生き物として生きる 解説 200字要約 意味調べ 第一学習社

『生き物として生きる』は、「現代の国語」の教科書で学ぶ評論です。ただ、本文を読むと筆者の主張や考えなどが分かりにくい箇所もあります。

そこで今回は、『生き物として生きる』のあらすじや要約、テスト問題などを含め簡単に解説しました。

『生き物として生きる』のあらすじ

 

本文は、大きく分けて5つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとの要旨を簡単に説明していきます。

要旨

①「人間は生きものであり、自然の中にある」。これは誰もがわかっていることであり、新しい指摘ではない。だが、私たちの日常生活は、生きものであることを実感しにくいものとなっている。日常のあり方を変革し、自然を感じられる社会を作ればよいが、近代文明社会を変革するのは難しい。

②そこで、まずは一人一人が「自分は生きものである」という感覚を持つことから始め、その視点から近代文明を転換する切り口を見つけ、少しずつ生き方と社会を変えていくことを提案する。

③私自身、生物学を学んだがゆえに、とくに意識せずに「生きものである」という感覚を身につけることはできる。例えば、冷蔵庫に入れておいた食べ物が賞味期限を越えてしまったときでも、まだ食べられるかどうか、自分の鼻や舌で確認するようなことだ。

④食べ物の安全性を鼻や舌などの「感覚」で判断せず、数字で表された期限だけで判断するような「科学的」と称したやり方には、「科学への盲信」がある。科学を通じて危険性を知り、それに対処することは重要だが、科学による「保証」の限界を知ることが大事だ。何も考えずに数字を鵜呑みにするのではなく、自らの「生きもの」としての力を生かすことが必要である。

⑤科学を知ったうえで、機械だけに頼らず、生きものとしての感覚をも活用するのが、「人間は生きものである」ことを基本に置く生き方である。これは「自立的な生き方」をしようという提案でもある。常に自分で考え、自身の行動に責任を持ち、自律的な暮らしをすることが、「生きものとして生きる」ということの第一歩である。

『生き物として生きる』の要約&本文解説

 
200字要約現代社会における私たちの日常生活は、生きものであることを実感しにくいものとなっている。そこで、一人一人が「自分は生きものである」という感覚を持つことで、近代文明を転換する切り口を見つけ、生き方と社会を変えていくことを提案する。科学を知ったうえで、生きものとしての感覚も活用するのが「人間は生きものである」ことを基本に置く生き方である。他人任せではない「自立的な生き方」をすることが必要なのである。(198文字)

本文は、①問題提起②主題③主張を支えるための例示④反論を想定しての考察⑤まとめの5つの段落から構成されています。

まず第一段落で筆者は、現代社会は生きものであることを実感できない社会であることを問題として提起しています。次の第二段落では、「自分は生きものである」という感覚を持つことが重要である、という主張を述べています。

第三段落では、その主張を支えるための例を挙げています。具体的には、食べ物の賞味期限のような科学的なものに人は頼り過ぎているというものです。第四段落では、その科学の「保証」の限界について述べています。

最後の第五段落では、そうした他人任せの生き方ではなく、「自立的な生き方」をすることを読者に提案しています。全体を通して筆者が主張したいことは、第二段落と第五段落に集約されていると言えます。

つまり、現代社会では一人一人が「自分は生きものである」という基本的な感覚を持ち、自律的な生き方をすることが必要であるということです。

『生き物として生きる』の意味調べノート

 

【基盤(きばん)】⇒物事を成り立たせる基礎となるもの。基本。

【終日(しゅうじつ)】⇒一日中。朝から晩まで。

【変革(へんかく)】⇒物事を根本から変えて新しいものにすること。

【変換(へんかん)】⇒入れかえること。

【視点(してん)】⇒物事を見たり考えたりするときの立場・考え方。

【切り口(きりくち)】⇒物事を検討したり分析したりするときの、着眼や発想の仕方。

【~がゆえに】⇒それが理由で。それゆえに。

【賞味期限(しょうみきげん)】⇒比較的長持ちする加工食品などに表示される、その品質が十分に保ておいしく食べられる期限のこと。

【越える(こえる)】⇒場所・時間・点などを通り過ぎる。

【科学的(かがくてき)】⇒考え方や行動のしかたが、論理的・実証的で系統立っているさま。

【衛生的(えいせいてき)】⇒清潔なさま。

【称する(しょうする)】⇒名づけて言う。

【盲信(もうしん)】⇒わけもわからず、ただひたすらに信じること。

【対処(たいしょ)】⇒ある事柄や状況に合わせて、適切な処置をすること。

【検出(けんしゅつ)】⇒物に含まれる成分などを調べて、見つけ出すこと。

【鵜呑み(うのみ)】⇒物事を十分に考えず、そのまま受け入れること。

【活用(かつよう)】⇒物や人の機能・能力を十分に生かして用いること。効果的に利用すること。

【他人任せ(たにんまかせ)】⇒他人に任せきりにすること。ここでは、「科学的」と称して自分で判断することを怠ることを意味する。

【自律的(じりつてき)】⇒そのもの自体だけで調整を行ったり問題を解決したりするさま。

【一事が万事(いちじがばんじ)】⇒わずか一つの物事から、他のすべてのことを推し量ることができる。一つの小さな事柄の調子が他のすべての場合に現れる。

『生き物として生きる』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①欠点をシテキする。

②話題をテンカンする。

エイセイ的な環境。

④食品がフハイする。

⑤品質をホショウする。

⑥現場のフンイキがよい

⑦知識をカツヨウする。

解答①指摘 ②転換 ③衛生 ④腐敗 ⑤保証 ⑥雰囲気 ⑦活用
問題2「それはあまり意味がありません。」とあるが、なぜあまり意味がないのか?
解答例エネルギーについては、脱原発や自然再生エネルギーへの転換が必要だと唱えるだけでなく、自然エネルギーを活用する「暮らし方」への志向がなければならないため。
問題3「科学への盲信で成り立っているように思います。」とあるが、「科学への盲信」とはどういうことか?
解答例数字で表された「科学的」なものを、ただひたすらに安全だと信じて疑わないこと。
問題4「これは自律的な生き方をしようという提案でもあります。」とあるが、「自律的な生き方」とはどのような生き方か?
解答例数字で表された「科学的」なものを、何も考えずに信じて従うような他人任せの生き方ではなく、生きものとしての感覚を活用し、常に自分で考え、自身の行動に責任を持つような生き方。
問題5

次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。

(ア)私たちの日常生活は、朝気持ちよく目覚め、朝日を浴び、新鮮な空気を体に取り込み、朝食をおいしくいただくような、生きものとしての感覚を持ちにくくなっている。

(イ)冷蔵庫から取り出した食品の賞味期限を見て、その期間内であれば安全だと思うような判断の仕方は、科学への盲信で成り立っているように思える。

(ウ)科学を通して危険性を知り、それに対処することは重要だが、科学による「保証」の限界を知ることは生きものとして大事なことである。

(エ)科学のことは知らずに、生きものとしての感覚を活用するのが、私の考えている「人間は生きものである」ことを基本に置く生き方である。

解答(エ)「科学のことは知らずに」が誤り。筆者は、科学を知ったうえで、機械だけに頼らず、生きものとしての感覚を活用するのが「人間は生きものである」ことを基本に置く生き方だと述べている。科学の限界を知った上で自律的な生き方をすることが大事だと筆者は述べている。

まとめ

 

以上、今回は『生き物として生きる』について解説しました。この評論は定期テストなどにおいても出題されます。漢字や言葉の意味なども含め、ぜひ何度も読み見直して頂ければと思います。