公共の団体や場所へお金を贈ることを「寄付」あるいは「寄贈」と言います。また、場合によっては「贈呈」と言ったりもします。
これらの言葉はどのように使い分ければいいのでしょうか?本記事では、「寄付」と「寄贈」の違い、さらに「贈呈」についても解説しました。
寄付の意味
まずは、「寄付」の意味からです。
【寄付(きふ)】
⇒金品を贈ること。特に、公共の団体や社寺などに金品などを贈ること。
出典:三省堂 大辞林
「寄付」とは「公共の団体などへ金品を贈ること」を意味します。例えば、NPO法人や日本ユニセフ協会などの団体へお金を贈ることは「寄付」です。
「寄付」は、公共の団体に無償でお金を提供するような場合に使います。逆に言えば、利益を得ている一般企業や営利団体などに対しては使いません。
また、贈るモノとしては「金品」が対象となります。「金品」とは簡単に言うと「お金や財産のこと」です。身近な例だと、現金以外にも時計や指輪などが金品に含まれます。
寄贈の意味
続いて、「寄贈」の意味です。
【寄贈(きぞう)】
⇒(主として学校などの公共性の高いところに)品物を贈ること。
出典:三省堂 大辞林
「寄贈」とは「学校などの公共性の高いところに品物を贈ること」を意味します。
例えば、小学校へ本を贈ったり病院へ機器を贈ったりすることは「寄贈」だと言えます。
「寄贈」は「公共性のある場所へ品物を贈る」という点がポイントです。「公共性」とは「社会全体が関わっている」という意味です。
学校も病院も社会全体が関わっているような場所です。このようなみんなが関わるような場所へ人が使える品物を贈ることを「寄贈」と言うわけです。
寄付と寄贈の違い
ここまでの内容を整理すると、
「寄付」=公共の団体などへ金品を贈ること。
「寄贈」=公共性の高いところに品物を贈ること。
ということでした。
両者の違いは、二つの点から比較すると分かりやすいです。
一つ目は、「贈るモノの違い」です。
「寄付」は「金品」を相手に贈ることを表します。対して、「寄贈」は「品物」を相手に贈ることを表します。
したがって、いくらお金がかかろうが、1万円の本を被災地に送ってもそれは「寄付」とは言えません。なぜなら、本というのはあくまで品物であって財産ではないからです。
逆に、極端に少ない金額の「現金10円」などでも、被災地に贈ればそれは「寄付」ということになります。
そして二つ目は、「贈る対象先の違い」です。
「寄付」は公共の団体に対して幅広く使います。また、場合によっては「個人」に対しても使うこともあります。
一方で、「寄贈」は学校などの教育機関、病院などの医療機関などのように対象が限定されます。
これはなぜかと言いますと、すでに説明した通り、「寄贈」の方は品物を贈る行為だからです。
「寄贈」する場合は、大前提として品物を置けるような場所しか対象になりません。そのため、「寄贈」の方は贈る対象先が限定されるのです。
贈呈の意味
似たような言葉で「贈呈」があります。
【贈呈(ぞうてい)】
①人に物を贈ること。
②公式の場などで、人に物を贈ること。
出典:三省堂 大辞林
「贈呈」とは「人に物を贈ること・公式な場で人に物を贈ること」などを意味します。
「贈呈」は、「人に贈る」という点がポイントです。この時点で、団体や機関に贈る「寄付」や「寄贈」とは異なる言葉であることが分かるでしょう。
また、同じ「物を贈る行為」でも「贈呈」は立場が上の相手に送ります。例えば、「結婚式での花束贈呈」や「記念品の贈呈」といった行為です。
言い換えれば、相手への尊敬が含まれた行為が「贈呈」ということになります。逆に、「寄付」や「寄贈」は立場が同等もしくは下の相手に対して使われる言葉となります。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。
【寄付の使い方】
- 売上金の一部を、日本赤十字社に寄付した。
- 募金したお金は、被災地に寄付する予定です。
- 100万円分の時計が、慈善団体に寄付された。
- 寺院設立のために、多額の寄付金を集める。
- 皆様から寄付を頂いたことを感謝致します。
【寄贈の使い方】
- 自費出版した本を、図書館に寄贈した。
- この絵画は、卒業生による寄贈品です。
- 体育祭で使うテントを学校側に寄贈した。
- 最新の医療機器が大学病院に寄贈された。
- 母校にピアノを寄贈させていただきました。
【贈呈の使い方】
- 新郎新婦から、両親へ花束が贈呈された。
- 名誉職の称号を贈呈する予定です。
- 記念品の贈呈式が都内で行われた。
- MVPとしてビール一年分が贈呈された。
- 景品として高級お菓子が贈呈された。
補足すると、「贈呈」は称号などのように「形のないもの」にも使います。また、食品などのように最初は形があるものの、最終的に形の残らないものに使われることもあります。
対して、「寄贈」は同じものでも何かしら形が残るものに対して使われます。この点も「贈呈」と「寄贈」の違いの一つだと言えます。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「寄付」=公共の団体などへ金品を贈ること。
「寄贈」=学校などの公共性の高いところに品物を贈ること。
「贈呈」=人に物を贈ること・公式な場で人に物を贈ること。
「違い」⇒「寄付」は幅広い対象へ金品を贈ること、「寄贈」は限定された対象へ品物を贈ること、「贈呈」は立場が上の相手へ物を贈ること表す。
いずれも似たような言葉ですが、贈る内容や対象先などがそれぞれ異なります。ぜひ正しい意味を理解した上で、使用して頂ければと思います。