科学コミュニケーション 現代の国語 問題 100字要約 意味調べノート

『科学コミュニケーション』は、岸田一隆による評論文です。教科書・現代の国語でも学習します。

ただ、本文を読むと筆者の考えが分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『科学コミュニケーション』のあらすじや要約、語句の意味などを解説しました。

『科学コミュニケーション』のあらすじ

 

本文は、大きく4つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①人間は確率的思考が苦手なようだ。例として、リスク感覚が挙げられる。人間は、一度にたくさんの命を奪う未知の大事故を過度に恐れる一方で、長い時間をかけて命をむしばんでゆく身近なものをそれほど恐れない。こういった人間の心理的な傾向が、新しい科学技術への人々の不安を誘発する要因になる。

②だが、こういった確率に対する人間の間違った感性を、一方的に非難するわけにはいかない。それなりの理由があるからだ。第一に、確率や統計は私たちの人生にとって何の慰めにもならない。科学の普遍法則・確率・統計は、人生の個別性や一回性に対して全く無力なのだ。

③第二に、共感力の強さだ。私たちは、報道などで目にした大事件、大事故、大災害などを自分の身の回りで起きたことのように共感する。そして、どれも「同程度に起こりうる」ように思ってしまう。こうした心の働きは、非論理的である。それは、人間特有の「刺激等価性」という心理現象と関係している。刺激等価性は、「Aが成立する」のも「Bが成立する」のも同じに見なすため、確率的に起こりやすいことと起こりにくいことの区別が困難になってしまう。

④一方で、刺激等価性は人間の言語の習得を容易にした。人間固有の刺激等価性は、人間に非論理性と確率に対する間違った感性をもたらしたが、それと同時に、人間に言語をもたらした。さらに、言葉によって、洗練された論理が誕生した。すなわち、刺激等価性は「非論理性」と「洗練された論理」の両方をもたらした。皮肉な逆説だが、両方が人間の本質である。

『科学コミュニケーション』の要約&本文解説

 
100字要約人間固有の刺激等価性は、人間に確率に対する間違った感性をもたらすと同時に言語機能の発現をもたらした。すなわち、刺激等価性によって生まれた「非論理性」と「論理性」は、皮肉にも両方とも人間の本質である。(99文字)

筆者の主張を簡潔に述べるなら、「刺激等価性によって生まれた非論理性と論理性は、両方とも人間の本質である」ということになります。

まず本文を理解する上で、「刺激等価性」という言葉が一つのキーワードとなります。「刺激等価性」とは、AならばBのように、一つの刺激に対して、それが同じだと分かる性質のことです。

例えば、人間は目の前の「赤い果実」を「りんご」だと覚えた場合、視覚情報(赤い果実)から音声言語(りんご)への対応をします。すると、「りんご」という音声言語を聞くだけで、「赤い果実」だと脳内で理解することができます。

このように、一つの刺激(上の例でいえば、「りんご」という言語)に対して、「赤い果実」という視覚情報が同じ(等価)だと分かる性質のことを「刺激等価性」と言うわけです。

この「刺激等価性」は、人間以外の動物にはほとんど見られない人間特有の心理現象だと筆者は述べています。そして、「刺激等価性」は人間に悪い面と良い面の両方をもたらしたとも述べています。

悪い面としては、人間に確率に対する間違った感性をもたらしたという点を挙げています。

本文中では、人間は「AならばB」という前提が目の前にあると、「BならばA」だと思い込んでしまいがちだ、ということがカードを使った実験により紹介されています。

本来は、「AならばB」=「BでないならばAでない」が論理的には正しいのですが、人間というのは「刺激等価性」を持っているため、「AならばB」=「BならばA」のように、誤った認識を持ってしまうのです。

一方で、良い面としては、人間に洗練された論理をもたらしたという点を挙げています。

人間固有の刺激等価性は、人間に言語をもたらしました。その言語は、ただの記憶の集まりが概念に生まれ変わり、言葉による洗練された論理が誕生しました。

このように、「刺激等価性」は「非論理性」と「洗練された論理」の両方をもたらしたと筆者は述べています。そして、筆者は「非論理性」と「洗練された論理」の両方が、人間の本質だと結論付けています。

『科学コミュニケーション』の意味調べノート

 

【リスク】⇒危険の生じる可能性。危険度。

【過度(かど)】⇒度を過ごすこと。程度が過ぎること。

【誘発(ゆうはつ)】⇒ある事が原因となり、他の事を引き起こすこと。

【不可欠(ふかけつ)】⇒なくてはならないこと。

【輪廻転生(りんねてんしょう)】⇒人が生まれ変わり、無限に生死を繰り返すこと。仏教の用語。

【太鼓判を押す(たいこばんをおす)】⇒絶対に間違いのないことを保証する。

【普遍(ふへん)】⇒例外なくすべてのものにあてはまること。

【一回性(いっかいせい)】⇒ある事が一回しか起こらず、再現できないこと。

【目の当たりにする(まのあたりにする)】⇒目の前で実際に見ること。

【特殊(とくしゅ)】⇒普通と異なること。特別であること。

【母音(ぼいん)】⇒言語音の最小単位である単音の分類の一つ。英語だと、a・e・i・o・u の5つを指す。日本語だと、ア・イ・ウ・エ・オの5つを指す。

【子音(しいん)】⇒言語音の最小単位である単音の分類の一つ。英語だと、a・e・i・o・u の5つ以外を指す。

【等価(とうか)】⇒価値が同じであること。同価。

【容易(ようい)】⇒たやすいこと。わけなくできること。

【概念(がいねん)】⇒物事の大まかな意味・内容。あるものに対する大まかな理解やイメージ。

【夜半(やはん)】⇒夜中。真夜中。

【レトリック】⇒言葉をうまく使い、効果的に表現すること。修辞法。

【洗練(せんれん)】⇒磨き上げること。よりすぐれた状態にすること。

【皮肉(ひにく)】⇒ 期待していたのとは違った結果になること。

【逆説(ぎゃくせつ)】⇒真理に反対しているようであるが、よく吟味すれば真理である説。

【合理的(ごうりてき)】⇒道理や論理にかなっているさま。

【抽象的(ちゅうしょうてき)】⇒いくつかの事物に共通なものを抜き出して、それを一般化して考えるさま。

【動機(どうき)】⇒人が意志を決めたり、行動を起こしたりする直接の原因。

【もっぱら】⇒他はさしおいて、ある一つの事に集中するさま。ひたすら。ただただ。

【焦点(しょうてん)】⇒人々の注意や興味の集まるところ。また、問題の中心点。

【遠因(えんいん)】⇒遠い原因。間接の原因。

『科学コミュニケーション』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①人命をウバう事故。

②不安をユウハツする。

リンネ転生を信じる。

④治療にノゾむ。

シゲキを与える。

センレンされた文章を書く。

⑦犯行のドウキが分かった。

解答①奪 ②誘発 ③輪廻 ④臨 ⑤刺激 ⑥洗練 ⑦動機
問題2「確率や統計は私たちの人生にとって何の慰めにもならない」とは、どういうことか?
解答例科学は人生に対して無力だということ。
問題3「こうした心の働きは実に非論理的です。」とあるが、「こうした心の働き」とはどのようなことか?
解答例確率的に起こりやすいことと起こりにくいことの区別ができず、被害が大きいリスクの方を恐れるようなこと。
問題4「刺激等価性」とは、どのような心理現象だと説明されているか?
解答例「AならばB」という論理を学習すると、ほぼ自動的に「BならばA」という関係だと思い込み、Aという刺激とBという刺激を等価と見なすような心理現象。

まとめ

 

以上、今回は『科学コミュニケーション』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。