「一緒に事を行う」という意味で「共同」と「協同」の二つが使われています。
「共同生活」「協同組合」
さらに似たような言葉で「協働」や「共働」が使われることもあります。これらの言葉は、一体どのように使い分ければよいのでしょうか?
本記事では、「きょうどう」の違いについて詳しく解説しました。
共同の意味
まずは、「共同」の意味からです。
【共同(きょうどう)】
⇒複数の人や団体が、同じ目的のために一緒に事を行ったり、同じ条件・資格でかかわったりすること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「共同」とは「複数人が同じ条件に立ち、物事を行うこと」を意味します。例えば、以下のように使います。
- 共同トイレで用を足す。
- 共同墓地を使用する。
「共同トイレ」とは、アパートの住人全員が使えるトイレや公園などにある誰でも使えるトイレのことです。また、「共同墓地」とは、複数の人が同じ場所へ納骨した墓地のことを指します。主に、自分だけではお墓の面倒をみきれない人が使う墓地となります。
このように、複数人が同じ立場で関わり、一緒に何かを行うことを「共同」と言うわけです。
協同の意味
続いて、「協同」の意味です。
【協同(きょうどう)】
⇒複数の人または団体が、力を合わせて物事を行うこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「協同」とは「複数の人や団体が、力を合わせて物事を行うこと」を意味します。例えば、以下のような使い方です。
- 協同組合を結成する。
- 漁業協同組合に入る。
「協同組合」とは、個人や事業者が集まりお互いに助け合う組織のことです。身近な例だと、スーパーマーケットのコープなどは、「生活協同組合」を結成しています。また、「漁業協同組合」とは日本の漁業者によって作られた組合のことです。略して「漁協」などとも呼ばれています。
「協同」とはこのように組織の一員がお互いに助け合いながら物事を行っていくことを表す言葉となります。
なお、「協同」の場合は「協同する」のように動詞としての使い方もします。このような動詞としての使い方は「共同」にはありません。
共同と協同の違い
ここまでの内容を整理すると、
「共同」=複数人が同じ条件に立ち、物事を行うこと。
「協同」=複数の人や団体が、力を合わせて物事を行うこと。
ということでした。
両者の違いは、2つの点から比較すると分かりやすいでしょう。
1つ目は、「力を合わせるかどうか」です。
「協同」の方は、必ず皆で力を合わせます。なぜなら、「協同」は相互扶助を原則として、お互いの利益を増進するために行うからです。
一方で、「共同」の方は必ずしも力を合わせるとは限りません。例えば、「共同トイレ」であれば皆が一緒に使用しているだけで「共同」と言えます。
もちろん、「共同」でも力を合わせることはありますが、「共同」の場合はあくまで「同じ条件にいた結果、力を合わせることもある」という意味です。極端な話、同じ条件にいれば、「仲が良くない者同士」「一切協力しない者同士」でも「共同」と言えるわけです。
2つ目は、「文法的な違い」です。
「共同」の方は、「名詞」でしか使いません。一方で、「協同」は「名詞」以外に「動詞」として使うこともあります。
これは両者の語源を比較すれば、納得できるでしょう。
「共同」の「共」は、字訓が「とも」で「一緒」という意味です。対して、「協同」の「協」は字訓が「合わせる」で「一緒に行う」という意味です。
つまり、「協」の方は本来は動詞としての意味が含まれていることになります。そのため、「協同する」のような動詞的な使い方もするということです。
以上、まとめますと、
「共同」=力を合わせるとは限らない。(名詞のみ)
「協同」=必ず力を合わせる。(名詞+動詞)
となります。
ちなみに、日本新聞協会では、次のようなルールを決めているようです。
【共同・協同】⇒「共同」(協同組合・協同一致・産学協同などは別)
要するに、原則として「共同」を使うが、固有名詞などは別ということです。
一般的には、「協同」は大きな団体などの組織に対して使うことが多いです。これは「組織」というのはお互いに協力して力を合わせないと成り立たないからだと言えます。
協働の意味
似たような言葉で、「協働」があります。
【協働(きょうどう)】
⇒同じ目的のために、対等の立場で協力して共に働くこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「協働」とは「同じ目的のために、共に働くこと」を意味します。
「協働」は、文字通り「働く」という点がポイントです。すなわち、営利や非営利など労働に対する利益が関係してくることになります。
その中でも特に、政府や自治体など公的な機関が協力する場合に使うことが多いです。例えば、「官民協働」という言葉です。「官民協働」とは「行政と民間が協力して働くこと」を意味します。
このように、「協働」の場合は「公的な機関」+「協力して働く」という2点が合わさった言葉と考えると分かりやすいでしょう。
ちなみに、「共働」との違いは、同様に「力を合わせるかどうか」が異なります。
また、「協同」との違いですが、「協同」は「働く」とは限りません。言いかえれば、「労働」ではなく普通の行動でも、「協同」と言えるのです。
ただ、実際には「協働」と「協同」はそこまで厳密に使い分けがされているわけではありません。
元々、「協働」は後から作られた「造語」と言われています。「造語」とは「元々存在する言葉を組み合わせて作った新しい言葉のこと」です。
したがって、漢字本来の歴史から言えば「協働」はあまり使われない言葉と覚えてもらっても構いません。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。
【共同の使い方】
- ゴルフ場の近くに共同浴場ができたらしい。
- 近くにある公園の共同トイレで用を済ませた。
- 見ず知らずの人達と共同生活をこなす。
- 共同墓地にしたので、管理費が安く済みます。
- 彼とコンビを組んだ以上、運命共同体だ。
【協同の使い方】
- 産学協同とは、大学などの教育機関と民間企業が提携することだ。
- この地域の河川は、漁業協同組合が権利を持っている。
- 地元の病院ではなく、都心の協同病院で診察を受けた。
- 全員で協同することにより、一つの目標に向かっていく。
- 農業協同組合とは、農業者の相互扶助を目的とした組織である。
【協働の使い方】
- 官民協働によって、経済を発展させていく。
- メーカーと協働契約を結び、利益促進を図る。
補足すると、「共同」に対してもまれに「共同して声明を発表する」のように使うこともあります。この場合は、「共同して」⇒「共同で(名詞)」という意味だと考えれば問題ありません。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「共同」=複数人が同じ条件に立ち、物事を行うこと。(名詞のみ)
「協同」=複数の人や団体が、力を合わせて物事を行うこと。(名詞+動詞)
「協働」=(主に公的な機関が)同じ目的のために、共に働くこと。
「協同」は力を合わせるが、「共同」は力を合わせるとは限りません。「協働」に関しては「働く」という字があるように「共に働くこと」だと覚えておきましょう。