「凡事徹底」と呼ばれる四字熟語をご存知でしょうか?
スポーツ選手であれば、元メジャーリーガーのイチロー氏。ビジネスで言えば、経営の神様と呼ばれる松下幸之助氏などが大事にされている考えと言われています。
多くの人が座右の銘や名言にも取り入れている四字熟語。今回はそんな「凡事徹底」の意味や由来、類義語などを詳しく解説しました。
凡事徹底の意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【凡事徹底(ぼんじてってい)】
⇒なんでもないような当たり前のことを徹底的に行うこと、または、当たり前のことを極めて他人の追随を許さないことなどを意味する四字熟語。
出典:三省堂 大辞林
「凡事徹底」は、「ぼんじてってい」と読みます。
意味は「何でもないような当たり前のことを徹底的に行うこと」です。
例えば、受験生であれば「毎日必ず英単語を10個覚える」など最低限行うことがあります。あるいは、スポーツ選手を目指す人であれば、「毎日必ず筋トレを行う」「寝る前にストレッチをする」などやるべき基本的な項目があります。
このように、当たり前のことをしっかりと行うことを「凡事徹底」と言うのです。
何かの夢や目標を達成するには、その人の「才能」が重要だと言う人もいます。しかし、大事なのはやはり「努力」です。
その「努力」というのも想像を絶するような努力というわけではなく、皆ができるような当たり前の努力が大事です。この当たり前の事を継続する大切さ・重要さを説いているのが「凡事徹底」ということになります。
凡事徹底の語源・由来
「凡事徹底」の由来は、「株式会社イエローハットの創業者である鍵山秀三郎氏の言葉」からと言われています。
イエローハットと言えば、タイヤなどのカー用品の大手として有名な会社ですね。彼は自らが著した本のタイトルに、「凡事徹底」という名前を付けています。
その内容としては、
- 朝起きたら布団をたたむ。
- 帰宅時はくつをそろえる。
- 家の前をきれいに掃除する。
など日常生活でのちょっとしたことをしっかりとやることの大切さが書かれています。
彼自身のビジネスに関して言えば、40年以上会社のトイレ・道路などの掃除をやり続けたそうです。
これらの事は誰でもできる作業でありながら、多くの人は実践できてはいません。その当たり前の行為を徹底してやるのが、まさに「凡事徹底」だということです。
鍵山氏は、「心を整えるために掃除や整理整頓を行う」と言っています。なぜ、心を整えるかというとそれは人間の元が心にあるからです。
心がきれいになれば、必然的に行動もレベルの高いものとなっていきます。結果的に、自分や周りの人生が豊かになっていくということです。
このような彼の凡事徹底の精神が、現在のイエローハットの発展に大きな影響を与えたことは間違いないでしょう。
松下幸之助の凡事徹底
「凡事徹底」の精神は、他の起業家にも影響を与えています。有名なのが、松下電器(現パナソニック)創業者の「松下幸之助」です。
「松下幸之助」と言えば経営の神様とも呼ばれ、数々のビジネスを手掛けて世に残してきました。そんな彼が、取引先の企業を訪問した時の話で、大変面白いエピソードがあります。
それは、「売上や利益の額を見ずに、その会社が上手く行っているかどうかを瞬時に見抜いた」というものです。松下幸之助が見ていたのは以下の3つの項目です。
- 従業員がちゃんと挨拶をしているか?
- 会社内がちゃんと整理整頓されているか?
- トイレがちゃんと綺麗に掃除されているか?
どれも当たり前の項目に見えますが、これらの教育が徹底されていない企業は実際に売り上げが低迷しているものなのです。
まず、挨拶がちゃんとできないのは社会人として致命的でしょう。ビジネスは人と人との繋がりからできているので、当たり前といえば当たり前です。
また、整理整頓やトイレ掃除ができていないのは、「自分の心の中が整っていない状況にある」と言えます。さらに、汚くて不衛生な環境にいると、精神的にもマイナスな方向へと行ってしまいます。
このような状況でビジネスを頑張っても、良い成果を望むことはなかなかできません。
ビジネスを長く継続的に行うには、小手先の技術やテクニックなどではなく当たり前のことを徹底できるかどうかが鍵となります。松下幸之助は、そのことを経営者として熟知していたのです。
イチローの凡事徹底
プロ野球界のレジェンドである「イチロー」も凡事徹底の大切さを説いています。以下のセリフは、イチローが実際に発したものです。
小さいことを重ねることが、とんでもない所に行くただ一つの道である。
数々の名言を残してきたイチローですが、このセリフも私たちに突き刺さるものがありますね。
学生時代のイチローは、練習が終わった後も毎日欠かさず10分間の素振りを行っていたそうです。「10分」という数字だけを聞けば、誰にでもできそうな練習にも聞こえてしまいます。
しかし、いざ始めてみるとモチベーションが下がったり、体調がよくなかったりする日などもあるでしょう。
そんな時でも、当たり前のことを毎日継続していく。それが、自分の夢や目標を叶えさせてくれるただ1つの道だとイチローははっきりと述べているのです。
実際にその後、イチローは日本で「7年連続首位打者」という偉業を達成し、海の向こうであるアメリカへ飛び立ちました。そして、メジャー記録である「シーズン最多の262安打」という記録も達成しています。
この記録は、今もなお破られていない世界記録です。「天才」でかつ「凡事徹底」を実践していたイチローだからこそ、達成できた偉業なのかもしれません。
凡事徹底の類義語
「凡事徹底」の「類義語」は以下の通りです。
「凡事徹底」に似た四字熟語は多くありますが、この中だと「飲水思源」が一番近い意味だと言えるでしょう。
「凡事」は「当たり前のこと」、「徹底」は「すみずみまで行き届くこと」を表します。したがって、「当たり前のことを行うこと」や「すみずみまで徹底すること」などを意味する言葉が類義語となります。
その他、慣用句(ことわざ)では、「継続は力なり」なども広い意味では類義語と言えます。「継続は力なり」とは「物事を継続することこそが、その人の力になるものである」という教訓を含めたことわざです。
凡事徹底の英語訳
「凡事徹底」は、英語だと次のように言います。
「Do all the common tasks properly」
直訳すると、「すべての普通の仕事をきちんと行う」となります。
「common」は「一般の・共通の・共有の」などの訳がありますが、ここでは「普通の」という意味で使われています。また、 「properly」は「適当に・適切に・礼儀正しく」などの訳がありますが、こちらは「きちんと」という意味で使われています。
英語の場合は、「凡事徹底」を直接的に訳す表現ではなく、「普通の仕事を行う」「当たり前の仕事を行う」というニュアンスで英文を作成すれば問題ありません。
凡事徹底の使い方・例文
最後に、「凡事徹底」の使い方を例文で確認しておきましょう。
- ビジネスでは、凡事徹底を実践することが売上に繋がると言える。
- 弊社の研修では、凡事徹底の大切さを社員全員に伝えています。
- 当たり前のことを当たり前に行うこと。それが凡事徹底の教えです。
- 朝礼の挨拶・スピーチでは、生徒達に凡事徹底の大切さを説きました。
- 私たちの団体は、設立からずっと凡事徹底をスローガンに掲げています。
- わが社では新入社員だけでなく、先輩社員も凡事徹底を心がけている。
- イチローのような一流アスリートも、凡事徹底を重視する精神を持っている。
「凡事徹底」は上記のように、ビジネス・スポーツ・人間関係など様々な対象に使うことができます。最近ではこの四字熟語を座右の銘にしている人も多いくらいです。
大抵の場合、成功する人・幸せをつかむ人などは「凡事徹底」を実践しているものです。ゆえに、もしもあなたが成功したいと考えているのであれば、凡事徹底を実践することは不可欠だと言えます。
実際に成功した後には、これからの未来ある人へスピーチなどで「凡事徹底」を使ってみることをおすすめします。その際には、イチローや松下幸之助などの有名人を引き合いに出すと、聞き手からしても分かりやすいでしょう。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「凡事徹底」=何でもないような当たり前のことを徹底的に行うこと。
「語源・由来」=イエローハットの創業者、鍵山秀三郎氏の言葉から。
「類義語」=「一意専心・周知徹底・飲水思源・弓調馬服」
「英語訳」=「Do all the common tasks properly」
「凡事徹底」は当たり前のことを実践することです。しかし、過去の偉人達はその当たり前を徹底してきました。誰でもできることはつい軽く考えがちですが、そこに人生を切り開く大きなヒントがあると言えるのではないでしょうか?