「批判」という言葉は、普段の文章でもよく目にします。ただ、似たような言葉で「非難」や「批評」などもあります。
これらの言葉の違いや使い分けが気になる人も多いのではないでしょうか?そこで今回は、「批判」の意味や使い方・類語・対義語などをわかりやすく簡単に解説しました。
批判の意味
まず、「批判」を辞書で引くと次のように書かれています。
【批判(ひはん)】
①物事に検討を加えて、判定・評価すること。
②人の言動・仕事などの誤りや欠点を指摘し、正すべきであるとして論じること。
③哲学で、認識・学説の基盤を原理的に研究し、その成立する条件などを明らかにすること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「批判」には全部で3つの意味がありますが、一般的には②の意味として使われます。
すなわち、「人の言動の誤りや欠点を指摘し、正すべきであると論じること」です。
ポイントは、「相手を正そうとする」という点です。
「批判」と聞くと、一方的に悪口を言うようなイメージですが実際には異なります。あくまで相手を正しい道へ導こうとするのが目的なのです。
例えば、目の前で誰かが間違った箸の持ち方をしていたとしましょう。
この場合、相手に対して「その持ち方は間違っているからやめたほうがいいよ」と言ったりすることは「批判」です。
なぜなら、「相手の箸の持ち方を正そうとする」という目的の上での指摘だからです。
「批判」とは、このように間違いや誤りを正すための言動を指すわけです。
「批判」の「判」は、「判定」などの熟語もあるように、「はっきりさせる」という意味があります。
したがって、物事を正しく指摘してはっきりさせるような時に「批判」を使うのです。
批判の類義語
次に、「批判」の「類義語」を見ていきましょう。
基本的には、相手に対して何か意見を言ったり評価したりする言葉が類義語となります。
ただし、どれも全く同じ意味というわけではないので、それぞれの微妙な違いを解説していきたいと思います。
「批判」と「非難」の違い
「非難」とは「相手の欠点などを責めること」です。
例えば、「出来の悪さを非難する」「問題発言を非難する」などのように用います。
「非難」をする場合は、「相手を正そう」という意思はありません。
そのため、「批判」のように「相手を正しい道へと導く」という思いやりなどはない言葉となります。
つまり、「非難」の方が相手を口で責めるだけのような攻撃的なイメージということです。
また、「非難」は人のみに使うのに対し、「批判」は人だけでなく物事に対しても使うという違いがあります。
「批判」と「批評」の違い
「批評」とは「物事の良し悪しなどを考えて、評価すること」です。
例えば、「絵画を批評する」「論文を批評する」などのように用います。
「批評」は、人ではなく作品に対して使うのが特徴です。
また、「批評」は「批判」よりも「はっきりさせる」というニュアンスが弱い言葉です。
なぜなら、「評」という字が入っているように、「対象を評価すること」が重視された言葉だからです。
「批評」は、相手を正したり欠点を責めたりということではなく、作品を客観的に評価するような時に使われます。
「批判」と「指摘」の違い
「指摘」とは「欠点などを指し示すこと」です。
例えば、「誤字を指摘する」「ミスを指摘する」などのように用います。
「指摘」という言葉自体に、「相手を正そう」という意味は特に含まれていません。
また、「非難」のように「相手を責める」という意味も含まれていません。文字通り、ただ「指し示す」だけです。
したがって、両者の関係性としては「指摘して、なおかつ正そうとする言動が批判」だと言えます。
「批判」と「反論」の違い
「反論」とは「相手の意見に反対すること」です。
例えば、「先生に反論する」「反論の余地がない」などのように用います。
「批判」との違いは、「相手の意見があるかどうか」だと言えます。
「反論」は、大前提として相手の意見がまずあり、その上で反対意見を述べます。
一方で、「批判」は必ずしも相手の意見があるとは限りません。場合によっては、いきなりこちらから批判する場合もあります。
実際の使い方としても、「反論」の方は議論や討論など相手の意見がある場面で使われることが多いです。
批判の対義語
続いて、「批判」の対義語です。
「反対語」の場合は、自然と相手を褒めたり同意したりといった意味の言葉となります。いずれも良い意味として使うのが特徴です。
批判の英語訳
「批判」は、英語だと「criticism」と言います。また、動詞だと「criticize(批判する)」などを使う方法もあります。
「His manner invited criticism.」(彼のマナーは批判を浴びた。)
「I’m going to criticize the government.」(私は政府を批判するつもりです。)
なお、「非難」の場合も同様に「criticism」や「criticize」を使えますが、こちらは「blame」の方がニュアンスとしては近いです。
「I don’t blame you for mistake.」(私はあなたのミスを非難するつもりはない。)
その他、「熟語」の「find fault with」(~の欠点を探す)」を使う手もあります。
「Don’t find fault with others.」(他人の欠点を探さないでくれ。)
状況に応じて、上手く使い分けるようにしてください。
批判の使い方・例文
最後に、「批判」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 批判と悪口は明確に言うと意味の異なる言葉である。
- 批判は、理由や根拠を元に行わないと意味がない。
- 批判的思考力及び批判力を教育に取り入れるつもりです。
- 批判ばかりする人は、正論でも周りからは嫌われるだろう。
- 相手を批判をする時は、頭ごなしに否定をしない方がいい。
- どんなご批判も受け入れる覚悟であります。
- 番組中の出演者の態度に、批判の声が上がったようだ。
「批判」という言葉は、様々な場面で使うことができます。そして、必ずしも否定的な使い方をするわけではないのが特徴です。
例えば、3.の「批判的思考力」を見てください。
「批判的思考力」とは「Critical Thinking(クリティカル・シンキング)」の日本語訳で、「様々な問題を論理的に考えて導き出す」という意味を持ちます。
最近では、学校教育でもよく取り入れられている考え方です。この事からも分かるように、「批判」は決して文句や悪口を言うための言葉ではありません。
本来の使い方としては、善悪を正したり、正誤をはっきりさせたりするときに使う言葉ということになります。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「批判」=人の言動の誤りや欠点を指摘し、正すべきであると論じること。
「類義語」=「非難・批評・指摘・反論」
「対義語」=「賛同・同情・称賛・絶賛」
「英語訳」=「criticism」「criticize」「find fault with」
世の中は、ある意味「批判すること」で成り立っている部分もあります。この記事をきっかけに、正しい意味での「批判」を心がけてみてはいかがでしょうか?