「表記」と「標記」は、どちらもよく使われている言葉です。
「漢字で表記する。」「標記の件、承知しました。」
特に後者の方はビジネスメールにおいてよく見られる書き方です。ただ、この2つの使い分けに迷うという人も多いと思われます。
そこで今回は、「ひょうき」の違いについて詳しく解説しました。
表記の意味
まずは、「表記」の意味からです。
【表記(ひょうき)】
①おもてに書きしるすこと。また、その書かれたもの。おもて書き。
②文字や記号を用いて書き表すこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「表記」とは「文字や記号を使って書き表すこと」を意味します。例えば、以下のように使います。
- ひらがなで表記する。
- カタカナで表記する。
- 四角形を表記する。
わかりやすく言うと、「文字や記号を使って書くこと」という意味です。
「表記」は、一般的に②の意味として使うことがほとんどです。ただ、場合によっては①の「おもてに書きしるすこと。表に書かれたもの。」という意味で使うこともあります。
この場合の使い方としては、「表記の住所に返送してください。」などのように「表側」を表す意味として使われます。こちらの意味で使うことは少ないですが、覚えておいて損はありません。
標記の意味
続いて、「標記」の意味です。
【標記(ひょうき)】
①目印をつけること。また、その文字や符号。
②標題として書きしるすこと。また、その事柄。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「標記」とは、「タイトルや目印などを書くこと」または「書かれたタイトルや目印のこと」を意味します。
辞書の説明の「標題」とは「文書や書面のタイトルのこと」だと考えて下さい。例えば、以下のような社内メールがあったとしましょう。
件名:「社員旅行のお知らせについて」
標記の件について、日程をお知らせ致します。
件名:「4月1日に行われる全体会議について」
標記の件ですが、場所は本社2階の会議室にて行う予定です。
このような文章中の「件名」のことを、「標題」や「標記」と呼んでいるわけです。
ビジネスメールでは、必ず「件名」が入ります。そして、メールの本文はその件名に関係した内容で始まることがほとんどです。そのため、「標記の・・・」などのようにタイトルに言及する文言を最初に書くわけです。
なお、ビジネスメールでは、必ずしも「標記の・・・」とする必要はありません。文章を省略することが目的なので、「このことについて・・・」などとする場合もあります。
表記と標記の違い
ここまでの内容を整理すると、
「表記」=文字や記号を使って書き表すこと。
「標記」=タイトルや目印などを書くこと。書かれたタイトルや目印。
ということでした。
両者の違いは、2つの点から比較すると分かりやすいでしょう。
1つ目は、「タイトルという意味を含むかどうか」です。
「表記」は、「タイトル」という意味を含んでいません。一方で、「標記」は「タイトル」という意味を含んでいます。
したがって、メールのタイトルを「表記の件について~」などと記述するのは誤りとなります。正しくは、「標記の件について~」です。
そして2つ目は、「文字の書き表し方に対して使うかどうか」です。
「表記」は、漢字やカタカナなどのように主に文字の書き方について使われます。一方で、「標記」の方は文字というよりは主にタイトルに対して使われます。「標記」は先ほども説明したように、ビジネスメールなどの件名(タイトル)に対して使われるのが基本となります。
まとめると、
「表記」=主に文字の書き方に対して使われる。
「標記」=主にタイトルに対して使われる。
となります。
使い方・例文
最後に、「表記」と「標記」の使い方を実際の例文で紹介しておきます。
【表記の使い方】
- この絵本は全てひらがなで表記されている。
- 英語で表記されたサイトを開設することにした。
- 該当の箇所は、漢字で表記するようにしてください。
- 指定された紙には、三角形を表記しました。
- 当社への返信は表記の住所へとお願い致します。
【標記の使い方】
- 標記の件、承知しました。
- 標記の件、どうぞよろしくお願いします。
- 標記の件ですが、日時が変更となったのでお伝えします。
- 標記の件ですが、急遽変更となったことをお詫び致します。
- 四つ葉のマークが標記された看板を右に曲がってください。
「表記」は文字や記号の書き方を伝える時に使います。対して、「標記」は主にタイトルに対して使われるので、ビジネスメールで使われることがほとんどです。
「標記」の方は一般的にも使うことができますが、ビジネスシーンで使われることがほとんどだと考えていいでしょう。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「表記」=文字や記号を使って書き表すこと。おもてに書きしるすこと。表に書かれたもの。
「標記」=タイトルや目印などを書くこと。書かれたタイトルや目印。
「違い」⇒「表記」はタイトルに対しては使わない。「標記」は文字の書き表し方に対しては使わない。
どちらも「ひょうき」と読む言葉ですが、意味は明確に異なります。これを機に、正しい使い分けを覚えて頂ければと思います。