「かんしょう」という言葉は、次のように二つの漢字が使われています。
「映画を鑑賞する」「観賞用の植物」
この場合の「かんしょう」は、どう使い分ければいいのでしょうか?今回は、「鑑賞」と「観賞」の違いについて詳しく解説しました。
鑑賞の意味
まずは、「鑑賞」の意味からです。
【鑑賞(かんしょう)】
⇒芸術作品などを見たり聞いたり読んだりして、それが表現しようとするところをつかみとり、そのよさを味わうこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「鑑賞」とは「芸術作品のよさを味わうこと」を意味します。
「芸術」とは映画や音楽、演劇など創作的なものを指します。したがって、「鑑賞」は創作的な作品に対して使うのが基本となります。
【例】
- 映画を鑑賞する。
- 音楽を鑑賞する。
- 演劇を鑑賞する。
「鑑賞」の語源を確認しておくと、「鑑」という字は「鑑定」や「鑑別」と同じ漢字です。「鑑定」には「良い悪いをじっくりと見分ける」という意味があります。
そのため、音楽や映画など人によって評価が分かれるような対象に対して「鑑賞」を使うわけです。
観賞の意味
続いて、「観賞」の意味です。
【観賞(かんしょう)】
⇒物を見て、その美しさや趣などを味わい楽しむこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「観賞」とは「物を見て味わい楽しむこと」を意味します。この場合の「物」とは、自然の景色や動植物などが対象になることが多いです。
【例】
- 草花を観賞する。
- 富士山を観賞する。
- 観賞用のメダカ。
「観賞」の語源も確認しておくと、「観」という字は「観光」や「観測」などがあります。すなわち、「目でよくみる」ということです。
したがって、「観賞」は何か目にみえる物を味わったり楽しんだりするような場合に使われる言葉となります。
鑑賞と観賞の違い
ここまでの内容を整理すると、
「鑑賞」=芸術作品のよさを味わうこと。「観賞」=物を見て味わい楽しむこと。
ということでした。
両者の違いを簡単に言うと、「味わう対象が芸術的なものかどうか」だと言えます。
「鑑賞」は、映画や絵画・彫刻など芸術的な物に対して使います。つまり、人の手が加わった人為的な物ということです。
一方で、「観賞」は芸術的な物に対しては使いません。「観賞」は、草花や景色など自然に存在する物に対して使われるのです。
整理すると、
「鑑賞」=芸術的なものに使う。「観賞」=自然に存在する物に使う。
ということになります。
一般的には、上記のような認識で問題ありません。ただし、実際にはこの二つの使い分けは難しい場合もあります。
なぜなら、芸術的かそうではないかの判断がしにくいケースもあるからです。例えば、以下のような場合はどうでしょうか?
チューリップをかんしょうする。
普通に考えれば、チューリップなどの植物は自然の一部なので、「観賞」を使うべきと言えます。しかしながら、もしもこのチューリップが様々な工夫を凝らして育てた大変個性あふれる花だったらどうでしょうか?
この場合は、「芸術作品を味わう」という意味で、「鑑賞する」を使っても何ら問題はありません。
つまり、芸術的な花を評価するような場合は「鑑賞」の方も使うことができるのです。盆栽や生け花などは、芸術的な花の典型的な例と言えるでしょう。
また、以下のような場合もどちらを使うか判断に迷います。
花火をかんしょうする。
一般的には、花火は「観賞」の方が使われています。なぜなら、花火は人間が作ったものですが、自然の景色の一部と認識されているからです。
ところが、花火にも色々な見方があり、花火を芸術作品ととらえている人もいます。例えば、花火の専門家などです。
彼らは花火のことを、景色ではなく芸術の一部と考えています。よって、このような人が花火を楽しむ場合は「鑑賞」を使っても間違いではないのです。
このように、何が芸術的で何が芸術的ではないかというのは、その人の見方や価値観によっても異なってきます。そのため、味わう対象だけでなく、「かんしょう」する人によっても使い分けるのが厳密には正しいと言えるのです。
鑑賞と観賞の使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきましょう。
【鑑賞の使い方】
- 彼の趣味は映画を鑑賞することです。
- 休日はいつも音楽を鑑賞して過ごしています。
- 劇場へ通い、ミュージカルを鑑賞するのが日課です。
- 俳句を鑑賞することにより、感性を磨くつもりです。
- 私にはコンサートを鑑賞するという趣味があります。
【観賞の使い方】
- 桜を観賞しながらおいしいものを食べる。
- 家で飼っているお気に入りの熱帯魚を観賞する。
- 土日は家でテレビを観賞するのが私の日課です。
- 屋台で買ったたこ焼きを食べながら、花火を観賞する。
- 樹齢100年の大樹を観賞し、物思いにふける。
補足すると、「テレビ」については、「観賞」を使うのが一般的です。理由は簡単で、テレビ番組のほとんどは芸術品というよりも、単に見て楽しむもの(娯楽)だからです。
テレビを見ながら、この番組は良いか悪いか専門家のように判断する人はいないでしょう。
ただし、テレビについても同様に映画や音楽番組など芸術性が強調されるような場合は、まれに「鑑賞」を使うこともあるようです。この辺りは、場面に応じてうまく使い分けるようにしてください。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「鑑賞」=映画や音楽など、芸術的な物を味わうこと。
「観賞」=植物や景色など、自然に存在する物を味わうこと。
「使い分け」⇒「鑑賞」は芸術的なものに使い、「観賞」は自然に存在する物に使う。
一般に使い分ける際は、芸術的かどうかで判断すれば問題ありません。ただ、芸術的かどうかはかんしょうする人によっても変わってきます。ぜひそのことも頭の中に入れておきましょう。