「げんけい」という言葉は「原型を作る」「原形を留めない」などのように、二つの漢字が使われています。
両方ともよく使われていますが、この場合はどのように使い分ければいいのでしょうか?今回は、「原型」と「原形」の違いについて詳しく解説しました。
原型の意味
まずは、「原型」の意味です。
【原型(げんけい)】
① 鋳物(いもの)など同じ物をいくつも作る時、型をとるために製作されたもの。
② 洋裁で、洋服の製図の基礎となる型。
③自然哲学的生物学で、動植物の諸種の類群から現実の生物の根源となるものとして抽象されたモデル。ゲーテの形態学などにおいて論じられた。
④ 心理学で、表面にあらわれる現象の背後にあるもの。無意識のうちに働く潜在的な力。
出典:三省堂 大辞林
「原型」には全部で4つの意味があります。ただ、一般に使われるのは①の意味がほとんどです。
すなわち、「原型」とは「製作物の元となる型のこと」を表した言葉となります。
使い方としては、以下の通りです。
粘土を使い、人形の原型を作る。
この場合は、「人形の元となる形を作る」ということです。人形というのは、作る前に必ず元となる型が存在します。その型のことを、ここでは「原型」と言っているわけです。
言葉の意味を補足しますと、「製作物」とは「家具や道具など完成された品物」、「型(かた)」とは「決まった形や形状」という意味です。つまり「原形」とは何らかの完成品の元となる形を表すことになります。
原形の意味
続いて、「原形」の意味です。
【原形(げんけい)】
⇒もとの形。
出典:三省堂 大辞林
「原形」とは「元の形のこと」を意味します。使い方としては、以下の通りです。
原形をとどめない顔になった。
この場合はつまり、何らかの外傷などにより「元の形が分からないくらい顔が変わった」ということです。
また、その他の用例としては「動詞の原形」があります。「動詞の原形」とは「動詞の基本的な形のこと」を表した言葉です。
例えば、以下のような2つの英文があったとしましょう。
「He goes to school by bus.」(彼はバスで学校に行く。)
「He went to school by bus.」(彼はバスで学校に行った。)
上記の「goes」と「went」の「原形」はどちらも「go」です。もしも主語が「He」ではなく「I」で、なおかつ過去形でなかった場合、動詞は基本形である「go」を用います。
(例)⇒「I go to school by bus.」(私はバスで学校に行く。)
このように、「動詞が変化する前の形のこと」を「原形」と言うわけです。
原型と原形の違い
ここまでの内容を整理すると、
「原型」=製作物の元となる型のこと。「原形」=元の形のこと。
ということでした。
両者の違いを簡単に言うと、「原型」は「完成品の元となる形」、「原形」は「変化する前の形」だと言えるでしょう。
まず大前提として、「原型」の方は何かを完成させる場合に使います。そのため、「原型」は人が作る製作物に対して使うことになります。
一方で、「原形」は「変化する前の形」という意味でした。したがって、こちらは「顔」や「動詞」など変化する幅広いものに対して使うことになります。
なお、両者の違いは漢字にも表れています。
「原型」の「型」は、「血液型」「量産型」などと同じ漢字です。転じて、「型」=「一定の形・共通した特徴」という意味があります。
対して、「原形」の「形」は「図形」「形式」などと同じ漢字です。よって、「形」=「見た目・姿」などの意味となります。
つまり、「型」は「決められた形」なのに対し、「形」は「色々な形」ということです。そのため、「原形」の方は変化する時に使うのです。
このように漢字の語源まで覚えておけば、両者の違いを理解しやすいと言えるでしょう。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で確認しておきます。
【原型の使い方】
- ナイフの原型を元に、製作にとりかかる。
- まずは作品の原型を作ることから始めよう。
- 洋裁の原型を、図面に書き記す作業をする。
- 胸像の原型を作るだけで、3日もかかった。
- 原型を作った後に、実際のプラモデルを作る。
【原形の使い方】
- 原形を留めていないほど、バッグは引き裂かれていた。
- その村は、当時の原形を留めていないほど荒地になっていた。
- 原形をまったく残さずに、自動車を破壊された。
- 動詞の原形に「ing」をつけると、動名詞となる。
- 原形不定詞を使う動詞をすべて抜き出しなさい。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「原型」=製作物の元となる型のこと。(完成品の前の形)
「原形」=元の形のこと。(変化する前の形)
「違い」⇒「原型」は「できあがる前の(決まった)形」を表し、「原形」は「変わる前の(色々な)形」を表す。
「げんけい」は、英語の文法などにおいても使われる言葉です。これを機にぜひ正しい意味を理解して頂ければと思います。