「ふよう」という言葉は、次のように二つの漢字が使われています。「不要不急の外出」「不用品回収」。
さらに似たような言葉で「無用」が使われることもあります。これらの言葉は、どのように使い分ければいいのでしょうか?
今回は、「不要」と「不用」の違いについて詳しく解説しました。
不要の意味
まずは、「不要」の意味からです。
【不要(ふよう)】
⇒必要でないこと。また、そのさま。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「不要」とは、簡単に言うと「必要ないこと」という意味です。例えば、以下のように使います。
- 不要の買い物をする。
- 保証人が不要の物件。
- 不要不急の仕事。
※「不要不急」とは「重要ではなく、急ぐ必要もない」という意味の四字熟語です。
このように、物事に対して必要がない様子を伝える時に「不要」を使うことになります。
別の言い方をするなら、「不要」=「いらないもの」「なくても困らないもの」などと覚えても構いません。
なお、「不要」の対義語は「必要」と言います。「要」は「要(い)る」とも読む漢字なので、「要らない」のが「不要」、「必ず要る」のが「必要」と考えると分かりやすいかと思います。
不用の意味
続いて、「不用」の意味です。
【不用(ふよう)】
①使わないこと。必要がないこと。また、そのさま。
②役に立たないこと。また、そのさま。無用。
③怠惰であること。また、そのさま。
④性質や行いが悪くて、世間で用いられないこと。また、そのさま。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「不用」には全部で4つの意味がありますが、ほとんどの場合①の意味として使われます。
つまり、「使わないこと」という意味です。この場合は、以下のように使います。
- 不用品を回収する。
- 不用な道具を捨てる。
- 不用品の買い取り業者。
「不用」は、基本的にその人が使用していたものが対象となります。具体的には、以前使っていた品物や道具、家具・家電などです。
その他、辞書の説明だと「不用」=「必要がないこと」という記述もありますが、こちらの意味はあくまで補足的なものだと考えてください。
なぜなら、「不用」は「用いない」と書くので、「使わないこと」が本来の意味だからです。
また、③の「怠惰であること」や④の「行いが悪くて、世間で用いられないこと」などの意味も覚える必要はありません。かつては「不用者」などの使い方もしましたが、現在ではほぼ使わない意味だと言えます。
なお、「不用」の対義語は「入用(にゅうよう)」と言います。「必用」ではないことに注意しましょう。
不要と不用の違い
ここまでの内容を整理すると、
「不要」=必要ないこと。「不用」=使わないこと。(必要ないこと)
ということでした。
両者の違いは、二つの点から比較すると分かりやすいです。
一つ目は、「使う対象」です。
「不要」は「いらないもの」を対象とします。そのため、「買い物」や「保証人」など「いるかいらないかという対象」に使うのです。
一方で、「不用」は「使わないもの」を対象とします。したがって、こちらは「品物」や「道具」など「使うか使わないかという対象」に使うのです。
二つ目は、「意味の範囲」です。
本来の意味は、大きな概念として「不用」があります。そして、「不用」の中に「不要」があるのです。
これを図で表すと、以下のようになります。
つまり、大きな意味を表す「不用」から「いらない」という意味を抜き出したのが「不要」ということです。
実際に両者の意味は、重なっている部分が多くあります。例えば、古くて壊れた道具などは「使わないもの(不用)」ですが、同時に「いらないもの(不要)」とも言えるでしょう。
一方で、重なっていない部分もあります。例えば、「いらない買い物(不要)」とは言いますが、「使わない買い物(不用)」とは言いません。
「買い物を使う・使わない」と言うのは文法的にもおかしな話です。このように比較すると、両者の意味に微妙な違いがあることが分かるかと思います。
まとめると、
「不要」=いらないものに用いる。
「不用」=使わないもの(いらないもの)に用いる。
となります。
基本的には、上記のような理解で問題ありません。あえて付け加えるなら、「不要」は新しくできた「造語」ということを覚えておくとよいでしょう。
「造語」とは、すでに存在する言葉を組み合わせて作った新しい言葉のことです。要するに、元々あった「不用」という言葉を元に、「不要」が作られたということです。
皮肉にも、その後一般的になったのは、「不用」ではなく「不要」の方でした。なぜなら、「必要」というよく使われる言葉の対義語として「不要」が作られたからです。
そのため、現在では意味が重なる「いらない」という部分は、「不要」を使うのが一般的となっています。
無用の意味とは?
似たような言葉で、「無用(むよう)」があります。
「無用」とは、「有用」の「反対語」で、「役に立たないこと」「いらないこと」「用事のないこと」「禁止」などを意味する言葉です。
「不要」と共通している意味もありますが、一番の違いは「用事のないこと」「禁止」という意味も含んでいる点です。「不要」はこれらの意味で使うことができません。
また、「無用」の使い方としては、「心配ご無用」「無用の長物」「問答無用」など限定的な使い方をするのも特徴と言えます。いずれも敬語の一部だったり、慣用句や四字熟語の一部だったりするものです。
「無用」は、一般的な文章ではそれほど使われる言葉ではありません。もしも同じ意味で共通しているような場合は、「無用」よりも「不要」を使う方が無難と言えるでしょう。
不要と不用の英語訳
「ふよう」は、英語だとそれぞれ次のように言います。
【不要の英語訳】
- 「unnecessary(不必要な)」
- 「unneeded(求められていない」
- 「needless(必要のない)」
【不用の英語訳】
- 「disuse(使われない)」
- 「useless(役に立たない)」
英語では、両者はそこまで厳密に使い分けがされているわけではありません。場合によっては、「必要のない」という意味でも「不用」と訳される場合があります。
ただ、全体的な傾向としては、「unnecessary」を「不要」、「useless」を「不用」と訳すことが多いです。これはすでに説明した通り、「必要かどうか」「使うかどうか」で分けているからだと言えます。
また、後ろに「item(品)」や「article(品物)」をつけて「unnecessary items(不用品)」「disused articles(不用品」などとして使うこともあります。この場合は「不必要な品」「使わなくなった品」と考えるとよいでしょう。
その他、「メールの返信が不要であること」を伝える時などは、「No Reply Needed」「No Response Needed」などと言います。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。
【不要の使い方】
- バイクを運転しない人にとっては、二輪の免許は不要だ。
- その母親は、「受験生にとってテレビは不要だ」と主張した。
- SNSを見ることをやめて、不要な情報をシャットアウトする。
- お試し期間だったので、料金が不要のコースを選択した。
- 実名登録が不要な会員なため、気軽に参加することができた。
【不用の使い方】
- 使わなくなった服を、不用品として廃品回収に出した。
- 引っ越しを機に、不用な家具を処分することにした。
- 不用になった建物を破壊し、まっさらな土地に戻す。
- 倉庫をあけると、不用になった机やイスが転がっていた。
- 不用品回収業者に、粗大ごみを収集してもらう。
基本的には、「いらないか使わないか」で判断するということでした。上記の例文だと、「不要」の場合は「免許・テレビ・情報・料金・会員」などいらないものに用います。
一方で、「不用」の場合は「品物・家具・建物・机・イス」など使わないものに用います。状況に応じて、うまく使い分けるようにしてください。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「不要」=必要ないこと。(いらないものを対象とする。)
「不用」=使わないこと。(使わないものを対象とする。)
「違い」⇒「不要」は必要ないものに用い、「不用」は使わないものに用いる。「不要」は「不用」から意味を抜き出した言葉。
ポイントは漢字の語源から比較することです。要らない場合は「不要」、用いない場合は「不用」と覚えておきましょう。