
「既成」の方は、「まだ完成していない」という意味の「未完(みかん)」、「既製」の方は「特別にあつらえる」という意味の「注文」となります。
「注文」の方は「オーダー・メイド」という言い方もします。この「オーダー・メイド」に対する言葉を「レディー・メイド(既製)」と言います。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で確認しておきましょう。
【既成の使い方】
- キリスト教や仏教などは、既成宗教と呼ばれる。
- 既成概念にとらわれず、積極的に行動していく。
- 既成の文学作品にはあまり見られない表現が多い。
- 既成道徳は、時代に追い付いていない部分もある。
- 特定の思想を持って既に活動している政党を既成政党と言う。
【既製の使い方】
- 既製服を買ったが、サイズがちょうどであった。
- 既製品ではなく、オーダーメイドで服を購入する。
- 大量生産によって、コストを切り詰めた既製品を作る。
- 建売住宅の窓は、既製のサイズで設計されている。
- 既製曲の無断使用は、著作権の侵害にあたる。
使い分けの原則としては、「形のある・なしで判断する」ということでした。ただし、場合によっては「形のないもの」でも「既製」を使うことがあります。例えば、最後の「既製曲」です。
この場合は、「既製曲」=「すでに製品として販売された曲」という意味の言葉です。このような例外もあるので注意してください。迷った場合は、本来の語源に戻り、「成立するものか」「完成しているものか」で考えるようにしましょう。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「既成」=すでにでき上がっていること。⇔「未完」
「既製」=すでに製品としてでき上がっていること。⇔「注文」
「使い分け」⇒「既成」は形がない物事に使い、「既製」は形がある商品に使う。
どちらも普段の文章でよく使われる言葉です。これを機に正しい使い分けを覚えて頂ければと思います。