行政や自治体のルールを定めたものを「要綱」もしくは「要領」と言います。また、場合によっては「要項」などと言ったりすることもあります。
これらの言葉は、どのように使い分ければいいのでしょうか?今回は「要綱」と「要領」の違い、さらに「要項」についても解説しました。
要綱の意味・読み方
まずは、「要綱」の意味と読み方です。
【要綱(ようこう)】
⇒基本となる大切な事柄。また、それらをまとめたもの。綱要。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「要綱」とは「基本となる大切な事柄やそれらをまとめたもの」を意味します。
主に役所の政策や事務処理などに対して使われることが多い言葉です。例えば、以下のように使います。
- 役所の開発指導要綱に従う。
- 地方自治体の指導要綱に従う。
「指導要綱」とは「大切な事をひとくくりにまとめたルールのようなもの」を指します。通常は行政側が民間側に対して、守ってほしい項目を伝えるような際に用いられます。
「要綱」は「まとめる」という意味が強い言葉です。したがって、それぞれの項目を大まかにまとめるような時にこの言葉を使うことになります。
要領の意味・読み方
続いて、「要領」の意味と読み方です。
【要領(ようりょう)】
①物事の最も大事な点。要点。
②物事の要点をつかんだ、うまい処理の仕方。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「要領」には二つ意味があります。一つ目は「物事の最も大事な点」という意味です。一言で「要点」と言い換えても構いません。
よくある使い方が、文部科学省の出す「学習指導要領」です。「学習指導要領」とは「学生がどんな学習をすればよいかを示したもの」を表します。
例えば、以下のようなものです。
- 英語は小5から正式科目にする。
- 数学は年間〇〇時間学ぶ。
- グループ活動や実験を増やす。
このように物事の大事な点を具体的に細かくしたものを「要領」と言うわけです。
そして二つ目は、「物事の要点をつかんだうまい処理の仕方」という意味です。この場合は以下のように使います。
- 要領が悪い覚え方。
- 要領が良い作業。
簡単に言うと、「センス」や「コツ」を表した言葉が「要領」の二つ目の意味となります。
要綱と要領の違いとは
ここまでの内容を整理すると、
「要綱」=基本となる大切な事柄やそれらをまとめたもの。
「要領」=物事の最も大事な点。物事の要点をつかんだうまい処理の仕方。
ということでした。
両者の違いを二つの点から比較したいと思います。
一つ目は、「大切なことが具体的かどうか」です。
「要綱」は、行政のルールを大ざっぱにまとめたものを指します。したがって、内容的にはそこまで具体的に書かれていないのが一般的です。
一方で、「要領」の方はそれぞれの要点を細かく記したものを指します。そのため、「要領」は「要綱」よりも具体的に書かれることになります。
両者の語源も確認しておくと、「要綱」の「綱」は、「つな」や「ロープ」といった意味があります。「ロープ」というのは、太くて強いイメージの言葉です。つまり、「要綱」の方は物事を大きくまとめた基本方針などに使われるのです。
対して、「要領」の「領」は、「領土」「領地」などのように「細かく分ける・分割する」という意味があります。そのため、「要領」の方は、大事な点を具体的に細かくしたものという意味になるわけです。
そして二つ目は、「方法」や「処理の仕方」という意味でも使うかどうかです。
「要領」の方は「物事を処理する方法・処理の仕方」という意味でも使います。一方で、「要綱」の方はこのような使い方はしません。
【例】 「要綱が悪い」⇒「×」 「要領が悪い」⇒「〇」
「領」という字は、「領土」「統領」などがあるように「物事をうまく治める・まとめる」などの意味もあります。ゆえに、物事を行う時の方法や処理の意味で使う時は「要領」を使うのです。
要項の意味・使い分け
似たような言葉で、「要項」があります。
【要項(ようこう)】
⇒大切な事柄。必要な事項。また、それを記した文書。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「要項」とは「大切な事柄・必要な事柄」という意味です。また、それらを記した文書自体を指すこともあります。
「要項」のよくある使い方が「募集要項」です。「募集要項」とは入試の受験時などに学校側が書く項目となります。
内容としては、受験科目や受験会場、募集人数、試験時間、受験料などが挙げられます。このような、物事を行う上で大切な事柄や必要な事柄を「要項」と呼ぶわけです。
「要項」の場合は「要領」と同様に細かく具体的なものとなります。この時点で大まかな指針や方針をまとめたものである「要綱」とは異なる言葉であることが分かるでしょう。
また、「要領」との違いですが「要項」は項目ごとに箇条書きになるのが一般的です。
一方で、「要領」の場合は必ずしも箇条書きになるとは限りません。「要領」は箇条書きに限定されるわけではなく、具体的な方法や方針・目的など「要項」よりも幅広い意味で使われます。
要綱・要領・要項の例文
最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。
【要綱の使い方】
- 各市町村が定めている税金の指導要綱に従う。
- 市町村の建築指導課に建物に関する要綱を質問した。
- 国土交通省より宅地開発指導要綱が発表された。
- GHQから渡された当時の憲法改正要綱を確認する。
- 市が発表している委員会設置要綱を以下の通りである。
【要領の使い方】
- 文部科学省から学習指導要領が発表された。
- 幼稚園における教育要領に基づいた指導を行う。
- 消防庁が発表している予防実施の要領を守る。
- 要領が良い人と悪い人には決定的な差がある。
- 君の仕事の仕方は要領が悪いので改めるべきだ。
【要項の使い方】
- 宅建の資格を受けるために募集要項を確認する。
- 早稲田大学の各学部の募集要項をチェックする。
- 今回の参考要項は、参加者全員に伝えられていた。
- 入学要綱の案内が送られてきたので確認した。
- 次回に関しては、大会要項が変更されるらしい。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「要綱」=基本となる大切な事柄やそれらをまとめたもの。
「要領」=物事の最も大事な点。物事の要点をつかんだうまい処理の仕方。
「要項」=大切な事柄・必要な事柄。また、それを記した文書。
「違い」⇒「要綱」は「大切な事柄を大きくまとめたもの」、「要領」は「大事な点を細かくしたもの」、「要項」は「大事な点を細かく箇条書きにしたもの」を表す。
ポイントは、漢字の成り立ちを記憶しておくことです。「綱」は「ロープのように大きい」、「領」は「領土のように分ける」、「項」は「細かい項目に分ける」。このように覚えておけば違いを忘れにくいでしょう。