懸命 賢明 違い 意味 使い方 類語

「懸命」と「賢明」は、どちらも日常的によく目にする言葉です。主に、「懸命に働く」「賢明な判断」などのように用います。

ところが、この2つの使い分けに迷うという人が多いようです。そこで、今回は「懸命」と「賢明」の違いについて詳しく解説しました。

懸命の意味

 

まず、「懸命」の方の意味を調べると次のように書かれています。

【懸命(けんめい)】

力のかぎり努めるさま。全力をつくすさま。精一杯。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

懸命」とは「力の限り努めるさま・全力をつくすさま」などを表す言葉です。例えば、以下のように使います。

  • 懸命に生きる。
  • 懸命に努力する。
  • 懸命に取り組む。

いずれも対象に対して「全力をつくす様子」を表していることが分かるかと思います。このように、何かの物事を精一杯頑張る様子のことを「懸命」というわけです。

「懸命」の「」という字は、「懸想」「懸念」などがあるように「心にかける」という意味があります。最も分かりやすいのが、「一生懸命」という言葉でしょう。

「一生懸命」とは「本気で物事に打ち込むさま」を表した四字熟語です。したがって、心の底から全力で努力するような時にこの言葉を使うわけです。

賢明の意味

 

続いて、「賢明」の意味です。

【賢明(けんめい)】

かしこくて、物事の判断が適切であること。また、そのさま。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

賢明」とは「かしこくて、物事の判断が適切である様子」を表した言葉です。こちらも主な使い方を紹介しておきます。

  • 賢明な判断。
  • 賢明なる投資家。
  • 賢明だと思う。

いずれも何かを行う時に、「賢くて適切である様子」を表しています。このように、物事のやり方や判断などが、かしこくてしっかりとしていることを「賢明」と言うわけです。

「賢明」のポイントしては、「」という字です。「賢」は「賢者」「賢人」などの熟語があるように、「人のかしこさ」を表す漢字です。言い換えれば、「頭の良さ」という意味が込められたのが「賢明」ということになります。

懸命と賢明の違い

懸命 賢明 違い 使い分け

ここまでの内容を整理すると、

懸命」=力の限り努めるさま・全力をつくすさま

賢明」=かしこくて、物事の判断が適切である様子。

ということでした。

両者の違いを簡潔に言うと、「懸命」は「全力さ」を表す言葉、「賢明」は「賢さ」や「正確さ」を表す言葉だと言えます。

まず、「懸命」は「力を尽くして頑張る様子」ということでした。したがって、こちらは「その人がどれだけ頑張ったか?」という必死さの度合いを表すような時に使います。

一方で、「賢明」の方は「賢くて判断が適切な様子」という意味でした。そのため、こちらは「その人の判断がどれだけ正しかったか?」という正確さの度合いを表す時に使うのです。

これらの違いを踏まえた上で、よく間違えやすい次の2つの表現を比較したいと思います。

「①懸命に働く」「②賢明に働く」

この場合、①の方は「精一杯働く」という意味です。具体的に言うと、「手を抜かない」「サボらない」のようにしっかりと働くイメージです。

一方で、②の方は「賢く、かつ判断よく働く」という意味です。つまり、ただ単に何も考えずに働くのではなく、「ちゃんと自分の頭の考えて、仕事の状況や背景などをくみ取って働く」ということです。

この時に重視されるのは、「いかに仕事でしっかりした成果を残すか?」という一点のみとなります。

以上の事から考えますと、「懸命」は体力や気合など人の総合的なエネルギーに着目した言葉、一方で、「賢明」は頭脳や賢さなど人の知性に着目した言葉であることが分かるでしょう。

類義語・対義語

 

両者の違いを分かりやすくするために、「類義語」と「対義語」を紹介しておきます。

【懸命の類義語】全力・命がけ・熱心・本気・真剣・ひた向き・必死・精進
【懸命の対義語】⇒「怠慢・手抜き・油断・怠惰・投げやり・ないがしろ

「懸命」の類義語は、「目標達成に向けて、可能な限り力を注ぐ様子」といった意味になります。逆に、対義語の方は「目標達成の途中で力を抜いたり、全力を尽くさない様子」といった意味になります。

【賢明の類義語】⇒「聡明・知的・明哲・妥当・正当・順当・合理的・理性的
【賢明の対義語】⇒「適当・いい加減・曖昧・愚昧・暗愚・非合理的

「賢明」の類義語は、「物事の筋道をしっかりと考えて、答えや結論を導くさま」を表したものとなります。一方で、対義語の方は、「筋道を考えたりはせず、ただ適当に物事を行う様子」を表したものとなります。

使い方・例文

 

最後に、それぞれの使い方を具体的な例文で紹介しておきます。

【懸命の使い方】

  1. 仕事で成果を出すには、まず懸命に働くことが何よりだ。
  2. 懸命に努力することにより、やっと今の地位を確立した。
  3. あなたの懸命に取り組む姿勢を、周りは評価しています。
  4. 懸命に頑張る犬の姿に、多くの人が心を打たれたようだ。
  5. 親は子供たちに、自らが懸命に生きる姿勢を見せることが重要だ。

【賢明の使い方】

  1. 警察官の賢明な判断により、犯人は逮捕された。
  2. 彼女が下した判断は批判もあったけど、賢明だと思う。
  3. 主治医の賢明な処置により、患者は一命をとりとめた。
  4. 早く結果を上司に報告した方が、賢明だと思うよ。
  5. 救助隊の賢明な判断のおかげで、多くの人の命が助かった。

 

「懸命」の方は、日常生活からビジネスまで幅広く使うことができます。肉体的にも精神的にも頑張る様子を表しますので、人だけでなく犬などの動物などにも使えるのが特徴です。

一方で、「賢明」の方は日常生活というよりも、ビジネスでの実際の現場で使われることが多いです。実際の現場で、しっかりとした正確な判断を下したような時に「賢明」を使います。

まとめ

 

以上、本記事のまとめです。

懸命」=力の限り努めるさま・全力をつくすさま

賢明」=かしこくて、物事の判断が適切である様子

【使い分け】⇒「懸命」は「全力さ」を表す時に使い、「賢明」は「賢さ」や「正確さ」を表す時に使う。

どちらも同じ読み方ですが、よく使われる言葉です。この記事をきっかけに両者をうまく使い分けできるようになればと思います。