「かどう」という言葉は、主に機械やロボットなどのシステムに対して使われています。
「機械を稼動する」「原発を稼働する」
さらに、似たような言葉で「可動」も存在します。これらの言葉はどのように使い分ければよいのでしょうか?
今回は、「稼働・稼動」の違い、そして「可動」についても解説しました。
稼働・稼動の意味
最初に、「かどう」の意味を辞書で引いてみます。
【稼働/稼動】
①かせぎはたらくこと。仕事をすること。就労。
②機械を運転すること。また、機械が動いて仕事をすること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「稼働/稼動」には二つの意味があります。つまり、漢字だけでなく意味も二種類あるということです。
一つ目は、「人が仕事をする」という意味です。
【例】
- かどう人口が増える。
- かどう日数は10日。
この場合は、「人」に対して使われるのが特徴です。すなわち、仕事をする人数や人が仕事をする期間などを表していることになります。
そして二つ目は、「機械が仕事をする」という意味です。一つ目の意味との違いは、人ではなく「機械」に使われる点です。
【例】
- 工場の設備がかどうする
- コンピューターをかどうさせる
- エレベーターをかどうさせる
このように、「稼働」と「稼動」は両方とも「人や機械が働く」という意味を持っています。ということは、どちらを使ってもよいと思う人もいるかもしれません。
しかし、厳密には使い分けすべき言葉となります。辞書の記述がすべてではないということです。
稼働・稼動の違い・使い分け
「稼働」と「稼動」の使い分けは、原則として原則として「稼働」の方を使うと考えて問題ありません。
まず、分かりやすいように両者の語源を確認しておくと、「稼働/稼動」の「稼」は「(穀物などを)うえる」「(穀物などの)みのり」という意味があります。
よく誤解する人がいますが、「稼(かせ)ぐ」という読み方は「国訓(こくくん)」です。「国訓」とは「漢字本来の意味ではなく、日本独自の読み方」のことを意味します。
つまり、本来の語源としては「お金」の意味ではなく、「農業」の意味が正しいわけです。
そして、「稼動」の「動」は「動く」という意味があります。一方で、「稼働」の「働」は、「人偏(にんべん)」がついてるので、「人が動く」という意味があります。
したがって、漢字の語源としてはそれぞれ次のようになります。
「稼働」=人が(農業で)働くこと。
「稼動」=機械が(農業で)働くこと。
よって、両者の厳密な使い分けとしては、
「稼働」⇒「稼働日数」「稼働人口」など、人が稼ぐために働く場合に使う。
「稼動」⇒「稼動施設」「ロボットの稼動」など、機械が働いて仕事をする場合に使う。
となるわけです。
ただ、実際にはこの二つの使い分けを明確にすることは難しいと言われています。なぜなら、人と機械のどちらが働いているか判断しにくい場合があるためです。
例えば、「原発の再かどうを進める。」という文の場合、どちらを使うべきか判断に迷ってしまうでしょう。
なぜなら、原子力発電所は機械と人間の両方が働くことにより運営されているからです。
したがって、このような混同をさけるために、新聞やテレビなどのメディアは「稼働」に統一しているようです。逆の言い方をすると、「稼動」の方は使わないということです。
一般的には、メディア以外の業界もこれにならい「稼働」が多く使われる傾向にあります。そのため、原則として「稼働」の方を使っておけば問題ないという結論になるわけです。
なお、実際の用例では「かどう」は機械に対して使うことの方が多いです。「それならば、稼動の方に統一すべきでは?」と疑問に思う人もいるかもしれません。
ここからは推測ですが、人が働くような場合は「労働」という言葉がすでにあります。つまり、これに合わせて「稼働」に統一しているのだと思われます。「労働」とは表記しますが、「労動」とは決して表記しないためです。
可動(かどう)の意味
似たような言葉で「可動」があります。こちらの意味も押さえておきましょう。
【可動(かどう)】
⇒動かすことができること。動く仕掛けになっていること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「可動」とは「動かすことができること・動く仕掛けになっていること」という意味です。一般的には、後ろに「~式」がつくことが多い言葉と言えます。
【例】
- 可動式のドア
- 可動式のアーム
「可動」は読み方は全く同じですが、「稼働/稼動」とは異なる意味を持ちます。
まず、「可」は「可能」「不可」などの熟語があるように、「~できる」という意味の言葉です。つまり、「動かせる」ので単に「可動」と書くわけです。
もっと簡単に言えば、「動かせるか?動かせないか?」に軸を置いた言葉ということです。そのため、「仕事をする」という意味を持つ「稼動・稼動」とは全く異なる言葉となります。
使い方・例文
最後に、「かどう」の使い方を例文で紹介しておきます。
【稼働の使い方】
- 今月の稼働日数が給与明細に記載されていた。
- プロ野球選手の稼働日は、火曜日から日曜日までだ。
- エンジンの稼働中に手入れをするのは危険である。
- 原子力発電所の再稼働は、止めるべきだと判断された。
- 稼働率は100%付近になるのが望ましいと言われている。
【稼動の使い方】
- エレベーターを再稼動させるために、現在点検している。
- 新工場を稼動させることにより、売上げアップをはかる。
- とりあえず、システムの稼動を停止してください。
- コンビニには、24時間稼動のATMが置かれている。
- 現在、弊社では2万台の機械が稼動中です。
【可動の使い方】
- 安全対策として、可動式の扉が設置された。
- 可動式のテーブルを室内に設置する。
- 新商品は可動性が大きく確保されている。
- 関節の可動幅が少ない人は怪我をしやすい。
基本的には、「稼働」は「人」と「機械」のどちらに対しても使われています。迷ったらこちらを使えば問題ないでしょう。
また、「稼動」の方を使っても必ずしも間違いというわけではありません。メディアは「稼働」で統一していますが、他の業界では「稼動」を使うこともあります。
例えば、実際に機械だけを動かしている現場などです。この辺は、会社の規定などによっても異なるようです。もしも会社内で統一した基準があれば、それに従うのが無難と言えます。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「稼働/稼動」=①人が仕事をする。②機械が仕事をする。
「可動」=動かすことができること・動く仕掛けになっていること。
「稼働」は人が働く場合に使い、「稼動」は機械が働く場合に使う。
上記だと混同する場合があるため、メディアは「稼働」で統一している。
一般的には、「稼働」の方が使われているためこちらを使えば問題ありません。後は会社の規定・ルールなどがあればそれらに従うようにしましょう。