「受賞」と「授賞」は、どちらも優秀な成績を収めた人などに使われている言葉です。
「金メダルを受賞する」「授賞式に出席する」
さらに似たような言葉で、「受章」や「授章」が使われることもあります。これらの言葉は、どのように使い分ければいいのでしょうか?
今回は「じゅしょう」の違いについて詳しく解説しました。
受賞の意味
まずは、「受賞」の意味からです。
【受賞(じゅしょう)】
⇒賞をうけること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「受賞」とは「賞を受けること」を意味します。
- 芥川賞を受賞する。
- 新人王を受賞する。
「受賞」は「(誰かが)受け取る」という点がポイントです。言いかえれば、「賞をもらう側の人の言葉」ということになります。
「受賞」の語源を確認しておくと、「受」は「受信」「受粉」などがあるように「何かをもらう」という意味です。そして、「賞」は「賞金」「賞状」などがあるように「ほうび・金品」という意味です。
以上の事から、「何らかのほうびをもらうこと」を「受賞」と言うことになります。
授賞の意味
続いて、「授賞」の意味です。
【授賞(じゅしょう)】
⇒賞を授与すること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「授賞」とは「賞を授与すること」を意味します。
- 授賞式に参加する。
- ノーベル賞を授賞する。
「授賞」は、「賞を授ける」と書きます。「授(さず)ける」とは、「与える・渡す」などの意味です。
つまり、「(誰かが)何らかの賞を与えること」を「授賞」と言うわけです。言いかえれば、「賞をあげる側の人の立場になった言葉」が「授賞」ということになります。
受賞と授賞の違い
ここまでの内容を整理すると、
「受賞」=賞を受けること。「授賞」=賞を授与すること。
ということでした。
両者の違いは、2つの点から比較すると分かりやすいです。
1つ目は、「立場の違い」です。
「受賞」は、「賞をもらう立場の言葉」ということでした。したがって、「スポーツ」であれば「選手」、「芥川賞」であれば「作家」のように必ず賞をもらう側の人間が受賞するのです。
一方で、「授賞」の方は「賞をあげる立場の言葉」ということでした。よって、こちらは「主催者」や「大会運営長」など賞を与える側の人間が授賞をするのです。
2つ目は、「目線の違い」です。
「授賞」は、「賞を授ける」という「上からの見方・行為」だと言えます。一方で、「受賞」は「賞を受ける」という「下からの見方・行為」だと言えます。
要するに、じゅしょうする目線が、お互いに正反対な言葉同士なのが「受賞」と「授賞」なのです。
以上、まとめますと、
「受賞」=賞をもらう側の言葉。(下からの見方)
「授賞」=賞をあげる側の言葉。(上からの見方)
となります。
なお、「じゅしょうしき」と言う場合は「授賞式」が正しいです。なぜなら、「授賞式」というのは、賞を与える側の人間が開く式典だからです。
賞を受ける側の人が開催する式典など、聞いたことがないでしょう。そのため、「受賞式」などと書くのは誤りとなるわけです。
受章の意味
似たような言葉で、「受章」があります。
【受章(じゅしょう)】
⇒勲章などを受けること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「受章」とは「勲章などを受けること」を意味します。また、「勲章」だけでなく「褒章を受けること」を表す場合もあります。
「勲章(くんしょう)」とは「文化勲章」「菊花」など、国が個人の功績に対して与えるものです。そして、「褒章(ほうしょう)」とは「紅綬(こうじゅ)」「藍綬(らんじゅ)」など、国が社会や文化に貢献した個人に対して与えるものです。
つまり、これらの「勲章」や「褒章」に使う言葉が「受章」ということになります。
「受章」の「章」は、「文章」の「章」ではなく、「勲章」や「褒章」の「章」から来ていると考えれば分かりやすいでしょう。
なお、「授章」に関しても「受章・授賞」の使い分けとまったく同じになると考えて問題ありません。
つまり、「勲章などを受けること」が「受賞」、逆に「勲章などを授けること」が「授章」ということです。
念のため整理しておきますと、「じゅしょう」という言葉は、「受賞」「授賞」「受章」「授章」の4つを使い分ける必要があることになります。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。
【受賞の使い方】
- 彼はノーベル賞を受賞した世界的な学者である。
- 日本シリーズで活躍したため、MVPを受賞した。
- アカデミー賞を受賞した作品を鑑賞してください。
- 結成5年目にして、日本レコード大賞を受賞した。
- この度、特別な賞を受賞することになり大変嬉しいです。
【授賞の使い方】
- 閉会式と同時に、授賞式も行われるようだ。
- 大会本部長が、授賞の役目を担う予定です。
- 授賞の会場には、メンバー全員がいた。
- 今年の年末に、大会の授賞式を開催します。
- 授賞式は、午後の2時から始まる予定です。
【受章・授章の使い方】
- 文化勲章を受章するなんて、彼はすごい人だ。
- 旭日(きょくじつ)の授章式に参加する。
なお、2つを組み合わせた「じゅじゅ」という言葉もあります。この場合は、「受授」ではなく、「授受」と書くのが一般的です。
なぜかと言いますと、「授受」する場合はモノを「授ける」のが先で「受け取る」のが後だからです。
同じような熟語としては、「売買」「貸借」「教授」などがあります。いずれの熟語も前の漢字が先にあって初めて成り立つ言葉であることが分かるでしょう。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「受賞」=賞を受けること。(下からの見方)
「授賞」=賞を与えること。(上からの見方)
「受章」=勲章・褒章などを受けること。「授章」=勲章・褒章などを与えること。
「受賞式・受章式」⇒「×」「授賞式・授章式」⇒「〇」
「じゅしょう」は漢字によって意味が複数に分かれます。どれもよく使われる言葉なので、違いを整理しておきましょう。