「石の上にも三年」は非常に有名なことわざですが、あなたはこの言葉の本当の意味をご存知でしょうか?
「なぜ石の上なのか?」「一体誰の言葉なのか?」といった疑問が多いことわざでもあります。実は「石の上には三年」は、誤用が多いことでも知られています。
本記事では、そういった注意点も含め、使い方や例文、語源、英語訳などを詳しく解説しました。
石の上にも三年の意味と誤用
最初に、このことわざを辞書で引いてみます。
【石の上にも三年(いしのうえにもさんねん)】
⇒冷たい石の上でも3年も座りつづけていれば暖まってくる。がまん強く辛抱すれば必ず成功することのたとえ。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「石の上にも三年」とは「辛い事でも我慢強く辛抱すれば、いずれは成功すること」を表したものです。冷たい石の上でも、三年座り続ければ温まることから来たものです。
ここで言う「三年」とは、実際に三年間辛抱するというわけではなく、「長い間」という比喩を込めた意味で使われています。言い換えれば、三年という期間に縛られる必要はないということです。
したがって、一年だろうと半年だろうと「長い間」を表す意味であればこのことわざは使うことができます。もちろん、三年以上の期間を表すような時も使えます。
また、もう一つ注意点としては、「石の上にも三年」には「どんなに辛いことがあっても継続しなければならない」のような負の意味は含まれていないということです。
例えば、以下のような使い方は誤用だと言えます。
いくらパワハラが嫌と言っても入社1年で会社を辞めるの?「石の上にも三年」というから最低三年は続けた方がいいよ。
パワハラは会社を退職する理由として正当なものですが、上の例文だと「辛い事でも続けなければいけない」という負の要素が含まれています。さらに、三年という具体的な縛りについても言及しています。
「石の上にも三年」は、「辛い事でもコツコツと継続していれば、いつかは成果が出る」という前向きな意味として使うのが本来の使い方です。他人の行動や価値観を縛り付けるような使い方はしません。
石の上にも三年の語源・由来
「石の上にも三年」の由来については諸説ありますが、一般的には次の二つのどちらかだと言われています。
①「古代インドのパリシバ尊者から。」
②「禅宗の開祖である達磨大師から。」
※「尊者(そんしゃ)」とは、仏教において知識や行徳を持った尊敬すべき僧のこと。
まず、①の説ですが、古代インドの層で「パリシバ尊者」という人物がいました。彼は80歳という高齢にもかかわらず、悟りを開くために修行を始めます。
当時のインドでは、悟りを開くために苦行を行う修行僧が多くいました。何日間も食べなかったり、眠らなかったりすることで、自分をどんどんと追い込み修行に励むのです。
バリシバ尊者が行ったのは、石の上で座禅を組み三年間座り続けるというものでした。実際に、彼はずっと座り続けて横になって眠ることがなかったと言われています。
この伝説が元となり、「石の上にも三年」という言葉が生まれたという説です。
そしてもう一つは、「禅宗の開祖、達磨大師(だるまたいし)から来たもの」という説です。
達磨大師は、元々はインドの仏教僧でしたが、中国の禅宗を開祖した人物として知られています。彼も同じく悟りを開くために、想像を絶するような修行を行いました。
それが、「壁に向かって九年間座禅をし続ける」というものです。にわかには信じがたい話ですが、この修行により、達磨大師は足が腐って使えなくなってしまったとも言われています。
ちなみに、縁起物として広く親しまれている「だるま」は、元は達磨大使が座禅をしている姿を真似して作られたものです。日本では江戸時代にはすでに現在のようなだるまがあったとされています。
以上、二つの由来を紹介しましたが、今の所どちらが正しい出処かは答えが出ていません。また、「なぜ三年なのか?」といった理由も未だ不明のままです。ただ、「自身を鍛えるために辛くて長い修行をした」という部分ではどちらも共通していると言えます。
石の上にも三年の類義語
続いて、「石の上にも三年」の類義語・言い換え表現を紹介します。
「石の上にも三年」と似たことわざは多くありますが、全く同じ意味のことわざ(同義語)はありません。
大まかなイメージとしては、「辛抱強く努力する」「辛くても継続する」といった意味を持つものが多いです。この中でも、「継続は力なり」「塵も積もれば山となる」は、比較的よく使われることわざなので覚えておくとよいでしょう。
石の上にも三年の対義語
逆に、「対義語」としては以下の二つのことわざが挙げられます。
「石の上にも三年」は、「時間がかかってもいいので、物事を成功させる」という意味のことわざでした。言い換えれば、「時間を二の次に考えている」ということです。
したがって、「時間が大事である」「時間を非常に大事にする」といった意味のことわざが反対語となります。
石の上にも三年の英語訳
「石の上にも三年」は、英語だとどのような言い方をすればいいのでしょうか?
まず直訳だと、「It’s been three years on the stone.」があります。
ただ、これだと外国人に対しては意味が通じません。仮に使うとしたら、
In Japan, we have a proverb that says that it’s been three years on the stone ~(日本では、石の上にも三年ということわざがありますが、~)
などの表現もできますが、あまり現実的ではありません。実際には、以下のような表現を用いるのがよいでしょう。
「Patient men win the day.(忍耐強い人は勝利する)」
「Perseverance will win in the end.」(辛抱強さは最後に勝つ。)
「Perseverance pays off.」(辛抱強さは効果を生む。)
「Little and often fills the purse.」(継続は力なり)
「辛抱さ」を表す単語は、「patient」や「perseverance」を使うのが最も伝わりやすいです。
石の上にも三年の使い方・例文
最後に、「石の上にも三年」の使い方を例文で紹介しておきます。
- プロ野球選手になると決めたなら、石の上にも三年の精神で努力することにしよう。
- 石の上にも三年。一人前の料理人になるまでは今の飲食店でがんばることにした。
- もしも辛い状況になったら、石の上にも三年という言葉をぜひ思い出してください。
- 最初は不慣れな仕事も多いが、石の上にも三年の精神でじっくり取り組んでいけばいい。
- 石の上にも三年とは言うが、ようやく長年の苦労が実り今回の賞を頂くことができた。
- 医者になるには相当の覚悟が必要だ。石の上にも三年の気持ちで目指さないといけない、
「石の上にも三年」は、例文のように前向きな意味として使うのが基本です。将来の夢や目標などをこれから掲げる時、あるいは実際に目標がかなった時などに使うことができます。
また、場合によってはくじけそうになった人に教訓を伝えるという意味合いで使うこともあります。ただ、教訓的な使い方をするときは注意が必要です。
特に企業などに勤めている上司が、部下に対してアドバイスをするような場合はなおさらです。現代では、仕事の目的や意義が多様化しているため、「我慢をし続けることが美徳」という価値観は薄れつつあります。
そのような考え方を時代遅れだと感じる人もいるでしょう。ゆえに、もしも「石の上にも三年」を安易に使ってしまうと、相手からすると自分の価値観の押し付けだと捉えられてしまう可能性もあります。
このことわざ自体は、前向きな意味を含んでいます。しかし、使い方次第では相手に対して価値観を押し付けてしまうことにもなるので注意してください。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「石の上にも三年」=辛い事でも我慢強く辛抱すれば、いずれは成功すること。
「語源・由来」=「古代インドのパリシバ尊者」または「禅宗の開祖である達磨大師」から。
「類義語」=「雨垂れ石を穿つ・待てば海路の日和あり・継続は力なり・茨の中にも三年の辛抱」など。
「対義語」=「時は金なり・一寸の光陰軽んずべからず」
「英語訳」=「Patient men win the day.」「Perseverance will win in the end.」など。
「石の上にも三年」は、今から二千年も前の修行僧の話から来ており、現在でも格言として使われているほど有名なものです。一方で、このことわざを一種の死語だと捉えている人もいますので、使い方には十分注意するようにしましょう。