幼い子供や小学生が育つことを「発育」もしくは「発達」と言ったりします。
さらに似たような言葉で「成長」が使われることもあります。これらの言葉はどう使い分ければいいのでしょうか?
本記事では、「発育」と「発達」の違い、さらに「成長」についても解説しました。
発育の意味
まずは、「発育」の意味からです。
【発育(はついく)】
⇒育って大きくなること。成育。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「発育」とは「育って大きくなること」を意味します。一言で「成育」と言い換えることもできます。
主な使い方としては、以下の通りです。
- 幼児が発育する。
- 赤ちゃんが発育する。
- 発育段階の子供。
「発育」は、人間や動植物などの生物に対して使うのが特徴です。その中でも特に、赤ちゃんや幼児など幼い子供に対して使われることが多いです。
また、植物などに使う場合は、「芽が発育する」のように使います。この場合も、「芽」のように若い植物に対して使うのが特徴だと言えます。
発達の意味
続いて、「発達」の意味です。
【発達(はったつ)】
①からだ・精神などが成長して、より完全な形態や機能をもつようになること。
②そのものの機能がより高度に発揮されるようになること。
③そのものの規模がしだいに大きくなること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「発達」には三つ意味があります。
一つ目は「体や精神が成長して、完全な形態・機能を持つようになること」という意味です。
- 肉体が発達する。
- 精神が発達する。
「肉体の発達」とは、筋肉や骨がしっかりするなど、運動機能が成長することを意味します。また、「精神の発達」とは「頭がよくなったりやさしくなったりする」ということです。
そして、二つ目は「機能が高度に発揮されるようになること」という意味です。
- 技術が発達する。
- 文明が発達する。
- AIが発達する。
つまり、何らかの機能を持つものが今まで以上に成長するということです。
最後の三つ目は、「規模が次第に大きくなること」という意味です。
- 低気圧が発達する。
- 台風が発達する。
- 積乱雲が発達する。
この意味の場合は、気候や天候などが激しくなるような時に使います。
発育と発達の違い
ここまでの内容を整理すると、
「発育」=生物が育って大きくなること。
「発達」=体や精神が成長すること。機能が発展すること。規模が大きくなること。
ということでした。
両者の違いは、二つあります。一つ目は、「使う対象の大きさ」です。
「発育」は、生物にしか使うことができません。一方で、「発達」は生物はもちろんのこと、技術や台風など生物以外に対しても使うことができます。
したがって、意味の広さとしては「発達」>「発育」と定義することも可能となります。
二つ目は、「成長の仕方」です。
「発育」は、身長や体重などが物理的に大きくなることを意味します。一方で、「発達」は筋肉や骨などの運動機能もしくは頭の良さなどの頭脳が向上することを意味します。
つまり、「発育」は「大きさが成長すること」を表すのに対して、「発達」は「機能が成長すること」を表すということです。
以上、まとめますと、
「発育」=生物の大きさが成長すること。(生物のみ使える)
「発達」=肉体や頭の機能が成長すること。(生物以外にも使える)
となります。
成長の意味
似たような言葉で、「成長」があります。
【成長(せいちょう)】
①人や動植物が育って大きくなること。おとなになること。
②物事の規模が大きくなること。拡大。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「成長」には「人や動植物が育って大きくなること」「物事の規模が大きくなる」などの意味があります。
これだけだと似たような意味にもみえますが、「成長」は「発育」や「発達」とは明確に異なる言葉です。
まず、「発育」との違いですが、「発育」は人間で言えば「赤ちゃん」、植物で言えば「新芽」など幼い生き物に対して使うということでした。
一方で、「成長」は必ずしも幼い生き物に使うとは限りません。場合によっては、中学生に使うかもしれないし、普通の木に使うかもしれません。
すなわち、「成長」というのは「発育」の意味も含んだ大きな言葉ということです。
次に、「発達」との違いですが、これはすでに説明した「発育」と「発達」の違いとほぼ同じです。要するに、大きくなるのが「成長」、機能が向上するのが「発達」ということです。
なお、「精神」に対しては「発達」と「成長」のどちらも使える言葉となります。
その他、「発育・発達・成長」の三つと混同しやすい言葉として「育成」があります。「育成」とは「育て上げること」を意味します。
主に「後継者を育成する」のように使いますが、最大の特徴は「自分以外の誰かを育てる」という点です。「発育」や「発達」は自身の力で大きくなるのに対し、「育成」は自分以外の人を大きくさせるような時に使います。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。
【発育の使い方】
- 幼少期の子供は、目に見えるスピードで発育する。
- 赤ちゃんの発育に関しては、家の環境が重要である。
- 発育段階の赤ん坊には、読み聞かせをするのがよい。
- 近くの公園に行くと、発育した若葉が生い茂っていた。
- 良質な肥料をしっかりと与え、苗木の発育を早めた。
【発達の使い方】
- 腕立て伏せや腹筋をして、肉体を発達させる。
- 学習機能を発達させるために、音読を始めた。
- コンピューターを使った技術は、日々発達している。
- 文明の発達には、多くの労力が費やされてきた。
- 急速に発達した低気圧が、関東地方に近づいてきた。
【成長の使い方】
- 中学生から高校生は一番体が成長する時期と言われている。
- 弊社は、売上高を伸ばして年々成長し続けています。
- 息子はこの一年間で精神的にも成長したように見える。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「発育」=生物の大きさが成長すること。
「発達」=肉体や頭の機能などが成長すること。
「成長」=人や動植物・機能などが大きくなること。
「違い」⇒「発育」は主に幼児などの幼い生物に使う。「発達」は生物以外の機能などにも使う。「成長」は「発育」の意味も含んだ広い意味の言葉で幼さや若さは関係ない。
見分けるポイントは「意味の大きさ」と「成長の仕方」の二点だと覚えておきましょう。