「出藍の誉れ」という慣用句をご存知ですか?
古くからある故事成語が元になっていますが、最近ではビジネスにおいても用いられています。実はこの言葉にはなかなか興味深い由来があったのです。
今回は、この「出藍の誉れ」の意味や読み方、語源、使い方などを含め詳しく解説しました。
出藍の誉れの読み方・意味
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【出藍の誉れ(しゅつらんのほまれ)】
⇒弟子がその師よりもすぐれていること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「出藍の誉れ」は、「しゅつらんのほまれ」と読みます。意味は「弟子がその師匠よりもすぐれていること」を表したものです。
例えば、小説の書き方を教えている先生がいたとして、実際に教えている生徒が芥川賞を受賞したとします。その先生は文章の書き方は上手いものの、芥川賞は受賞していませんでした。
このような場合、教わっている弟子が教えている師匠の実力を超えています。よって、「出藍の誉れ」と言えるわけです。
弟子が師匠の力を超えるとなると、何だか気まずそうな印象にもなりがちです。しかしながら、「出藍の誉れ」は多くの場合ポジティブな場面で使われます。
具体的には「師匠が弟子の功績を誇りに思う」「周りの人間が弟子を称賛する」「とんでもないことが起きた」といった様子を表す場面です。
したがって、この言葉は基本的に良い意味として使われると考えて問題ありません。
出藍の誉れの由来・語源
「出藍の誉れ」は「荀子(じゅんし)」の言葉が元となっています。「荀子」とは中国戦国時代の思想家および儒学者のことです。
彼は自らの著書である『勧学』の中で次のような言葉を述べました。
「学はもって已(や)むべからず。青は藍(あい)より取りて、藍よりも青し。」
これを現代語訳しますと、次のような意味になります。
学問は終わりのないものなので、おこたってはいけない。青色は「藍」からとると「藍」よりも青くなる。
「藍(あい)」とは「青色の染料を持つ草」のことです。この草から採取した青色はとても鮮やかで、布などにつけると原料の藍よりもずっと青くて美しくなりました。
この事から、当時の中国では「藍」=「元になった物よりも、それからできた物の方が優れている」という意味の言葉として広まるようになりました。
そしてこの「藍」を使った言葉が「出藍(藍から出た染料)の誉れ(光栄・名誉)」なのです。
現在ではこの意味から派生し、「弟子が師匠よりもすぐれている」という意味で使うのが一般的です。
「荀子」は元々は学問に励むことの大切さを説いていました。そして、学問と向き合って努力を積み重ねることにより、持って生まれた資質や才能を超えることができると考えていたのです。
出藍の誉れの類義語
続いて、「出藍の誉れ」の「類義語」を紹介します。
以上が主な類義語となります。いずれの言葉も「元になるものよりも後から出て来るものの方がすぐれている」という点が共通しています。
出藍の誉れの対義語
逆に、「対義語」としては次のような言葉が挙げられます。
対義語の場合は、「弟子が師匠を超えないこと」を表した言葉となります。そこから派生して、「子は親を超えることはない」といった意味を持つ言葉も反対語に含まれます。
出藍の誉れの英語訳
「出藍の誉れ」は、英語だと次のように言います。
「surpass one’s master(師匠の力を超える)」
「surpass one’s teacher(先生の力を超える)」
「surpass」は「~を超える・上回る」などの意味を表す動詞です。これに「master(師匠)」や「teacher(先生)」を意味する名詞をつけることにより、「出藍の誉れ」を表現します。
例文だと、次のような形です。
He surpassed his master in Judo.(彼は柔道において師匠の力を超えた。)
She finally surpassed her teacher in English.(彼女はついに英語において先生の力を超えた。)
その他には、次のような言い方をすることも可能です。
「The scholar may be better than the master.」
直訳すると、「弟子が師匠に勝つこともある」となります。「scholar」は「学者」以外に「生徒や学生」という意味もあるので、このような訳となります。
出藍の誉れの使い方・例文
最後に、「出藍の誉れ」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 選手がコーチの打撃成績を超えるなんて出連の誉れとはこのことだね。
- 教えてからまだ一ヶ月なのにすぐに師匠を超えてしまうなんて、出連の誉れだ。
- ついに空手の全国大会で優勝することができた。まさに出連の誉れだろう。
- 入社後は出連の誉れを意識して、会社で出世することを目指すつもりです。
- 私の門下生からとても優秀な学者が誕生した。出連の誉れと言えるだろう。
- 生徒が講師の成績を超えるようになるなんて驚きだね。出藍の誉れだよ。
- 師匠のベストスコアを超えるなんて、あいつはまさに出藍の誉れだろう。
「出藍の誉れ」は、上記のように武道や学問・スポーツなど幅広い分野で使われる慣用句です。
基本的には、師匠と弟子という上下の関係があれば場面を問わず使うことができます。そのため、場合によってはビジネスシーンにおいて使われることもあります。
ビジネスにおいては、「弟子が師匠を超える」という意味ではなく、「部下が上司を超える」といった出世を意識した使い方が一般的です。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「出藍の誉れ」=弟子がその師匠よりもすぐれていること。
「語源・由来」=「藍」から青色を取り出すと、元々の「藍」よりもさらに青くなることから。(「荀子」の言葉が元)
「類義語」=「青藍氷水・青は藍より出でて藍よりも青し・トンビがタカを生む」
「対義語」=「不肖の弟子・蛙の子は蛙」
「英語訳」=「surpass one’s master」「surpass one’s teacher」
昔の故事成語を調べると深い由来があることが多いです。この記事によって「出藍の誉れ」の正しい意味を理解して頂ければと思います。