「英断」という言葉は、主にビジネスシーンにおいて使われています。特に「英断を下す」といった用例が多いです。
ただ、具体的にどのような場面で使えばよいのかという問題があります。特に目上の人に対して使う場合に、上から目線にならないのかどうかが気になります。
そこで今回は、「英断」の意味や使い方、反対語、英語訳などを詳しく解説しました。
英断の意味・読み方
まず、「英断」を辞書で引くと次のように書かれています。
【英断(えいだん)】
⇒思いきりよく物事をきめること。すぐれた決断。
出典:三省堂 大辞林
「英断」には2つ意味があります。
1つ目は、「思い切りよく物事を決めること」という意味です。
【例】⇒社長は今後の会社のために英断を下した。
この場合は、簡単に言うと「思い切った決断をした」という意味です。
具体的には、大胆な人事異動を行ったり、過去にないリストラを行ったりといったことです。
このように、思い切りがよく大胆な決断をする行為が1つ目の意味となります。
そして2つ目は、「すぐれた決断」という意味です。
【例】⇒大臣の意思決定は、まさに英断だった。
この場合は、「大臣の決定がすぐれていた」という意味になります。
2つ目の意味は、原則として「よい判断」「すぐれた判断」などのように肯定的な使い方をするのが特徴です。
整理すると、
「英断」=①思い切りよく物事を決めること。②すぐれた決断。
となります。
①の場合は、「英断を下す」「英断を下した」のように現在完了形で使うことが多いです。対して、②の場合は「英断だった」「英断でした」のように過去形で使うことが多いです。
思い切りのよさ・大胆さなどは判断を下した瞬間に分かるものです。一方で、すぐれた決断かどうかはある程度時間が経ってからでないと分かりません。
そのため、両者の文法的な使い方に違いが出てくることになります。
英断の語源・成り立ち
「英断」は、「英」と「断」という漢字が合わさってできたものです。
「英」は「くさかんむり(艹)」に「美しさ」を表す「央」から成り立っています。すわなち、「英」とは「美しい花」を表した漢字となります。
ここから、「英」という字は「(他よりも)すぐれている」という意味になるのです。
一方で、「断」は「決断」「断定」などがあるように「決める・定める」という意味があります。転じて、現在では何かの意思決定をするような時に使われています。
以上の事から考えますと、「英断」とは「他よりもすぐれた決断」を表す熟語である事が分かります。
つまり、「思い切りの良さ」などは元々の意味には含まれていないということになります。
すぐれた判断というのは、「結果的に大胆であった」ということが多いです。したがって、「大胆さ」の方の意味は、元々の意味から派生したものと考えるのが妥当でしょう。
英断の類義語
続いて、「英断」の類義語を紹介します。
「英断」の類義語は多くありますが、全く同じ意味の言葉(同義語)と呼ばれるものはありません。
この中では「勇断」や「果断」が、比較的意味が近い言葉だと言えます。
大まかなイメージとしては、「英断は決断の中に含まれる語」と考えると分かりやすいです。
つまり、「決断」の中でも特にすぐれた判断や大胆な判断を下すことを「英断」と言うわけです。「勇断」や「果断」なども「決断」の中に含まれることになります。
英断の対義語
逆に、「対義語」としては以下のような言葉が挙げられます。
「すぐれた決断」の対義語は、簡単に言えば「すぐれていない決断」を意味します。
したがって、「愚かな・賢くない」という意味で「愚断」を使うのが一番分かりやすいです。
また、すぐれていない判断というのは、決断力に乏しかったり早まった判断をしたりすることにより生まれる場合が多いです。
そのため、これらの言葉を意味する「不断」や「早計」を反対語として使っても構いません。
英断の英語訳
「英断」は、英語だと次のように言います。
「a wise decision(すぐれた決断)」
「a decisive judgment(思い切った判断)」
「wise」は「賢い・賢明な」、「decisive」には「決断力のある」という意味があります。
この2つに「決断」や「判断」を示す「decision」「judgment」を付けることで「英断」を表すことができます。
例文だと、それぞれ以下のような言い方です。
He must take a wise decision.(彼はすぐれた決断をする必要がある。)
She made a decisive judgment for this matter.(彼女はこの問題に対して、思い切った決断をした。)
英断の使い方・例文
最後に、「英断」の使い方を具体的な例文で紹介しておきます。
- 国土交通省は、道路の大規模工事を行う英断を下した。
- 社長は今後の運命をかけた一世一代の英断を下したようだ。
- 彼が下した英断は非難もあったが、後に多くの人から称賛された。
- トップの英断により、10名の命が失われずに済んだと言えるだろう。
- 「リーダーだけ残して解散する」という彼の判断は、英断であった。
- 指揮官の決定はまさに英断でした。今年一の采配だと言えます。
- やることはやりましたので、あとは彼の英断を仰ぎましょう。
- 今回の社長のご英断には、社員一同本当に感謝しています。
「英断」という言葉は、ビジネス・政治・日常会話など様々な場面で使うことができます。基本的には相手への褒め言葉として用いるのが大きな特徴です。
意味としては、①「大胆な決断」②「すぐれた決断」のどちらかで使われるということでした。ただ、実際の用例としては②「すぐれた決断」という意味で使うことの方が多いです。
上記の例だと、前半3つの例文が「大胆な決断」、後半5つの例文が「すぐれた決断」という意味になります。
すでに説明した通り、元々の語源は「他よりもすぐれていること」を表す言葉でした。したがって、原語に忠実に従うならば、こちらの意味で使う方が望ましいことになります。
なお、「英断」を上司などの目上の人に使う場合は、最後の文のように頭に「ご」をつけて「ご英断」とします。目上の人に対して「英断でした」などと言うのは、上から目線で失礼な表現となるので注意しましょう。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「英断」=①思い切りよく物事を決めること。②すぐれた決断。
「語源・成り立ち」=他よりもすぐれた決断。
「類義語」=「決断・決心・裁断・勇断・果断・即断・速断」
「対義語」=「愚断・不断・早計」
「英語訳」=「a wise decision」「a decisive judgment」
ポイントは、ただ意味を覚えるのではなく、語源や文法などと合わせて意味を把握しておくことだと言えるでしょう。この記事をきっかけに、「英断」の正しい使い方を覚えて頂ければと思います。