「快刀乱麻」という四字熟語をご存知でしょうか?主にビジネスシーンで使われ、「快刀乱麻を断つ」とも言います。
ただ、具体的な由来や本来の意味などが分かりにくい言葉でもあります。そこで今回は、「快刀乱麻」の意味や語源、類義語などを含め詳しく解説しました。
快刀乱麻の意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【快刀乱麻(かいとうらんま)】
⇒こじれた物事を非常にあざやかに処理し解決すること。鋭利な刃物で、もつれた麻糸を断ち切るように物事を処理する意から。
出典:三省堂 新明解四字熟語辞典
「快刀乱麻」は「かいとうらんま」を読みます。
意味は「こじれた物事を非常にあざやかに処理して解決すること」です。
例えば、あなたが会社内で仕事をしている際に何かこじれた問題を抱えてしまったとします。周りの同僚などに聞いても分からないような複雑な問題です。
ところが、仕事のできる部長がいともあざやかに問題を処理してくれました。こういった場面では、「部長は快刀乱麻のごとく、問題を解決した」などと言うことができます。
つまり、「面倒な事態を手際よく処理することのたとえ」を「快刀乱麻」と呼ぶわけです。
「快刀乱麻」は、ただ単に「鮮やかな様子」を表す四字熟語ではありません。例えば、「彼の包丁さばきは、快刀乱麻であった」などと使うのは誤用です。
鮮やかで、なおかつ手際よく物事を解決するような行動に対して、この四字熟語を使うことになります。
快刀乱麻の語源・由来
「快刀乱麻」は、「快刀」と「乱麻」の二語から成る四字熟語です。
「快刀」は「切れ味のよい刀」、「乱麻」は「もつれた麻糸」を表します。「麻糸(あさいと)」とは「麻の繊維で作った糸」を指し、主に布や縄などの材料に用いるものです。
この「麻糸」はもつれると非常にほどきにくく、元に戻すのが困難と言われています。
しかし、切れ味のよい鋭利な刃物を使えば、もつれた麻糸であってもいとも簡単に断ち切ることができます。
この事から、「複雑な物事を鮮やかに解決する手際のよさ」を例える表現となったわけです。
元々、「快刀乱麻」という四字熟語は、中国南北朝時代の故事成語に由来するものです。
北斉の正史『北斉書(ほくせいしょ)』によると、南北朝時代に北斉の高祖である「高歓」という人物がいました。
「高歓」は、自分の子供の能力を試そうと、もつれた麻糸を渡し、元に戻すように言います。
多くの子供が、一生懸命に手でほどこうとする中、次男である「高洋」だけが「乱れたものは斬るべきだ」と刀で麻糸を切り、見事にほどきました。
「高歓」は、「高洋」の素早い判断力と行動力に感心し、後の皇帝に命じました。そして、「高洋」は後に国を統治するまでに成長し、その能力をいかんなく発揮したそうです。
この逸話が広まり、中国、ゆくゆくは日本にまで広まるような有名な四字熟語が誕生したことになります。
快刀乱麻の類義語
続いて、「快刀乱麻」の「類義語」を紹介します。
この中で最もよく使われるのが、「一刀両断」です。
ただ、「一刀両断」には「物事を思い切って処理すること」という意味以外に「迷わずに決断すること」「きっぱりと決断すること」などの意味も含まれています。
つまり、「一刀両断」の方が幅広い意味を持った四字熟語ということです。この点が、「快刀乱麻」との違いとなります。
また、「迅速果断」も似たようなニュアンスですが、「迅速果断」には「物事をうまく解決する」という意味までは含まれていません。「解決する」「対処する」といった意味を強調する時は、やはり「快刀乱麻」を使うことになります。
快刀乱麻の英語訳
「快刀乱麻」は、英語だと次のように言います。
「solving problem swiftly and skillfully」(素早く巧みに問題を解決すること)
「act decisively to solve a complicated problem」(複雑な問題を解決するために、決断力を持って行動する)
「solve」は「解決する」、「swiftly」は「すばやく」、「skillfully」は「巧みに」という意味です。
また、「act」は「行動する」、「decisively」は「決断力を持って」、「complicated」は「複雑な」という意味です。
他には、ギリシャ神話のタイトルを使い、「Cut The Gordian Knot(ゴルディアスの結び目)」などの表現を使うこともできます。
その昔、現在のトルコにあったフリギアという国に、ゴルディオス王が結んだとされる複雑な縄の結び目が残されていました。
「この結び目を解くことができた者は、アジアの王になれる」という伝説がありましたが、成功する者はなかなか現れませんでした。
しかし、紀元前四世紀にマケドニアの王であるアレクサンドロス大王が、剣を抜き一気に結び目を断ち切ることに成功しました。その後、アレクサンドロスはヨーロッパとアジアを支配する巨大な帝国を築いたという話です。
この事から、「ゴルディアスの結び目」は「困難な事態に対して、素早く果敢に対処すること」の例えとして使われています。
快刀乱麻の使い方・例文
最後に、「快刀乱麻」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 未解決の事件になると思われたが、その探偵は快刀乱麻を断つように難題を解消した。
- 難しいパズルゲームだったが、快刀乱麻のごとくあざやかに問題を解いてみせた。
- 彼女は友人同士の喧嘩を仲裁し、まるで快刀乱麻を断つように物事を解決しました。
- 今回の問題はかなり複雑なので、さすがのあいつでも快刀乱麻とはいかないだろう。
- 彼の快刀乱麻の勢いでことごとく難題を解決した功績は、やはり認めざるを得ません。
- ビジネスにおいては、時に快刀乱麻のごとく素早く難題に対処する能力が求められる。
- 九回裏はピンチを迎えたが、彼の快刀乱麻を断つピッチングによりチームは助けられた。
「快刀乱麻」はドラマやアニメ、ゲーム、スポーツなど様々な場面で使うことができます。その中でも特に、ビジネスシーンではよく用いられます。
ビジネスでは、「複雑な問題に対処すること」「面倒な事態を解決すること」といった意味になるのが特徴です。この場合は、当然良い意味として使われます。
なお、言い回しとしては「快刀乱麻を断つ」「快刀乱麻のごとく」といったものが多いです。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「快刀乱麻」=こじれた物事を非常にあざやかに処理して解決すること。
「語源・由来」=切れ味のよい刀なら、もつれた麻糸でも簡単にほどけることから。
「類義語」=「一刀両断・迅速果断・一剣両断」
「英語訳」=「solving problem swiftly and skillfully」「act decisively to solve a complicated problem」
「快刀乱麻」は、もつれた麻糸をよく切れる刀で断つことからできた四字熟語です。正しい語源を知ったからには、ぜひ普段の文章でも使って頂ければと思います。