「コップ」と「カップ」は、どちらも飲み物を飲むときに使われるものです。さらに、場合によっては「グラス」が使われることもあります。
これらの言葉には、一体どんな違いがあるのでしょうか?今回は、「コップ」と「カップ」「グラス」の使い分けについて詳しく解説しました。
コップの意味
まずは、「コップ」の意味からです。「コップ」とは「実用的な飲料用の器」を表します。
「実用的」とは「実際に役に立つこと」だと考えて下さい。例えば、ガラスのコップなどは私たちの日々の生活に役に立っています。
飲み物を飲む時、歯を磨くときなど欠かすことができません。紙コップなども外で飲食する時には大変役に立ち便利です。このようなものを、「コップ」と呼ぶのです。
「コップ」は、元々オランダ語の「Kop」から来た語で、江戸時代からはすでに用いられていました。
オランダ語としては「脚付きの杯」の意味で、江戸時代の訳語としては「酒飲盃(いさはい)」と記されています。
しかし、現代語としてのコップは「実用的な飲料用の容器」を指すと考えて問題ありません。
カップの意味
次に、「カップ」の意味です。「カップ」とは「取っ手付きの陶磁器」のことを表します。
「カップ」は英語の「cup」から来た語で、明治時代になってから用いられた言葉です。
英語としての「cup」は、紅茶、コーヒー、ココアなどを飲むための片手付きの陶磁器を指します。
日本語だと紅茶茶碗、コーヒー茶碗などと呼ぶのがこれで、時には「コーヒーカップ」とそのまま用いられることもあります。
その他には、調理用に用いる目盛付きの計量器が「カップ」「計量カップ」などと呼ばれています。
また、金属、ガラス、プラスチック、紙などでできているものやアイスクリームを盛る器なども「カップ」と呼ばれています。
なお、スポーツの大会で優勝したときに渡すものを「優勝カップ」と言いますが、これは本来「酒を入れた器」というのが正しい由来です。
元々、金属製で脚の付いたものを「カップ」と言っていましたが、それを装飾したものを後から違う用途として使うようになり、最終的にスポーツなどの表彰時に渡すようになったのです。
コップとカップの違い
ここまでの内容を整理すると、
「コップ」=実用的な飲料用の器。「カップ」=取っ手付きの陶磁器。
ということでした。
両者の違いは、2つの点から比較すると分かりやすいでしょう。
1つ目は「形状が限定されるかどうか」です。
両者を同じ飲み物を飲む器と仮定した場合、「コップ」は取っ手があるもの・ないものなどすべての対象を含みます。
言い換えれば、「コップ」は「形状が限定されていない」ということです。
一方で、「カップ」の方は取っ手が付いているものを表します。したがって、こちらは形状が固定された言葉と言えるのです。
2つ目は、「材質の違い」です。
「コップ」は、主にガラスを材質とするものが基本です。もちろん、紙コップなどの例外はありますが、基本はガラスによってできていると考えて問題ありません。
対して、「カップ」の方は陶磁器を材質とするものが基本です。こちらも金属やガラス、プラスチックなどで作られることもありますが、元々の由来は陶磁器から来ています。
したがって、単に「カップ」と言った場合、「陶磁器」によって作られたものを指すことが多いです。
そのため、一般的な器で比較した場合、コップは透明であることが多く、カップは色が付いていることが多いです。
なお、国立国語研究所の行なった意識調査で、類義語の意味の違いに関する項目があります。
その中に、「コップ・カップ」という欄があり、質問に対する回答だと以下のような調査結果が出ています。
(ア)金属製のものはどちらの語で呼ぶか?
「コップ」=「9%」 「カップ」=「75%」
(イ)陶器でできているものはどちらの語で呼ぶか?
「コップ」=「49%」 「カップ」=「28%」
(ウ)持つところ(取っ手)のあるものはどちらの語で呼ぶか?
「コップ」=「7%」 「カップ」=「69%」
(エ)どちらの語が日用品又は実用品という感じがするか?
「コップ」=「80%」 「カップ」=「7%」
出典:国立国語研究所 『類義語の研究』
概ねここで解説した通りの結果となっていることが分かります。
しかし、日常生活で「コップ」と「カップ」がはっきりと分けられているかと言うと、必ずしもそうとは言い切れない部分もあります。
例えば、(イ)の回答だと「コップ」の方が49%と多いですが、実際には「カップ」の方が陶磁器でできたものです。
本調査では、反対の呼び名をする者も一定数おり、はっきりとした傾向が現れない場合もあるという結果が出ています。
その点では、実際の日常生活では、「コップ」と「カップ」の使い分けが明確に行われているとは言えない部分もあるのです。
グラスの意味
「コップ」と「カップ」に関連して、もう一つ「グラス」という言葉があります。
「グラス」とは「ガラス製の飲料用の器」という意味で、主に喫茶店やバーなどの飲食店で使われるものです。
「グラス」は英語の「glass」から来た語で、本来はガラスのことを表していました。しかし、発音がしやすいようにと、「ガラス」⇒「グラス」と転じていったと言われています。
「ガラス」は液体の種類によって形状が異なるため、次のように名前が呼び分けられています。
- ウイスキーグラス
- カクテルグラス
- シェリーグラス
- シャンペングラス
- ブランデーグラス
- リキュールグラス
- ワイングラス
また、装飾加工をしたガラス製品として次のようなグラスもあります。
- カットグラス
- エングレーブドグラス
- エッチドグラス
- エナメルグラス
いずれの場合も日用品とはかけ離れており、洋酒用に使われる高級品というイメージを持つかと思われます。
この点では、同じガラスが主成分でありながら、日用品・実用品として使われる「コップ」とは明らかに異なる言葉です。
また、「グラス」は基本的に「カップ」のような取っ手は付いていません。ワイングラスがその典型で、グラスの下に位置する持つ部分が細くなっています。
これはワインなどの高級飲料を手の温度によって冷めさせないようにするためと言われています。
なお、「コップ」と「グラス」についても国立国語研究所が行なった意識調査が行われています。
(ア)ガラス以外、例えば金属製や陶製のものはどちらの語で呼ぶか?
「コップ」=「81%」 「グラス」=「11%」
(イ)どちらの方が形の大きいものを指すか?
「コップ」=「23%」 「グラス」=「52%」
(ウ)どちらの方が日用品として実用的か?
「コップ」=「91%」 「グラス」=「2%」
(エ)洋酒を飲む時の器は、どちらの語で呼ぶか?
「コップ」=「0%」 「グラス」=「98%」
出典:国立国語研究所 『類義語の研究』
上記のように、形の大きさ以外ははっきりとした結果が出ています。
現状、(ウ)と(エ)の回答から分かるように、「コップが実用的な品」、「グラスが洋酒用の品」という認識で使われているということです。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「コップ」=実用的な飲料用の器。(主にガラスを材質とし、形状が限定されない。)
「カップ」=取っ手付きの陶磁器。(主に陶磁器を材質とし、取っ手が付く。)
「グラス」=ガラス製の飲料用の器。(ガラスを材質とし、洋酒用に用いられる。)
「コップ」は、取っ手の有無に関係なく飲み物の容器全般を指します。対して、「カップ」は取っ手が付くという大きな特徴があります、「グラス」に関しては、日常的な場面ではなく、高級な洋酒などに使われる言葉だと覚えておきましょう。