人と自然の共生とはどういうことか 現代の国語 教科書 要約 解説

『人と自然の共生とはどういうことか』は、河合雅雄による文章です。教科書・現代の国語にも採用されています。

この記事では、『人と自然の共生とはどういうことか』のあらすじや要約、語句の意味、テスト問題などを解説しました。

『人と自然の共生とはどういうことか』のあらすじ

 

本文は、大きく五つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①共生とは、もともと生物学の用語である。簡単に要約すると、相利共生と片利共生に大別される。共生の定義からすれば、「人と自然の共生」という文言は拡張解釈である。人と自然の共生とはどういうことなのかを、改めて考えてみたい。

②ヒトが地球上に誕生したのは、約六百万年前であり、この時代の生活様式は、狩猟採集生活であった。共生という次元では、自然と相利共生の関係であったと言える。次の一万一千年前は農耕牧畜が始まり、自然に依存していた時代から、自然を改変し利用するという新しい次元の生活様式になった。つまり、この時代の人間と自然は、片利共生の関係にあると言っていい。

③二十世紀の後半になると、事情は一変した。急激で高度な工業化により、人間は自然に対して搾取者として振る舞うようになった。つまり、人間と自然は片利片害関係になったと言える。いわば自然に対して害虫的存在になりかけているのだ。

④人間は文化を創造し文化的世界を創出することで、反自然的存在となった。かといって、人間は単なる破壊者になったわけではない。反自然的存在であることは、一面自然にはない優れた側面を内包するということでもある。創造力と想像力を展開した文化的世界で、人間は生物的次元を超越した文化的共生とも言うべき共生空間を創出することが可能となったのだ。

⑤人間と自然の共生とは、文化的共生という生物的次元を超えたところで可能である。人間が意味づけ価値づけた文化的所産である以上、民族や社会や時代によって変容していくが、それは自然を損なわず人間の心を豊かにする世界の創出なのである。

『人と自然の共生とはどういうことか』の要約&本文解説

 
200字要約有史以来、自然と共生してきた人間は、文明という武器を手に入れたことで反自然的な存在となったが、文化を創造し文化的世界を創出することで、文化的共生とも言うべき人間と自然の新たな共生空間を創出できるようになった。本来、人間と自然の共生は、文化的共生という生物的次元を超えたところで可能である。人間が意味づけ価値づけた文化的所産である以上、それは自然を損なわず人間の心を豊かにする世界の創出に他ならない。(199文字)

筆者はまず、現代社会において「人と自然の共生」とはどういうことなのかを、歴史を振り返りながら説明しています。

人類はまず狩猟採集が中心の時代で、自然とは相利共生の関係でした。その次は農耕牧畜が中心の時代で、自然とは片利共生の関係でした。

そして最後は、高度な文明が発達した、人間が反自然的な存在となった時代でした。

およそ六百万年前にアフリカで誕生したと言われている人類ですが、その頃から今に至るまで、自然との関係は時代によって大きく移り変わってきたということです。

一方で、筆者は反自然的存在となった人間は、この世界において、人間と自然の新たな共生関係を創出することが可能になったとも述べています。

例えば、人は一輪のカタクリの花を見て、可憐に思ったり素朴に感じたりと多様な感想を抱くことで、様々な美の世界を創出します。

また、人と自然物の相互作用によって生け花や日本庭園などさまざまなものを作り出したりもします。

このように、人は生物的次元を超えた”文化的共生”とも言うべき共生空間を作り出すことで、自然と共生できるようになったと筆者は考えているのです。

そして、このような文化的所産は、時代や社会によって変わっていくが、自然を損なわず人間の心を豊かにする世界の創出だと結論付けています。

全体を通して筆者が主張したい内容は、最後の段落に集約されていると言えます。

『人と自然の共生とはどういうことか』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①自然ハカイが進行する。

②権利がショウメツする。

③親にイゾンした生活を送る。

④資本家によるサクシュが行われる。

⑤森林がバッサイされる。

ケンキョな性格をしている。

⑦伝染病をバイカイする虫。

解答①破壊 ②消滅 ③依存 ④搾取 ⑤伐採 ⑥謙虚 ⑦媒介
問題2「農耕牧畜という新しい生業」の登場により、人間の生活様式はどのように変化したか?
解答自然に強く依存していた生活から、自然を改変し利用するという新しい次元の生活様式へと変化した。
問題3『このような例をあげれば、いくらでも尽きないであろう。』とあるが、「このような例」とはどのようなものを指すか?本文中から12文字で抜き出しなさい。
解答人と自然の文化的共生空間
問題4

次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。

(ア)共生とは、元来生物学の用語だが、共生の定義からすれば、「人と自然の共生」という文言は拡張解釈だと言える。

(イ)一万一千年前の生業革命は、エルトンピラミッドからの離脱であり、反自然的動物という新種の出現でもあった。

(ウ)二十世紀後半の急激で高度な工業化により、文明という武器を手に入れた人間は、自然に対して相利共生者となった。

(エ)人はアリがなぜ種子を食べずに運び去るのか、どこへ持っていくのかという疑問を抱くが、そのとき科学の世界への通路が開かれることになる。

解答(ウ)本文中には、「文明という武器を手に入れた人間は、自然から一方的に恵みを受けている片利共生者となった」という旨のことが書かれているため誤り。

まとめ

 

以上、今回は『人と自然の共生とはどういうことか』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。なお、本文中の重要語句については以下の記事でまとめています。