「しょうさん」を漢字で書く場合、次のように二つの表記の仕方があります。
「称賛に値する」「相手から賞賛される」
両方ともよく見る漢字ですが、どのように使い分ければいいのでしょうか?今回は「称賛」と「賞賛」の違いについて詳しく解説しました。
称賛・賞賛の意味
まずは、基本的な意味の確認です。
【称賛/賞賛(しょうさん)】
⇒ほめたたえること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「称賛/賞賛」とは「ほめたたえる」という意味です。例えば、以下のように使います。
- 相手選手の勝利を称賛する。
- 社員の営業成績を賞賛する。
「しょうさん」は、ビジネスやスポーツなど公式な場所・正式な場面で使うことが多い言葉です。その中でも特に、人のすぐれた行為や業績などをほめる時に使われます。
逆に言えば、親が子供をほめる場合などフランクな場では使われません。この場合は、単に「ほめる」と言います。
では、実際にこの二つには違いがあるのでしょうか?多くの辞書では、両者は同じ項目として統一されています。ということは、どっちを使ってもよいと思う人もいるかもしれません。
しかし、厳密には使い分けすべき言葉だと言えます。辞書に書かれていることがすべてではないということです。
称賛と賞賛の違い・使い分け
「称賛」と「賞賛」の使い分けは、原則として称賛の方を使うと考えて問題ありません。
まず、分かりやすいように両者の語源を確認しておくと、「称賛」の「称」は元々「天秤に持ち上げて重さをはかる」という意味でした。
「天秤(てんびん)」とは「重さを量る器械」のことです。そこから転じて、「となえる」「言葉に出してほめ上げる・たたえる」などの意味になりました。
一方で、「賞賛」の「賞」は、元々「ほうびとして、金品を与える」という意味でした。現在でも「賞状」「賞品」などの言葉があるように、「賞」という字は相手へほうびを与える時に使われています。この事から、「賞」=「相手をほめる」という意味になっています。
そして、両者に共通する「賛」は、本来は「すすめる・たすける」という意味でしたが、現在は「ほめる」という意味になっています。
整理しますと、本来の語源は
となります。
つまり、両者の違いは「精神的にほめるか物質的にほめるか」ということになります。
「称賛」の方は、精神的に相手をほめるような場合に使います。一方で、「賞賛」の方は物質的に相手をほめるような場合に使うのです。
しかし、冷静に考えてみると「物質的にほめること」というのはそれほど多くはありません。「物質的にほめる」とは、例えば賞金を受け渡したりトロフィーを授与したりしてほめるということです。
一方で、精神的にほめるのはどうでしょうか?親や先生、上司などが言葉でほめるようなことは日常的にあります。
つまり、「ほめる」という行為は精神的に行うのが普通なのです。そのため、原則として「称賛」の方を使うということです。
なお、読み書きを専門とするメディアでは「称賛」の方を使うことで完全に統一しているようです。別の言い方をすれば、「賞賛」の方は使わないということです。
新聞やテレビなどのメディアは、漢字の混同を避ける傾向にあります。そして、読者へ簡潔に情報を伝えることを第一としています。そのため、まぎらわしい漢字がある場合はこのように統一しているのです。
一般的には、メディア以外の業界もこれにならい「称賛」の方を使う傾向にあります。したがって、私たちが一般に使う際にも「称賛」を使っておけば問題ないという結論になるわけです。
称賛・賞賛の類義語
「称賛・賞賛」の「類義語」も確認しておきます。
「絶賛」は、「しょうさん」よりも相手をほめるような時に使います。つまり、普通にほめるのではなく、格別にほめるような時に使うということです。
そして「礼賛」は「絶賛」よりもさらに相手をほめるときに使います。「礼賛」は、一種の尊敬を込めた表現です。
また、「賛美」もほめたたえることですが、「賛美」は「崇高なもの」や「神聖なもの」を対象とするのに対し、「称賛」は「行為」や「行為の成果」を対象とする点が異なります。
最後の「称讃・賞讃」は、漢字が異なるだけで全く同じ意味の同義語です。「讃」は戦前に使われていた漢字なため、今は常用漢字には含まれていません。そのため、現在ではほとんど使わない言葉だと考えて下さい。
称賛・賞賛の対義語
逆に、「対義語」としては、以下のような言葉が挙げられます。
「ほめる」の反対語なので、基本的に「相手をけなしたり、ののしったり」という言葉が主となります。いずれも否定的な意味として使われます。
称賛・賞賛の使い方・例文
最後に、「しょうさん」の使い方を実際の例文で確認しておきましょう。
【称賛の使い方】
- 全ての人から称賛されるほどの、立派な人格者だ。
- 彼の活躍は称賛に値するため、MVPは確実だろう。
- 私はあなたの勇気を、大いに称賛したいと思っている。
- 非難や称賛に対して一喜一憂しているようではダメだ。
- 命を救ったという功績に、称賛の嵐がやまなかった。
【賞賛の使い方】
- 大会本部長から賞賛の証として、金メダルをいただいた。
- 営業成績トップの賞賛として、社長から腕時計をもらった。
- 生徒を勉強させるために、お小遣いを与えながら賞賛する。
- 記念すべき大会の優勝者として、賞賛のトロフィーが贈られた。
- 成績優秀者への賞賛として、臨時の景品が贈られることとなった。
「称賛」は、言葉でほめるような時に使うということでした。主に、相手の行いや言動、成果などを精神的にほめる時に使います。言い方としては、「称賛に値する」「称賛の嵐」などが多いです。
対して、「賞賛」の方は、何か金品を与えてほめる時に使うということでした。身近な例で言うと、現金そのものを与えてほめることなども当てはまります。こちらは、「賞賛が贈られる」などの言い方が多いです。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「称賛」=言葉に出してほめる。(一般的)
「賞賛」=金品をあげてほめる。(限定的)
「違い・使い分け」⇒「称賛」は精神的にほめる場合に使い、「賞賛」は物質的にほめる場合に使う。メディアは「称賛」で統一。
「賞賛」の方を使っても決して間違いというわけではありません。しかし、一般的には「称賛」を使うべきだと言えます。漢字本来の意味に従うならば、「賞賛」を使う場面は限定的にしておきましょう。