『相手依存の自己規定』 200字要約 あらすじ テスト問題 教科書

『相手依存の自己規定』は、高校現代文の教科書に出てくる評論文です。ただ、実際に本文を読むとその内容や筆者の主張が分かりにくい箇所もあります。

そこで今回は、『相手依存の自己規定』のあらすじや要約、テスト対策などを簡単に解説しました。

『相手依存の自己規定』のあらすじ

 

本文は3つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①私がアメリカの大学に滞在していた時、学生たちに、日本の中学生・高校生には自分の心を打ち明ける相手がいなくて悩んでいる人が多いという新聞記事を紹介した。驚いたことに、多くの学生は本当に大切なことは友人はもちろん親にも話したことがないらしい。個人が本当に個人である部分は、他人に言えない部分であって、それを明かすことは自分の存在を危険にさらすようのものなので、打ち明ける他人がいないことで悩むなど愚の骨頂である、という答えだった。私は少々唖然とした。

②この話は、日本人にとって自分とは何か、相手とは何かの問題を解明するための糸口を与えてくれる。日本人が絶えず自分の本当の気持ちを他人に分かってもらいたいと考えるのは、重大な問題を一人心にしまって、その重みにじっと耐えていくという固く閉ざされた自我の仕組みが弱いためだと思われる。それは、日本人は自分がなんであるかという自己同一性の確認を、他者を基準にして行う傾向が強いからである。

③現代の日本語で使われる人称代名詞を調査した結果、日本人は、自分が何者であるかということを、相手が何者であるかを基準にして把握し、それによる自己表現を行っていることが分かった。このような相手に依存する自己規定は、自己が自己自身を見る視点を他者の立場に移すことを意味し、それは相手の立場からの自己規定、他者を介しての自己同一性の確立という心理的パターンにつながっていく。日本人の特性として、他人志向型の大勢順応主義であったり、その人の位置づけをする手がかりを与えてくれない欧米人に対して心理的動揺をしてしまったりするのも、こうした相対的な自己確認の影響である。相手を自己の立場の原点としてのみ考える拡散型自我構造を持つ日本人には、求心的に収斂する固い自我を持つ者同士で行われる対話というのは、最も異質なものなのである。

『相手依存の自己規定』の要約&本文解説

 

200字要約私たち日本人は、絶えず自分の本当の気持ちを誰か他人に分かってもらうことを求めている。それは、日本人が自分とは何かという自己同一性の確認を他者を基準にして行う傾向が強いからである。このような相手に依存する自己規定は、自己が自己自身を見る視点を他者の立場に移すことを意味する。そのため、相手を自己の立場の原点としてのみ考える拡散型自我構造を持つ日本人にとって、対話というのは最も異質なものなのである。(198文字)

「自己規定」とは「自分は何者であるのかを定めること」です。そして、「依存」とは「他に頼って存在すること」です。

よって、「相手依存の自己規定」とは「自分は何者であるのか」という答えを相手に頼って存在していること、という意味になります。

これを踏まえて解説しますと、まず本文は行空きによって三つの段落構成となっています。

第一段落では、日本人の学生が自分の心を打ち明ける相手がいないという悩みをもつことをアメリカの学生に紹介したところ、意外な反応があったというエピソードを語っています。このエピソードをきっかけとして、第二段落では日本人は相手を基準にして自己確認を行う傾向があると結論付けています。

構成としては、第一段落が挿話(エピソード)、第二段落が結論、第三段落が結論の証明や説明にあてられています。第三段落の証明部分は、日本人の人称代名詞の使い方を具体的に示すことにより、その論が成立しているのがポイントです。

私たち日本人は、同輩や目上の人に対しては、「僕」「私」「俺」などの人称代名詞を使い、目下の人には自分の広い意味での地位や資格を表す言葉を使っています。つまり、自分が相手に対してどのような資格を持っているかを判断した上で、相対的な自己把握をしているということです。

この人称代名詞の例を挙げることで、筆者は日本人の自己規定の仕方が相手(他者)に依存していることの証明を行っています。

そして最後に、相手を自己の立場として考えて自己を拡大しようとする日本人にとって、対話というのは異質なものだと筆者は述べています。なぜなら、対話というのは本来、固い自我を持つ者同士が、お互いの対立する意見の調整を図り、利害を調節するものであるからです。

言い換えれば、相手に合わせたり相手の立場に依存したりする日本人の対話は、真の対話ではないということになります。

『相手依存の自己規定』のテスト問題対策

 

問題1

次の下線部の仮名を漢字に直しなさい。

①海外にタイザイする。

コドクに耐える。

③意見をハンエイさせる。

④政権をハアクする。

⑤間違いをシテキする。

⑥実力がキッコウする。

解答①滞在 ②孤独 ③反映 ④把握 ⑤指摘 ⑥拮抗
問題2「それを明かすことは自分の存在を危険にさらすようなものだ。」とあるが、「それ」とは、何を指すか?本文中から13文字で抜き出しなさい。
解答個人が本当に個人である部分
問題3「意外な結果が出たのである。」とあるが、なぜ意外なのか?本文中の語句を使い答えなさい。
解答例日本語には人称代名詞が多いので、広範囲に使用されていると思ったが、使用する範囲が限られており、代わりに広い意味での資格や地位を表す言葉が使用されていたため。
問題4「言語による自己把握の相対性」とは、どういうことか?
解答例自己を言語的に把握する仕方が、相手の性質に依存しているということ。
問題5「このことを指していたのである。」とあるが、「このこと」とは何を指すか?本文中の語句を使い答えなさい。
解答例相対的な自己表現の言語習慣は、必然的に相手の立場からの自己規定、他者を介しての自己同一性の確立、自己と相手の立場の同一化という心理的パターンにつながっていくということ。
問題6

次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。

(ア)日本人は他者の存在を前提とし、自己をその上に拡大投影して自他の合一を図るか、他者との具体的な関係において、自己の座標を決定しながら自己確認を行うかという方式をとる。

(イ)英・独・仏のようなヨーロッパの言語では、話者が自己を言語的に表現する角度は、原則として一定不変であり、用語としては一人称代名詞のみが使われる。

(ウ)日本人は、見知らぬ他人であろうと顔見知りの人であろうと、相手と同調し、正常な人間関係を組もうとする心理的な自己確認のパターンがある。

(エ)日本人は相手の立場でものを考え、自己を拡大して他者を取り込もうとするため、自己に対立するものとしての他者の意識が当然のこととして希薄になる。

解答(ウ)本文では、私たち日本人は見知らぬ他人に対しては、顔見知りの人に対する場合とは非常に異なった接し方をし、相手の正体が不明の時は、正常な人間関係を組めない、とある。

まとめ

 

以上、今回は『相手依存の自己規定』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。なお、本文中の重要語句については、以下の記事でまとめています。