煩雑 繁雑 違い 使い分け 漢字

「はんざつ」という言葉は、漢字だと2つの書き方があります。

煩雑な手続き」「繁雑な仕事」

この2つの使い分けに迷うという人は多いと思われます。そこで今回は、「煩雑」と「繁雑」の違いについて詳しく解説しました。

煩雑の意味・読み方

 

まずは、「煩雑」の意味からです。

【煩雑(はんざつ)】

こみいっていてわずらわしいこと。また、そのさま。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

煩雑」とは「こみ入っていてわずらわしいこと」を意味します。

「こみ入る」とは「物事の仕組みが複雑なこと」、「わずらわしい」とは「面倒くさいこと」という意味です。つまり、物事が複雑で面倒くさいことを「煩雑」と言うわけです。

例えば、裁判の手続きなどは非常に複雑で面倒くさいため、弁護士に依頼するのが一般的です。そのため、「裁判の手続きは、煩雑である」などのように用いられることがあります。

「煩雑」とはこのように、何か複雑なことに対して「面倒くさい」と感じた場合に使われる言葉となります。

繁雑の意味・読み方

 

続いて、「繁雑」の意味です。

【繁雑(はんざつ)】

なすべきことなどが多すぎて、ごたごたしていること。また、そのさま。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

繁雑(はんざつ)」とは「物事が多くてごたごたしていること」を意味します。

「ごたごた」とは「まとまりがない様子のこと」を表します。「ごちゃごちゃ」と言い換えてもよいでしょう。すなわち、物事が多くて、ごちゃごちゃした様子を「繁雑」と言うわけです。

例えば、家事というのはやることが多くてごたごたしています。料理や洗濯、風呂掃除、トイレ掃除などやることが常にあり、時間がとられるのが常識です。

そのため、「繁雑な家事に時間をとられた」などのように用いられることがあります。「繁雑」とはこのように、物事のまとまりがない様子に対して使われる言葉となります。

煩雑と繁雑の違い

煩雑 繁雑 違い 使い分けは

ここまでの内容を整理すると、

煩雑」=こみ入っていてわずらわしいこと。

繁雑」=物事が多くてごたごたしていること。

ということでした。

両者の違いは、2つの点から比較すると分かりやすいでしょう。

1つ目は、「人の気持ちが含まれるかどうか」です。

「煩雑」の方は「面倒くさい・わずらわしい」という人の気持ちが含まれます。ところが、「繁雑」の方は、そのような心理的な要素は含まれていません。

これはなぜかと言いますと、両者の語源に関係しているからです。

」という字は、元々「火が燃えるように頭がイライラする」という意味でした。これは「煩悩(ぼんのう)」などの言葉もあることからも分かるかと思います。

一方で、「」という字は元々「どんどん増える」という意味でした。こちらは「繁殖(はんしょく)」などの言葉と同じイメージです。

つまり、「繁」の方は「感情抜きに、単に量が多い」という意味を表しているのです。そのため、「繁雑」の方には人の気持ちは含まれないわけです。

そして2つ目は、「何を強調するか」です。

「煩雑」の方は、物事の複雑さを強調します。一方で、「繁雑」の方は物事の多さを強調します。

どちらも「雑」という字があるので、「ごちゃごちゃしている」という意味は含んでいます。しかし、「繁雑」の方はどちらかというと物事の量に対してスポットが当てられているのです。そのため、「繁雑」は仕事や作業など量が多いものに対して使う傾向にあります。

一方で、「煩雑」の方は手続きや方法など何らかの仕組みに対して使われることが多いです。そのため、物事の多さを強調するような場面で使われるということです。

以上、まとめますと、

煩雑」=面倒くさいという気持ちが含まれる。複雑さを強調)

繁雑」=人の気持ちは含まれない。(物事の多さを強調)

となります。

煩雑・繁雑の類義語

 

「はんざつ」の「類義語」も確認しておきます。

「煩雑」の類義語

複雑(ふくざつ)】⇒物事の事情や関係が、込み入っていること。
面倒(めんどう)】⇒手間や時間がかかり、わずらわしいこと。
厄介(やっかい)】⇒扱いに手数がかかり、わずらわしいこと。
混迷(こんめい)】⇒複雑に入り混じっていて、見通しがつかないこと。
錯乱(さくらん)】⇒入り乱れて秩序がないこと。ごちゃごちゃになること。

「繁雑」の類義語

手間(てま)】⇒それに費やされる時間や労力。
手数(てかず)】⇒それをするのに必要な作業などの数。
繁多(はんた)】⇒物事や用事が非常に多いこと。
多忙(たぼう)】⇒忙しくてやることが多くある様子。
多事(たじ)】⇒仕事や用事が多く、忙しいこと。

煩雑・繁雑の対義語

 

逆に、「対義語」としては以下のような言葉が挙げられます。

「煩雑」の対義語

簡易(かんい)】⇒物事が簡単でたやすいこと。
簡略(かんりゃく)】⇒手短で簡単なこと。
簡素(かんそ)】⇒飾り気がなく、質素なこと。
平易(へいい)】⇒やさしいこと。たやすく理解できること。
単純(たんじゅん)】⇒混じり気がないこと。他の要素などが入ってないこと。

「繁雑」の対義語

簡略(かんりゃく)】⇒手短で簡単なこと。
簡素(かんそ)】⇒飾り気がなく、質素なこと。
閑暇(かんか)】⇒することが何もなく、暇なこと。

使い方・例文

 

最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。

【煩雑の使い方】

  1. 煩雑さを避けるためには、専門家に任せたほうがよい。
  2. 手書きのみで書類を申請するのは、煩雑すぎるだろう。
  3. 煩雑な手続きが必要なため、その法案は否決となった。
  4. 身分証明をする手間は煩雑だが、防犯には必要不可欠だ。
  5. 煩雑な状況なので、もっとシンプルにしてください。

【繁雑の使い方】

  1. 月末が近づいてくると、いつも繁雑な仕事に追われる。
  2. AIの発達により、繁雑な事務作業は減るようになった。
  3. 繁雑を極める仕事により、プライベートの時間がすり減った。
  4. 共働きの主婦にとって、繁雑な家事労働は大きな負担となる。
  5. 繁雑な仕事は減らして、スケジュール管理をした方がいい。

まとめ

 

以上、本記事のまとめです。

煩雑」=こみ入っていてわずらわしいこと。複雑さを強調)

繁雑」=物事が多くてごたごたしていること。多さを強調)

使い分け」⇒「わずらわしい」という人の気持ちを含む場合は「煩雑」を使う。

ポイントは、両者の語源を覚えておくことです。「煩雑」の「煩」は「煩悩」と同じ漢字です。そのため、人がイライラして面倒くさいと感じるような時は「煩雑」を使うと覚えておきましょう。