相手や周りの状況を考えることを「考慮」あるいは「配慮」と言います。どちらも日常生活だけでなく、ビジネスにおいても用いられている言葉です。
ただ、この二つをどのように使い分ければいいのかという問題があります。そこで本記事では、「考慮」と「配慮」の違いを詳しく解説しました。
考慮の意味
まずは、「考慮」の意味からです。
【考慮(こうりょ)】
⇒判断・行動の前に、いろいろな要素を考え合わせること。思いめぐらすこと。考え。
出典:三省堂 大辞林
「考慮」とは「判断や行動の前に、色々な要素を含めて考え合わせること」を意味します。
例えば、企業の面接官などは様々な要素を考えることにより就活生の採用をしています。
具体的には、「どんな性格か?」「得意なことは何か?」「どこの大学出身か?」「資格は何を持っているか?」といったことです。
そして、実際に様々な要素を含めてしっかりと考えた上で合否の判断を出しています。
このように、単によく考えるだけでなく、あらゆる要素を重ね合わせて複合的に考えることを「考慮」と言うわけです。
なお、「考慮」の「類義語」としては以下のような言葉が挙げられます。
「勘案・勘考・検討・論考・思考」
配慮の意味
続いて、「配慮」の意味です。
【配慮(はいりょ)】
⇒心をくばること。他人や他の事のために気をつかうこと。
出典:三省堂 大辞林
「配慮」とは「心をくばること・他人や他のことのために気をつかうこと」を意味します。一言で、「気配り・心配り」などと言い換えてもよいでしょう。
例えば、力が弱い女性のために重い荷物を持ってあげることなどは「配慮」です。また、体調が悪い友人に対して家の手伝いをしてあげることなども「配慮」に含まれます。
「配慮」は、「環境に配慮したゴミ袋」などのように人間以外の対象にも使うことがあります。この場合はつまり、「環境に気をつかったゴミ袋」という意味です。
いずれにせよ、特定の対象に対して気をつかうことを「配慮」と言うわけです。
「配慮」の「類義語」としては以下のような言葉が挙げられます。
「気遣い・心遣い・気配り・思いやり・心入れ」
考慮と配慮の違い
ここまでの内容を整理すると、
「考慮」=判断や行動の前に、色々な要素を含めてよく考えること。
「配慮」=心をくばること・気をつかうこと。
ということでした。
両者の違いを二つの点から比較したいと思います。
一つ目は、「主体の違い」です。
「考慮」は、自分主体の言葉だと言えます。すなわち、目の前の問題解決に向けて自分の頭の中で考えるようなイメージです。
この時に、「相手の状況や状態に気を配る」という意味までは含まれません。あくまで、自分が正しい判断を下すための入念な思考です。
一方で、「配慮」は、相手主体の言葉だと言えます。つまり、相手にとって都合が悪くならないように色々と気をつかうということです。「配慮」の方は、自分のための行動ではなく、すべては相手のための行動なのです。
そして二つ目は、「思考と行動のどちらを表すか」ということです。
「考慮」は、考えることに焦点を当てた言葉です。一方で、「配慮」は、気をつかうことに焦点を当てた言葉です。つまり、そもそもの意味自体が異なるということです。
「考慮」は、「思考」というその人の脳内作業を意味します。対して、「配慮」の方は「気を配る・心を配る」などのその人の具体的な行動を意味するのです。
ちなみに、「考慮」とよく似た言葉で「思慮(しりょ)」があります。「思慮」とは「注意深く心を働かせて考えること」です。
どちらも似たような意味を持っていますが、「思慮」の方は「思慮が浅い」「思慮に欠ける」などのように名詞的な使い方をします。逆に、「思慮する」「思慮した」などのような動詞的な使い方はしません。
対して、「考慮」の方は「考慮の余地」「考慮する」などのように名詞と動詞の両方で使うことができます。この点が、「思慮」と「考慮」の大きな違いだと言えます。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。
【考慮の使い方】
- 様々な条件を考慮した結果、彼が一番適任だと判断した。
- あなたの意見は、考慮の余地がないほどひどいものだ。
- 殺虫剤は、人体や環境への影響も考慮する必要がある。
- 相手の事情も考慮して、今後の日程を決めていきます。
- 今回の企画についてはもう少し考慮してから進めます。
【配慮の使い方】
- 相手の立場を配慮して、慎重なコメントをする。
- 被害者の感情に配慮して、質問を控えることにした。
- この高い段差は、高齢者への配慮が足りないと言える。
- 環境問題に配慮した結果、ハイブリットカーが生まれた。
- あなたはもう少し親に対して配慮した方がいいと思う。
「考慮」の方は、原則として自分主体の言葉として使います。ただし、「考慮」の前に「相手の~」「他人の~」などが来る場合は、当然「相手のことを考えて」という意味になります。
「考慮」の方は、場合によっては「相手のことをよく考える」という「配慮」に近い意味で使うこともあるので注意して下さい。混同しないためにも、前後の文脈をしっかり判断する必要があると言えます。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「考慮」=判断や行動の前に、色々な要素を含めてよく考えること。
「配慮」=心をくばること・気をつかうこと。
「違い」⇒「考慮」は「自分で考える」という自分主体の言葉。「配慮」は「相手に気をつかう」という相手主体の言葉。
「考慮」と「配慮」は似た場面で登場しますが、意味自体は異なります。ぜひ正しい意味を理解した上で、使って頂ければと思います。