「なぜ」と「どうして」は、どちらも相手に理由を問う表現です。さらに、似たような語で「なんで」が使われることもあります。
実はこれらの言葉は、使う相手や目的、状況などによって異なってきます。今回は、「なぜ」「どうして」「なんで」の違いについて解説しました。
なぜの意味
「なぜ」とは「理由や原因を問う理性的な言い方」を意味します。
「理性的」とは「感情的」の反対語で、「本能や感情に左右されない様子のこと」です。
「なぜ」は漢字だと「何故」と書き、主に書き言葉で使われるという特徴があります。逆に、話し言葉(会話)ではあまり使われるものではありません。
【なぜの使い方】
- この映画はなぜ人気があるのか。
- あなたはなぜ仕事を辞めたのか。
- 彼らはなぜ試合に負けたのか。
- なぜ彼女はお金持ちになれたのか。
- 友人から連絡が来たのはなぜだろう。
「なぜ」は理性的な言い方で、書き手の感情的要素が薄い言葉です。
例えば、例文2や3であれば、純粋に「仕事を辞めた理由」や「試合に負けた原因」を相手に問いています。
この時に、辞めることになった相手の心理や、負けたことによる相手の感情までには焦点は当てられていません。あくまで、理由や原因を純粋に聞いているだけです。
このように、理由や原因のみを聞く理性的な言葉を「なぜ」と言うのです。
「なぜ」は文語的、形式的な言葉なので、相手に丁寧かつ上品な印象を与えることができます。そのため、ビジネス文書や公文書、新聞記事など改まった文章に対して使うことができます。
もちろん、日常的な文章や小説文、手紙文などにも使うことができる言葉です。
どうしての意味
「どうして」とは「理由や原因を問う感情的な言い方」を意味します。
「どうして」は漢字だと「如何して」と書き、主に話し言葉で使われるという特徴があります。
書き言葉でも使うことができますが、その用例は「なぜ」ほど多いものではありません。
【どうしての使い方】
- どうしてこんな簡単な問題が解けないのか。
- どうして彼女と別れてしまったのか。
- どうして人は死なないといけないのか。
- どうして失言をしてしまったのだろう。
- どうしてあなたは勝つことができたのか。
「どうして」は感情的な言い方で、使い手の思いや心理が込められた言葉です。
例えば、例文1であれば「いら立ち」、例文2・4であれば「後悔」、例文3・5であれば「疑問」という感情が込められています。
このように、人の感情や思いが込められた言葉が「どうして」ということになります。
「どうして」は本来、理由や原因を相手に問う表現ですが、それ以上に人の感情が含まれたものです。
そのため、相手に理由を問うというよりは、相手に感情をぶつける言葉と考えると分かりやすいかと思われます。
なお、「どうして」には理由や原因といった意味だけでなく、「方法や経緯・否定などを問う意味」もあります。
- どうして時間をつぶそうか。(方法)
- 地震はどうして起こるのか。(経緯)
- これがどうして黙っていられよう。(否定)
1は「どうやって時間をつぶすのか?」「どのようにして時間をつぶすか?」という方法を問いたものです。
また、2は「どのようにして地震が起こるのか?」「どうやって地震が引き起こされるのか?」といった経緯を表したものです。
最後の3は「決して黙ってられない」「黙っていられるはずがない」という否定を表したものです。「なぜ」には、このような意味は当然含まれていません。
なんでの意味
「なんで」とは「理由や原因を問う口語的な言い方」を意味します。
「なんで」は「口語的」な表現で、日常会話などの話し言葉において使われるのが特徴です。
【なんでの使い方】
- なんでカレーが好きなの?
- なんで君たちは喧嘩なんかしたんだ?
- バラはなんでこんなに美しいのだろう。
- なんで犬はここまでかわいいんだ。
- なんで宿題をしないといけないの?
上記のように、「なんで」は普段の会話において使われます。その中でも特に、若者同士の会話、子供が大人に問いかける会話などで使われることが多いです。
大人同士の会話でも使えなくはないですが、用例としては多くはありません。
大人が「なんで」を使うと、どうしても子供じみた印象を与えてしまうため、目上の人などに対しては使いにくい表現となります。
その他、文章を書く時も基本的には「なんで」を使うことはありません。例えば、レポートやビジネス文書などを書く時は「なぜ」を用います。
「なんで」は、相手に対して親近感を与えたり、柔らかい印象を与えたりする効果があるので、若者が使う際には適している言葉だと言えます。
なぜ・どうして・なんでの違い
「なぜ」「どうして」「なんで」の違いを簡潔に言うと、「硬さ・丁寧さの度合い」となります。
「文章の硬さ」および「丁寧さ」の順番に並べると、「なぜ」>「どうして」>「なんで」です。
「なぜ」は主に書き言葉で使われ、形式的、文語的な言い方なため、この中だと最も硬い表現です。話し言葉で使われることは少なく、ビジネス文書や公文書など硬い文章に適しています。
また、人の感情が込められる要素は薄く、理由・原因に焦点を当てた理性的な言葉となります。
「どうして」は、主に話し言葉で使われ、使い手の感情に焦点が当てられた言葉です。「理由や原因を問う」という意味も含まれていますが、あくまでその人の感情が優先されたものです。
「どうして」は「なぜ」よりも柔らかい表現なので、日常会話をする際には適した言葉です。ただ、丁寧さは「なぜ」の方があるため、上司など目上の人に使う際は「どうして」ではなく「なぜ」を使うのが適しています。
その他には、「方法・経緯・否定」といった意味もあるのが「どうして」の特徴です。
最後の「なんで」は、「どうして」よりもさらにくだけた表現です。
「なんで」は話し言葉の中でも特に若者や子供などが使う日常会話で使われます。したがって、ビジネス文書やレポートなどの硬い文章には当然使うことができません。また、上司など目上の人に使うのもNGです。
ただ、この中だと最も柔らかい表現なので、相手に親近感を与えるという効果はあります。友人同士の会話や、親しい者同士の間柄で使う分には問題はありません。
しかし、やはり丁寧さには欠ける表現ですので、使う際には十分に相手を選ぶ必要があると言えます。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「なぜ」=理由や原因を問う理性的な言い方。主に書き言葉で使われる。
「どうして」=理由や原因を問う感情的な言い方。主に話し言葉で使われる。
「なんで」=理由や原因を問う口語的な言い方。話し言葉の中でもさらにくだけた表現。
「違い」=硬さ・丁寧さの順だと、「なぜ」>「どうして」>「なんで」となる。
「なぜ」は文語的で硬い表現なのに対し、「どうして」は口語的で柔らかい表現です。「なんで」は「どうして」よりもさらに口語的でくだけた表現です。使う場面や目的などによってそれぞれを用いるようにして下さい。