人間の運命と科学 テスト対策 解説 200字要約 語句 ノート プリント

『人間の運命と科学』は、高校現代文の教科書で学ぶ評論です。学校の定期テストの範囲にも含まれています。

ただ、本文を読むとその内容や筆者の主張などが分かりにくい箇所も多いです。そこで今回は、『人間の運命と科学』のあらすじや要約文、語句の意味などを簡単に解説しました。

『人間の運命と科学』のあらすじ

 

本文は、内容から2つの段落に分けることができます。ここでは、各段落のあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①科学がどれだけ発達しても、科学という営みを行うのもその結果を利用して社会を営むのも人間である。であれば、私たちは最後には「人間とは何か。」という問題を考えないわけにはいかない。多くの動物はなんらかの自意識を持っていると想像されるが、ほとんどの動物は、人間のように自分とはいったいなんだろうとか、人間とはいったいなんだろう、というような高度に抽象的な問題を考えているようにはみえない。もっと単純に、今自分が有利になるにはどのように行動すべきかという単純な判断しかしていないようにみえる。「私」を認識しなければいけない進化的な意味は、「他」の存在との相対的な意味で、自分の利益を守らなければ生き延びられない、という場合にだけ生じる。私たちがごくあたりまえに思っている「私」やコミュニケーションですら、人間という生物が進化の過程で獲得してきたものなのである。

②人間とは何か、人間と他の動物を分けるものは何か、といったことは分類の問題なので、完全な答えはないし、科学の問題でもない。個人的には、人間を人間たらしめているのは、生存に必要なことだけを追求するのではない、という点にあると考えている。人間に特有の「無駄な」行動の根拠は、知性である可能性が高く、知性こそが人間性だと言えるだろう。科学とは、知性に根拠を置くものであり、客観的な理論と検証により現実操作のツールとして大きな力を持つため、その力を使えば人間がすぐ先の利益を最大化することが可能である。しかし、世界はとても複雑なシステムであり、人間は複雑なものを複雑なままに理解したり、いくつもの力学系が絡むシステムの挙動を予測するのが苦手だ。したがって、そのような目先の利益を追求すると思わぬ結果を招かないとも限らない。科学は人間の欲望をかなえる力を持つが、その欲望を実現していくと、長期的存続の可能性を下げてしまう可能性がある。これは、科学が人間にしかけた罠であり、科学とどう付き合っていくのかは、私たちの人間性そのものが試されているのだと言える。

『人間の運命と科学』の要約&本文解説

 

200字要約人間とは何か、という高度に抽象的な問題を考える自意識を持つのは人間だけであり、それは人間という生物が進化の過程で獲得してきたものである。人間に特有の無駄な行動の根拠こそが知性であり、その知性に根拠を置いた科学は、人間の欲望をかなえる力を持つ。しかし、その欲望を実現していくと、長期的存続の可能性を下げてしまう可能性がある。科学とどう付き合っていくかは、私たちの人間性そのものが試されているのである。(199文字)

筆者はまず、第一段落で「人間とは何か。」という問題以前に、そもそもそういう問題自体を考えるのは人間だけであるということを進化の過程から述べています。そこで問題になっているのは、「自意識」の存り方です。

この事を説明するために、「自意識」というのは「他」の存在があって初めて生まれるものであるということを『ソラリスの陽のもとに』を例として挙げています。つまり、人間というのは単独で生きることはできず、あくまで「他」の存在に頼って生きているということです。

そして、第二段落では「人間とは何か」という問題について筆者の考えが述べられています。それは、「知性」こそが人間性なのである、ということです。さらに、その「知性」をもとに「科学」が発達したとも述べています。

最後に、科学は人間の欲望をかなえてくれるけども、目先の利益にばかり夢中になっていると、長期的には人間の存続の可能性を下げてしまう可能性があるため、科学とどう付き合っていくかが人間の運命を決めるのだと主張しています。

『人間の運命と科学』の意味調べノート

 

【科学(かがく)】⇒体系的な知識。広い意味では「知識や学問」を指し、狭い意味では「自然科学」を指す。「自然科学」とは自然について研究する学問のこと。

【価値観(かちかん)】⇒何に価値を認めるかという考え方や判断基準。

【自意識(じいしき)】⇒自分自身がどう思われているかという意識。

【特有(とくゆう)】⇒そのものだけが特にもっていること。

【抽象的(ちゅうしょうてき)】⇒個々の事物から共通する性質だけを抜き出して、一般化して考えるさま。⇔「具体的」。

【著しい(いちじるしい)】⇒はっきりわかるほど目立つさま。明白である。

【原初(げんしょ)】⇒物事のいちばん初め。

【相対化(そうたいか)】⇒物事を他との比較や関係の下に置くこと。

【概念(がいねん)】⇒物事の一般的な意味内容。

【相対的(そうたいてき)】⇒他との関係や比較によって成り立つさま。

【本質的(ほんしつてき)】⇒物事の本質にかかわるさま。

【SF】⇒サイエンス・フィクション。科学的な想像に基づいて、空想的な世界を描いた物語。

【浮き彫りにする(うきぼりにする)】⇒はっきりと分かるようにする。

【意図(いと)】⇒何かをしようとすること。おもわく。

【意思疎通(いしそつう)】⇒互いの考えを伝えあい、認識を共有すること。

【定かではない(さだかではない)】⇒確実ではない。

【ご愛敬(あいきょう)】⇒ちょっとしたサービス。遊び。座興。

【~たらしめる】⇒~であるようにする。~であることを保証する。

【必須(ひっす)】⇒なくてはならないこと。

【適応的意義(てきおうてきいぎ)】⇒「適応」とは「生物がその環境に適するように、形態や習性などを変化させる現象」のこと。その現象が生ずる上で意味があることが「適応的意義」。

【観点(かんてん)】⇒物事を観察・判断するときの立場。

【客観的(きゃっかんてき)】⇒特定の立場にとらわれず、物事を見たり考えたりするさま。

【検証(けんしょう)】⇒物事を実際に調べて証明すること。

【システム】⇒様々な要素がお互いに関係し合い、できあがっている全体。

【直近(ちょっきん)】⇒現時点から最も近いこと。

【デメリット】⇒短所。欠点。

【認知的バイアス】⇒偏った見方で物事をとらえること。

【果ては(はては)】⇒ついには。最後には。

『人間の運命と科学』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①人目をけて会う。

②発達がイチジルしい。

ジョウシキを疑う。

ムダな行為をする。

⑤賞金をカクトクする。

⑥利益をツイキュウする。

⑦機械をソウサする。

解答①避 ②著 ③常識 ④無駄 ⑤獲得 ⑥追求 ⑦操作
問題2「人間とは何か。」という問いに対して、本文中ではどのように述べられているか?50文字以内で答えなさい。
解答人間は生存に必要なことだけを追求するのではなく、無駄な行動も行う存在であり、知性こそが人間性である。(50文字)
問題3「人々の前においしいにんじんをぶら下げ続けることになる」とあるが、これはどういうことか?60文字以内で答えなさい。
解答現実を操作できる科学は、短期的な利益を追い求めたいという人間の欲望をかなえる力として、人々の前に存在し続けるということ。(60文字)
問題4

次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。

(ア)多くの人はなんらかの自意識を持っており、自分に有利になるにはどのように行動すべきかという単純な意識を持つ。

(イ)人間を人間たらしめているのは、無駄な行動の根拠となる知性であり、知性こそが人間性である。

(ウ)科学は知性に根拠を置き、客観的な理論と検証により現実操作のツールとして大きな力を持つものである。

(エ)科学は人間の欲望をかなえる力を持つが、その欲望を実現していくと、長期的存続の可能性を下げてしまう可能性がある。

解答(ア)「人」という点が誤りで、正しくは「動物」。本文中には、多くの動物はなんらかの自意識を持っていると想像され、人間のように自分とはいったいなんだろう、というような高度に抽象的な問題を考えているようには見えず、今自分が有利になるためにはどのようにすべきかという単純な判断しかしていないように見える。とある。

まとめ

 

以上、今回は『人間の運命と科学』について解説しました。科学について論じた文章は、入試でもよく出題されます。ぜひ内容を正しく理解できるようになって頂ければと思います。