「群衆」と「群集」は、どちらも同じ読み方の「ぐんしゅう」として使われています。
「群衆に紛れる」「群集心理」
この2つは同じ意味なのでしょうか?それとも使い分けるべきなのでしょうか?
今回は「群集」と「群衆」の違いについて詳しく解説しました。
群集の意味
まずは、「群集」の意味です。
【群集(ぐんしゅう)】
⇒人々が大ぜい群がり集まること。また、その人々。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「群集」とは「人々が群がり集まること」を表した言葉です。また、「群がり集まった人々」そのものを表すような意味も持っています。
多くの辞書だと、「群集」には動詞と名詞の両方の意味が載せられています。ただ、原則として「群集」は動詞の意味として使う言葉だと考えてください。
例えば、以下のような使い方です。
- やじ馬が群集する。
- 群集心理が働く。
※「群集心理」とは「人々が群がり集まる心理」という意味です。
「群集」の語源を確認しておくと、「群」は、「大群」「魚群」などがあるように「むらがる・むれる」という意味があります。
そして、「集」は「集合」「集会」などがあるように「あつまる・つどう」という意味があります。
つまり、「何かが群がり集まる」という動作を表した言葉が「群集」ということです。この時の「何か」とは、人以外の魚や鳥などが含まれることもあります。
群衆の意味
続いて、「群衆」の意味です。
【群衆(ぐんしゅう)】
⇒群がり集まった人々。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「群衆」とは「群がり集まった人々」という意味です。こちらは主に名詞として使われる言葉となります。
例えば、以下のような使い方です。
- 群衆を扇動する。
- 群衆にまぎれる。
前者は「集まった人々をあおる」、後者は「集まった人々にまぎれる」という意味です。
「群衆」の語源も確認しておくと、「群」は同じく「むらがる・むれる」という意味です。そして、「衆」は「大衆」「観衆」「聴衆」などがあるように「多くの人々」という意味があります。
よって、「群衆」は「多くの人々の集まり」という名詞を表す言葉となります。
群集と群衆の違い
ここまでの内容を整理すると、
「群集」=人々が群がり集まる。「群衆」=群がり集まった人々。
ということでした。
両者の違いは、2つの点から比較すると分かりやすいでしょう。
1つ目は、「対象の範囲の違い」です。
「群集」は、人を含めたすべての生物に対して使うことができます。一方で、「群衆」は原則として人間にしか使いません。
要するに、「群集」の方が広い範囲を対象とした言葉ということです。
そして、2つ目は「文法的な違い」です。
「群集」は、「群集する」のように後ろに「する」を添えて主に「動詞」として使います。一方で、「群衆」は「群衆を・群集は」のように後ろに「~を」「~は」などを添えて「名詞」として使います。
つまり、前後の文脈によって、ある程度どちらを使うか判断できるということです。
以上、違いをまとめますと、
「群集」=全ての生物に使える。(動詞として使う)
「群衆」=人間のみに使える。(名詞として使う)
となります。
なお、既に説明した通り「ぐんしゅう心理」は、現代では「群集心理」と書きます。なぜなら、この場合の「ぐんしゅう」は「動詞」としての意味だからです。
ただし、昔の書籍(特に戦前)だと「群衆心理」と書く本も見受けられます。
「ぐんしゅう」は元々「群聚(くんじゅ)」と書いていました。この時の漢字の名残りがあるため、「群衆」を動詞的に使う場合もあるということです。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。
【群集の使い方】
- 群集心理によって、巧みに人を誘導していく。
- 群集劇によって、ドラマは展開されていった。
- 通行人が群集して、彼に握手を求めてきた。
- 渡り鳥は、群集して身を守る性質がある。
- ヤジ馬が群集することにより、大混乱となった。
【群衆の使い方】
- 群衆を相手に、選挙前の演説を行う。
- 建物の広場には、大群衆が集まっていた。
- 沿道は、おびただしい数の群衆で埋まっていた。
- 群衆をかき分けながら、前へ進んでいった。
- ハロウィンの季節になると、群衆が大騒ぎをする。
※「群集劇」とは「主役中心ではなく、不特定多数の大人数で話を展開していく劇」のことです。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「群集」=人々が群がり集まる。(動詞として使う)
「群衆」=群がり集まった人々。(名詞として使う)
「違い」⇒「群集」は動詞として使い、すべての生物を対象とする。「群衆」は名詞として使い、人のみを対象とする。
「群集」の方が広い対象に使えますが、一般的には「群衆」を使うケースの方が多いです。「衆」は「大衆」などの熟語があるように「人」を対象とする、と覚えておけば違いを忘れにくいでしょう。