「しょくりょう」を漢字で書く場合、次のように二つの表記があります。
「食料を備蓄する」「食糧危機に陥る」
どちらも似たような漢字ですが、この場合はどう使い分ければいいのでしょうか?今回は「食料」と「食糧」の違いを詳しく解説しました。
食料の意味・読み方
まずは、「食料」の意味からです。
【食料(しょくりょう)】
①食用にする物。食べ物。
②食事の費用。また、生活費。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「食料」とは簡単に言うと「食べ物全般のこと」です。したがって、お米や野菜、果物、肉、魚などあらゆる食べ物が「食料」に含まれることになります。
例えば、「食料を調理する」であれば、肉や魚、野菜などを調理して食事のメニューを完成させるような意味となります。「食料」の方は普段から使われているので分かりやすいでしょう。
ちなみに、明治時代の小説などでは、「食料」=「食事の代金」という意味でも使われています。上の辞書の説明だと②です。
ただし、現在ではこの意味で使われることはほぼありません。そのため、無理して覚える必要はないと言えます。
食糧の意味・読み方
続いて、「食糧」の意味です。
【食糧(しょくりょう)】
⇒食用とする物。食物。糧食。特に、米・麦などの主食物をさす。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「食糧」とは「米や麦などの主食」を表した言葉です。例えば、米などの主要作物が不足した場合に、「食糧危機が発生する」のように言います。
「食糧」は、主食に対して使われるのが特徴です。「主食」とは普段の食事で主となる穀物のことを指し、米や麦以外には、パンやトウモロコシ、イモ類なども含まれます。
これらのエネルギー源となる炭水化物系の食べ物のことを、「食糧」と呼ぶわけです。
食料と食糧の違い
ここまでの内容を整理すると、
「食料」=食べ物全般のこと。「食糧」=米や麦などの主食のこと。
ということでした。
両者の違いを一言で言うと、「意味の範囲」ということになります。
「食糧」は、主食のみを指すため食べ物の範囲としては狭いです。一方で、「食料」は、主食以外も指すため食べ物の範囲としては広いです。
以上の事から考えますと、「食料≧食糧」という関係が成り立つことが分かるかと思います。つまり、食料のうち、主食となるものが食糧ということです。「食料の中に食糧が含まれる」と考えても構いません。
念のため、両者の語源も確認しておくと、「食糧」の「糧」には「蓄える」「携帯する」などの意味があります。
実際に、お米というのは昔から貯蔵庫に蓄えたりおにぎりとして持ち歩いたりしていました。この事から、「食糧」は穀物のような食べ物を指すようになったのです。
一方で、「食料」の方は「食事の材料」という意味があります。したがって、本来の意味としては、「食料」は「料理を作る前の材料」を指すのが適切なのです。
このように、漢字本来の語源から考えていくと、両者の違いを理解しやすいでしょう。
なお、経済用語としてよく使われる「食糧自給率」という言葉があります。
「食糧自給率」とは「国内における食糧の消費が、どれだけ国産で賄われているか?」を表した指標です。本来は「食糧自給率」が正しいのですが、最近では「食料自給率」と書く場合もあります。
その理由は、昔と比べて日本人が消費する食べ物がお菓子やスイーツなど主食以外の割合が増えてきたからだと言われています。時代とともに食生活が変化したため、言葉も変わってきたということでしょう。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。
【食料の使い方】
- 自炊して節約するために、食料を買いに行く。
- バーベキューを行うために、食料を調達した。
- 生鮮食料品の売り場で、新鮮な魚を購入する。
- 売れ残って使い物にならない食料を廃棄する。
- 日本は海外から多くの食料を輸入している国だ。
【食糧の使い方】
- 日本の食糧自給率は、海外に比べて低い。
- 各国の食糧問題を解決するために、対策を練る。
- アフリカ諸国における食糧事情が悪化した。
- 一週間分の食糧を携行するようアドバイスした。
- 100年後は人口爆発により食糧不足が起きると言われている。
基本的には、主食か主食じゃないかで判断します。もしもどちらを使うか迷った場合は、その食べ物を持ち運んだり貯蔵したりするかどうか?で考えてみてください。
例えば、ホウレンソウなどは持ち運んだりすることは基本しません。そのため、ホウレンソウは「食料」となるわけです。
逆に、米やイモなどは持ち運んだりすることがよくあるので、「食糧」を使うということです。もちろん、単に主食かどうか?で判断しても構いません。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「食料」=食べ物全般のこと。本来は「食事の材料」という意味。
「食糧」=米や麦などの主食のこと。「糧」は「蓄える」「携帯する」などの意味。
「違い」⇒「食糧」は広い意味の言葉、「食糧」は狭い意味の言葉。
「食料」と「食糧」は重なっている意味もありますが、明確に異なる意味もあります。「食料」のうち主食となるものが「食糧」だと覚えておきましょう。