「デジタル」と「アナログ」は、テレビやパソコンなどの電子機器、時計や絵などの身近なものに使われています。また、現代文の用語としてもよく登場するようです。
ただ、よく目にするにもかかわらず、正確な意味を理解している人は少ないかと思います。そこで今回は「デジタル」と「アナログ」の違いを、具体例を使いなるべく簡単に分かりやすく解説しました。
後半ではそれぞれの「メリット」「デメリット」についても触れています。
デジタルの意味を簡単に
まず、「デジタル」の意味を辞書で引くと次のように書かれています。
【デジタル】
⇒連続的な量を、段階的に区切って数字で表すこと。計器の測定値やコンピューターの計算結果を、数字で表示すること。数字表示。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「デジタル」とは「連続するものを段階的に区切り、数字や記号で表現すること」を意味します。
この説明だけでは分かりにくいため、具体例を出しましょう。
「デジタル」は、「時計」を例にすると分かりやすいです。以下の画像は、「デジタル時計」と呼ばれるものです。
デジタル時計は、連続する時間を区切った数字で表します。「連続する時間を区切る」とは一体どういう意味でしょうか?
それは、上の画像で言えば「12:34:56」の次に一瞬で「12:34:57」に変化することです。
実際には、この二つの時刻の間には、「12時34分56秒5」や「12時34分56秒6」のように細かな時間が存在します。
ところが、「デジタル」というのはこのような連続する細かい時間を飛び飛びに区切って表示するのです。
イメージとしては、「正確さ・非連続・切れ目のある・部分」といったキーワードで覚えるとよいでしょう。
きれいに区切っているので、数字自体は正確です。しかし、細かくは連続していない(非連続)ので、部分的で切れ目のある数字ということです。
元々「デジタル」は、ラテン語で「指」を意味する「digitus」を日本語訳にしたものでした。
「指」というのは、1つ1つ折ることによって数字を分けてカウントすることができます。
そこから現在では、「物の量を区切って数値で表現する」という意味で使われるようになったのです。
アナログの意味を簡単に
続いて、「アナログ」の意味も辞書で引いてみます。
【アナログ】
⇒数値を、長さ・回転角・電流などの連続的に変化する物理量で示すこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「アナログ」とは「連続するものを物理量として表現すること」を意味します。「物理量」というのは「目に見える量」という意味です。
こちらも分かりやすい例を挙げましょう。以下の画像は、「アナログ時計」と呼ばれるものです。
「アナログ時計」は、切れ目なく針を動かすことによって時間を表します。つまり、連続する時間を動く針のような物理的なもので表現しているわけです。
アナログ時計は、全体を見るだけですぐに大まかな時間が分かります。上の画像であれば、「だいたい13時55分くらいであること」が一目で分かりますよね。
一方で、大まかな時間は分かりますが、正確で具体的な数値は分かりません。そのため、「アナログ」は、「曖昧(あいまい)さ」といった側面も含んでいます。
「アナログ」は、元々「類比」や「類似」を意味する「analogy(アナロジー)」を由来とします。
「類比」は「比較すること」、「類似」は「似ていること」という意味です。つまり、長針と短針を比較することによって、曖昧ながらも時間を表しているということです。
アナログの語源を調べると、数値は正確に一致している必要はなく、曖昧でよいということが分かるかと思います。
デジタルとアナログの違い
ここまでの内容を整理すると、
「デジタル」=連続するものを段階的に区切り、数字や記号で表現するこ。
「アナログ」=連続するものを物理量として表現すること。
ということでした。
これらを踏まえると、両者の違いは
「デジタル」=正確さ・非連続・切れ目のある・部分。
「アナログ」=曖昧さ・連続・切れ目のない・全体。
と定義することができます。
基本的には両者の違いは上記のように覚えるのが一番理解しやすいです。ここからはさらに、3つの点から両者の違いを比較したいと思います。
1つ目は、「伝達方法の違い」です。
デジタルは、目に見えない情報をコンピュータ上で伝達させます。最も簡単な例が、「パソコン」です。
「パソコン」は、「2進法」という目に見えないデジタルな記号によって動いています。そのため、パソコンを通して文字や写真を送信することはデジタルな伝達と呼べるのです。
対して、アナログは目に見える物理的なモノを伝達させます。分かりやすい例が、車やバイクなどを使った宅配でしょう。
手紙や郵便物を配達するのは、実際に目に見える伝達です。したがって、物そのものを物理的に移動することは、アナログな伝達方法と言えるのです。
2つ目は、「有機的か無機的か」ということです。
「デジタル」は、連続する量を時間や記号によって飛び飛びで表現します。
ここで大事なのは、時間や記号には命がないということです。言い換えれば、「デジタルは機械的で無機的なもの」とも言えるのです。
一方で、「アナログ」は連続する量を物理的に切れ目なく表現します。
「切れ目がない」ということは、裏を返せば、そこには命があることを表しています。したがって、「アナログは生命感のある有機的なもの」と言えるのです。
そして3つ目は、「理性的か感覚的か」ということです。
「デジタル」は、数字やデータを扱う世界なので、完全に理性的な概念だと言えます。そこには、人の感情であったり本能といったものは一切含まれていません。
一方で、「アナログ」の方は感覚的な概念だと言えます。例えば、物理的に動くものであったり目で実際に確認できたりといったことは、まさに感覚的な世界の話です。
よって、デジタルは「理性」、アナログは「感覚」だと言えるのです。
まとめると、
「デジタル」=コンピュータ上で情報を伝達する。無機的。理性的。
「アナログ」=モノそのものを物理的に伝達する。有機的。感覚的。
となります。
デジタル・アナログの長所・短所
「デジタル」と「アナログ」は、次のように「長所」と「短所」を分けることができます。
長所 | 短所 | |
デジタル | 正確。データを保存しやすい。 | 感覚的に分かりにくい。 |
アナログ | 感覚的に分かりやすい。 | 不正確。データを保存しにくい。 |
わかりやすいように2つに分けて解説していきます。
1つ目は、「正確さ」です。
「デジタル」は「アナログ」に比べてとにかく正確です。時計の例でも説明した通り、「デジタル」は秒単位で具体的な時間を表示できます。
これは1分1秒を大切にするビジネスマンやアスリートにとっては大きなメリットでしょう。
一方で、「正確さ」の裏にはデメリットもあります。それは、「感覚的に分かりにくい」という点です。
人間というのは、数字だけを見るよりも具体的な絵や形を見たほうがパッとイメージしやすいです。
特にお年寄りなどデジタル時計に慣れてない人は、数字だけだと分かりにくく感じてしまうという問題点があります。
2つ目は、「データの保存しやすさ」です。
「デジタル」は、データを保存しやすい媒体だと言えます。なぜなら、コンピュータ上で保存されることがほとんどだからです。
コンピュータというのは、基本的に数字や記号で構成されています。したがって、コンピュータとデジタルは相性がいいのです。
一方で、アナログは物理的な概念なため、コンピュータ上で保存することは不向きです。仮にアナログのデータを保存するとしたら、わざわざデジタルに変換しないと保存できないということが起こってしまいます。
他にも同じものを復元できなかったり、データが劣化したりと様々な弊害が起こるのです。これらはアナログの大きなデメリットだと言えます。
デジタル・アナログの使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を具体的な例文で紹介しておきます。
【デジタルの使い方】
- 自動車の内部にはデジタル機器がいくつも掲載されている。
- 画面上にある日付と時間のデジタル表示を確認してください。
- 会社の文書や書類などは、すべてデジタル化する時代である。
- HDMIケーブルは、デジタル形式の映像と音声を転送することができる。
- 音楽のデジタル化により、ノイズが少なくクリアな音質が当たり前になった。
【アナログの使い方】
- 試験会場のアナログ時計は、13時30分を示していた。
- 昔のテレビはアナログ放送であったが、現在はすでに終了している。
- 映像信号のデジタル化により、アナログ出力を持たない製品もある。
- ノイズへの耐性はデジタル信号の方が、アナログ信号よりも優れている。
- デジタル-アナログ変換回路は、デジタル信号をアナログ信号に変換することを指す。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「デジタル」=連続するものを区切って、数字や記号で表現すること。
「アナログ」=連続するものを物理量として表現すること。
「デジタルの特徴」=正確さ・非連続・切れ目のある・部分。コンピュータ上で情報を伝達し、「無機的」で「理性的」。
「アナログの特徴」=曖昧さ・連続・切れ目のない・全体。モノそのものを物理的に伝達し、「有機的」で「感覚的」。
「デジタル」と「アナログ」は、お互いが正反対同士の言葉です。正しい意味を理解した上で、実際の文章で使って頂ければと思います。