『羅生門』は、芥川龍之介による有名な作品です。高校国語の教科書などにもたびたび登場します。
ただ、作中に出てくる言葉は辞書に載っていないものも多く、意味が分かりにくい表現もあります。そこで今回は、「羅生門」に出てくる語句の意味を簡単にまとめました。
第一段落の語句一覧
ある日の暮れ方のことである。~
【暮れ方(くれかた)】⇒夕方。夕暮れ時。
【下人(げにん)】⇒身分の低い召使い。身分の低い使用人。
【羅生門(らしょうもん)】⇒平安京の正門。
【雨やみ(あまやみ)】⇒雨がやむこと。
【丹塗り(にぬり)】⇒赤色または朱色で塗ること。※「朱色(しゅいろ)」とは「少し黄色がかった赤色」を指す。
【円柱(まるばしら)】⇒断面が円形の柱。
【朱雀大路(すざくおおじ)】⇒平城京・長岡京・平安京で、中央を南北に通じる大路。
【市女笠(いちめがさ)】⇒頭にかぶる笠の一種。多年草で編み、中央に巾子形 (こじがた)という突起を作る。
【揉烏帽子(もみえぼうし)】⇒揉んで柔らかく作った烏帽子。「烏帽子」とは「烏塗 (くろぬり) の帽子」のこと。
【辻風(つじかぜ)】⇒渦(うず)を巻いて吹く、強く激しい風。
【飢饉(ききん)】⇒干ばつなどにより農作物が不足し、人々が飢えること。
【洛中(らくちゅう)】⇒京都の市中。都の中。対義語は「洛外(らくがい)」。
【さびれる】⇒活気がなくなり、さびしくなる。ひっそりする。
【ひととおりではない】⇒普通ではない。尋常ではない。
【旧記(きゅうき)】⇒古い記録。昔の記録を記した文書。
【仏像(ぶつぞう)】⇒礼拝の対象として作られた仏の彫像。
【仏具(ぶつぐ)】⇒仏前に供える器物や道具。
【丹(に)】⇒赤い色もしくは丹色(にいろ)。
【箔(はく)】⇒金属をたたいて、紙のように薄く平たく伸ばしたもの。
【薪の料(たきぎのしろ)】⇒薪の材料。燃料にするための細い枝や割り木など。
【始末(しまつ)】⇒事の次第や事情。特に、よくない結果。
【もとより】⇒言うまでもなく。もちろん。
【顧みる(かえりみる)】⇒気にかける。心配する。
【狐狸(こり】⇒狐(きつね)と狸(たぬき)。
【棲む(すむ)】⇒家や場所を決めて、常にそこで生活する。
【盗人(ぬすびと)】⇒他人の物を盗み取る者。どろぼう。盗賊。
【日の目が見えなくなる(ひのめがみえなくなる)】⇒日が沈み、暗くなる。日が暮れる。
【足踏みをしない(あしぶみをしない)】⇒足を踏み入れない。
【鴟尾(しび)】⇒屋根頂部の水平な棟(むね)の両端に付けた、魚の尾形をした飾り。
【ことに 】⇒特に。とりわけ。
【ごまをまいたように】⇒黒く転々と散らばるように。
【ついばむ 】⇒鳥がくちばしでつついて食う。
【刻限(こくげん)】⇒時間。時刻。
【洗いざらした】⇒何度も洗って色が薄くなった。
【襖(あお) 】⇒両方の脇をあけたままで、縫い合わせず、襴(らん)のない上着。
【格別(かくべつ)】⇒特別。
【暇を出す(ひまをだす)】⇒使用人などをやめさせる。仕事をやめさせる。
【ひととおりならず】⇒ひどく。すっかり。
【衰微(すいび)】⇒勢いが衰えて弱くなること。
【永年(えいねん)】⇒ながねん。ながい年月。
【余波(よは)】⇒ある事柄が周囲へ及ぼす影響。
【途方に暮れる(とほうにくれる)】⇒どうしてよいか分からず、困る。
【平安朝(へいあんちょう)】⇒平安時代。
【サンチマンタリスム】⇒感傷的な気分。感傷におぼれる心理的傾向。
【申の刻(さるのこく)】⇒午後三時~午後五時。申の刻下がりだと午後の4時~5時頃。
【気色(けしき)】⇒気配。物事の様子。
【何をおいても】⇒まず第一に。どんな物事にも優先して。
【差し当たり(さしあたり)】⇒今のところ。今しばらくの間。
【とりとめもない】⇒特にこれと言ったまとまりがない。
【聞くともなく聞く】⇒なんとなく聞く。
【甍(いらか)】⇒屋根の頂上の部分を覆う瓦。屋根に葺 (ふ)いた棟瓦 (むねがわら) 。
【いとま】⇒ひま。時間的な余裕。
【築土(ついじ)】⇒ 土をつき固めて造った屋根のついた塀。
【低回(ていかい)】 ⇒行ったり来たりすること。
【あげく】⇒色々なことをした時の最終的な結果。
【局所(きょくしょ)】⇒全体の中の限られた一部分。
【逢着(ほうちゃく)】⇒出会うこと。行き着くこと。
【肯定(こうてい)】⇒認めること。
【かたをつける】⇒物事の決着をつける。始末をつける。
【くさめ】⇒くしゃみ。
【大儀そうに(たいぎそうに)】⇒面倒くさそうに。だるそうに。
【火桶(ひおけ)】⇒木をくり抜いて作った木製の丸形の火鉢。
【汗袗(かざみ)】⇒衣類に汗がにじむのを防ぐために着る下着。
【憂え(うれえ)】⇒心配。
【ともかくも】⇒とにかく。他の事はどうであっても。
【夜を明かす(よをあかす)】⇒寝ないで夜を過ごす。一晩中寝ないでいる。
【楼(ろう)】⇒遠くを見るために作った高い建物。
【目につく(めにつく)】⇒目にとまる。注意が向く。
【聖柄(ひじりづか)】⇒鮫皮(さめがわ)を付けない木地のままの刀の柄。「聖柄の太刀」で、ここでは「粗末な刀・安物の刀」という意味。
【太刀(たち)】⇒長くて大きい刀の総称。
【鞘走る(さやばしる)】⇒刀身が自然に鞘(さや)から抜け出る。
【わら草履(わらぞうり)】⇒わらで編んだ草履。
第二段落の語句一覧
それから、何分かののちである。~
【息を殺す(いきをころす)】⇒息をおさえて、音を立てないようにする。
【高(たか)をくくる 】⇒大したことはないと軽く見る。
【火をとぼす】⇒火をともす。
【ただの者ではない】⇒普通の者ではない。
【やもり】⇒ヤモリ科の爬虫類。
【足音を盗む(あしおとをぬすむ)】⇒足音を立てないようにする。
【無造作に(むぞうさに)】⇒雑に。大事に扱わずに。
【おぼろげながら】⇒はっきりしないながら。
【おし(唖)】⇒言葉を発することができない人。
【腐乱(ふらん)】⇒腐ってただれること。
【臭気(しゅうき)】⇒くさいにおい。悪臭。
【檜皮色(ひわだいろ】⇒檜の樹皮のような赤黒い色。
【老婆(ろうば)】⇒年取った女。老女。
【暫時(ざんじ)】⇒しばらくの間。少しの間。
【しらみ】⇒シラミ目の昆虫の総称。吸う口を持つ人畜の吸血害虫。
【頭身の毛も太る(とうしんのけもふとる)】⇒恐怖で毛が逆立つ。
【憎悪(ぞうお)】⇒ひどく憎むこと。憎み嫌うこと。
【語弊(ごへいがある)】⇒誤解を招きやすい言い方。
【未練(みれん)】⇒あきらめきれない気持ち。
【合理的(ごうりてき)】⇒道理や論理にかなっているさま。
第三段落の語句一覧
そこで、下人は、両足に力を入れて、いきなり~
【弩(いしゆみ)にはじかれたように】⇒ぱっと勢いよく。
【おのれ】⇒おまえ。きさま。
【罵る(ののしる)】⇒わめき立てる。声高に非難する。
【鋼(はがね)】⇒炭素を含むかたい鉄。鋼鉄。
【わなわな】⇒こきざみに体が震えるさま。
【肩で息を切る(かたでいきをきる)】⇒肩を上げ下げしながら苦しそうに呼吸をする。
【執拗く(しゅうねく)】⇒執念深く。
【全然(ぜんぜん)】⇒すっかり。とても。
【円満(えんまん)】⇒調和がとれていておだやかなこと。
【成就(じょうじゅ)】⇒成し遂げること。
【検非違使の庁(けびいしのちょう)】⇒ 京都の治安維持を担当する役所。
【今し方(いましがた)】⇒つい先ほど。たった今。
【縄をかける(なわをかける)】⇒捕まえる。
【今時分(いまじぶん)】⇒今頃の時間。
【肉食鳥(にくしょくちょう)】⇒ワシ・タカなど他の動物の肉を食べる鳥。
【あえぐ 】⇒苦しそうに呼吸をする。
【かつら】⇒髪の毛を補うために添える毛髪。
【存外(ぞんがい)】⇒思いのほか。案外。
【侮蔑(ぶべつ)】⇒見下してさげすむこと。
【先方(せんぽう)】⇒相手方。ここでは、老婆のことを指す。
【蟇(ひき)】⇒ひきがえる。がまがえる。
【口ごもる(くちごもる)】⇒声が口の中にこもり、はっきりしない。
【なんぼう】⇒どんなに。
【四寸(しすん)】⇒約12センチ。「寸」は尺貫法の長さの単位で1寸は約3.03センチ。
【太刀帯(たてわき)】⇒皇太子や御所を警備した役人。
【陣(じん)】⇒詰め所。特定の者が集まって詰めている所。
【往んだ(いんだ)】⇒行った。
【疫病(えやみ)】⇒悪性の伝染病。
【死ななんだら】⇒死ななかったら。
【菜料(さいりょう)】⇒おかずの材料。
【するのじゃて】⇒するのだから。
【されば 】⇒だから。そんなわけで。
【大目に見る(おおめにみる)】⇒過失や悪い点を厳しくとがめず、寛大に扱う。
【柄(つか)】⇒刀剣などの手で握る部分。
【冷然(れいぜん)】⇒少しも心を動かず、冷ややかでいる様子。
【意識の外に追い出される(いしきのそとにおいだされる)】⇒頭の中から消される。すっかり忘れる。
【きっと】⇒間違いなく。
【嘲る(あざける)】⇒バカにして笑う。見下して笑う。
【不意に(ふいに)】⇒急に。突然。
【念を押す(ねんをおす)】⇒注意して確かめる。
【襟髪(えりがみ)】⇒首の後ろ側の髪。
【噛(か)みつくように】⇒激しい態度で相手に迫るように。
【引剥(ひは)ぎ】⇒追いはぎ。通行人を襲い、衣服・持ち物などを奪い取ること。
【恨(うら)むまいな】⇒恨まないだろうな。
【手荒い(てあらい)】⇒扱い方や動作が荒々しい様子。
【またたく間(ま)】⇒まばたくほどの非常に短い間。
【夜の底(よるのそこ)】⇒はしごの下の真っ暗闇。
第四段落の語句一覧
しばらく、死んだように倒れていた老婆が、~
【黒洞洞(こくとうとう)】⇒底知れない、洞窟のような暗さ。
【行方(ゆくえ)】⇒行った先。
まとめ
以上、本記事では『羅生門』の言葉の意味を一覧にしてまとめました。高校現代文などでも学ぶ内容であるため、ぜひ今回の内容を何度も読み理解して頂ければと思います。