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ポスト・プライバシー 解説 意味調べ 漢字 テスト対策 要約

 

『ポスト・プライバシー』は、阪本俊生による評論文です。教科書・現代の国語にも収録されています。

ただ、本文を読むとその内容が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『ポスト・プライバシー』のあらすじや要約、語句の意味などを解説しました。

『ポスト・プライバシー』のあらすじ

 

あらすじ

自己のアイデンティティは、個人自らがつくるという近代の原則は、インターネットの普及により変化した。今では私たちは、以前にも増して自由に<私>をつくっていくことができる。そこでは、外見や年齢、性別さえ変えられる。だが、このような自由さの裏面に、私たちのIDの管理や監視も生まれてきている。情報技術と情報システムの急速な発展と普及は、管理や監視を私たちにもたらすようになったのだ。

電子アイデンティティの時代を風刺的に描いた映画の一つとして、『ザ・インターネット』がある。この映画では、主人公のアンジェラが、滞在先でIDを盗まれて、そのIDを喪失することになった。窮地に立たされた彼女は、「私のアイデンティティはすべてコンピュータの中なのよ」と叫んだ。この映画は、他の人間によって記憶されることの重要性を示唆している。また、個人の自己の真実が情報システムの中にこそ置かれている社会状態を示している。

以前は、プライバシーのキーワードは親密性だった。だが、今日ではプライバシーの関心対象には変化がみられる。今や本当に恐れられているのは、個人情報を見られることだ。今日の自己は、親密性よりも、データ管理によって守られるようになりつつある。

個人の<私づくり>は、他者との関係を通してだけではなく、情報システムの中でもおこなわれている。個人についての社会的記憶は、情報システムでつくられるものの方が、社会的影響力を持つようになってきているのだ。

『ポスト・プライバシー』の要約&本文解説

 

200字要約情報技術と情報システムの普及により、私たちは自由に<私>をつくっていくことができるようになったが、一方でそれらはIDの管理や監視をもたらすようになった。以前は、プライバシーの重要な要素は親密性だったが、今日では個人情報や情報システムになりつつある。個人についての社会的記憶は、親密な人々との現実の相互行為よりもむしろ、情報システムでつくられるものの方が、社会的影響力を持つようになってきているのだ。(199文字)

現代では、インターネットの急速な普及により、私たちは以前よりも自由に<私>をつくることができるようになりました。例えば、外見や年齢、性別といったものはネット上であれば自由につくり変えることができます。

一方で、このような自由に<私>をつくれる社会は、私たちに管理や監視をもたらすようになったのだと筆者は述べています。

この事を説明するために、本文中では、電子アイデンティティの時代を風刺的に描いた映画が紹介されています。

物語の主人公であるアンジェラは、IDを窃盗されたことで、電子記録をすべて書き換えられてしまいます。そして、最終的に自分のアイデンティティは、すべてコンピュータの中であることに気付きます。

筆者は、この物語こそが、個人の自己の真実が情報システムの中に置かれているという現代の社会状態を示していると述べています。

以前の社会では、プライバシーで重視されるのは「親密性」でした。しかし、情報システムが発達した今日では、プライバシーで重視されるのは個人情報や情報システムとなりました。

この事により、個人の社会的記憶は、親密な人々との現実の相互行為よりも、情報システムでつくられるものの方が、社会的影響を持つようになってきていると筆者は考えているわけです。

『ポスト・プライバシー』の意味調べノート

 

【ポスト】⇒他の語の上に付いて、「~のあと、~以後」という意。

【プライバシー】⇒他人に知られたくない私生活を守る権利。

【アイデンティティ】⇒自己同一性。自分とは何か。自分らしさ。

【バーチャル】⇒仮想的。疑似的。実体を伴わないさま。

【普及(ふきゅう)】⇒広く一般に行きわたること。

【厄災(やくさい)】⇒わざわい。災難。

【風刺的(ふうしてき)】⇒社会や人物の欠陥や罪悪などを遠回しに批判するさま。

【バカンス】⇒主に保養地などで過ごす、長期の休暇。

【滞在(たいざい)】⇒よそに行って、そこにある期間とどまること。

【喪失(そうしつ)】⇒なくすこと。失うこと。多く抽象的な事柄に対して使う。

【成り代わる(なりかわる)】⇒その代りとなる。代理する。

【あてがる】⇒割り当てて与える。

【荒唐無稽(こうとうむけい)】⇒でたらめであること。根拠がなく、現実味のないこと。

【ナンセンス】⇒無意味であること。ばかげていること。

【窮地に立つ(きゅうちにたつ)】⇒逃げ場のない苦しい状態や立ち場に追い詰められる。

【誇張(こちょう)】⇒実際よりも大げさに表現すること。

【SF(エスエフ)】⇒サイエンスフィクション。空想的な世界を科学的仮想に基づいて描いた物語。

【いささか】⇒少し。わずかばかり。

【欠落(けつらく)】⇒あるべきものが抜けていること。

【匿名(とくめい)】⇒実名を隠して知らせないこと。

【示唆(しさ)】⇒それとなく知らせること。ほのめかすこと。

【親密(しんみつ)】⇒互いの交際が深いこと。きわめて仲がよいこと。

【ノスタルジー】⇒故郷をなつかしむ気持ち。また、過ぎ去った時代を懐かしむ気持ち。

【回帰(かいき)】⇒ひとまわりして、もとの所に帰ること。めぐりかえること。

【概念(がいねん)】⇒物事の大まかな意味・内容。あるものに対する大まかな理解やイメージ。

【生理的(せいりてき)】⇒からだの機能や組織に関するさま。

【目する(もくする)】⇒みなす。

【推移(すいい)】⇒移り変わっていくこと。

【拠点(きょてん)】⇒活動のよりどころになる所。

【妥当(だとう)】⇒よくあてはまること。適切であること。

【往来(おうらい)】⇒行ったり来たりすること。

【活用(かつよう)】⇒効果的に利用すること。

【自明(じめい)】⇒特に証明などをせず、明らかであること。分かりきっていること。

【迅速(じんそく)】⇒非常に速いこと。きわめて速いこと。

【即する(そくする)】⇒ぴったり適合する。

『ポスト・プライバシー』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

カンシの目が光る。

②記憶をソウシツする。

キュウチに立たされる。

トクメイで書き込む。

⑤重要なことをシサする。

⑥時間がスイイする。

ジメイな事実。

ジンソクな動きをする。

解答①監視 ②喪失 ③窮地 ④匿名 ⑤示唆 ⑥推移 ⑦自明 ⑧迅速
問題2『このような自由さの裏面に、私たちのIDの管理や監視も生まれてきている。』とあるが、『このような自由さの裏面』とは、どのような状態か?
解答例インターネットの世界で、外見や年齢、性別を変えることができ、他人とヴァーチャルな関係を持ち、ヴァーチャルな社会を築くことができる状態。
問題3『アンジェラの言葉は、少なくとも今日の社会が向かっている方向性について、一定の事実を含んでいることは確かだ。』とあるが、「一定の真実を含んでいることは確かだ」と言えるのはなぜか?本文中から抜き出しなさい。
解答例個人の情報が多種多様なシステムに登録され、それらこそが個人についての最も確実な記憶として重視され、活用され始めているから。
問題4『だから個人に関する最も信頼が置ける情報もそこから生まれていた。』とあるが、「そこ」とは何を指すか?本文中から10文字で抜き出しなさい。
解答例人間との親密な関わり
問題5『他人についての情報を得るための別の選択肢も持つようになった。』とあるが、「別の選択肢」とは何か?
解答例個人についての社会的記憶を、情報システムでつくること。

まとめ

 

以上、今回は『ポスト・プライバシー』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。

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国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。

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