「配分」と「分配」は、前後の漢字を逆にしたもの同士の言葉です。ただ、この場合同じ意味として使ってよいのかという問題があります。
特に両者は経済学の用語としても使われているので気になるところです。そこで今回は、「配分」と「分配」の違いについて詳しく解説しました。
配分の意味
まずは、「配分」の意味からです。
【配分(はいぶん)】
⇒割り当てて配ること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「配分」とは「割り当てて配ること」を意味します。
例えば、会社が100万円の利益を得て、その100万円の利益を従業員10人に割り当てたとします。一人がもらえる額は、「100÷10」=「10万円」です。
ところが、一人10万円だと金額が多すぎるので、やはり最初の半分(50万円)は会社に残しておこうと決めました。
最終的には、「50÷10」=「5万円」が一人の持ち分となりました。このような時に、「利益の配分を従業員で調整した」などのように言うわけです。
漢字の成り立ちを確認しておくと、「配分」は「配(くば)った分(ぶん)」と書きます。すなわち、何らかのものを配って分けた時の割合に重きが置かれた言葉ということです。
なお、「配分」は英語だと「allocation」と言います。
分配の意味
次に、「分配」の意味です。
【分配(ぶんぱい)】
①分けて配ること。
②地主に地代、資本家に利潤、労働者に賃金というように、生産に関与した者の間に所得が分けられること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「分配」とは「分けて配ること」を意味します。
こちらも同様に会社の利益を例に出すと、100万円の利益を従業員10人に割り当てて、「100÷10」で10万円を配ったとします。
今度は一人10万円でも問題ないということで、100万円すべてを従業員に配ることを決めました。このような時に、「会社の利益を全従業員に分配する」などのように言うわけです。
「分配」は、「分(わ)けて配(くば)る」と書きます。すなわち、何かを分けるという行為自体に重きが置かれた言葉ということです。
なお、「分配」は英語だと「distribution」と言います。
配分と分配の違い
ここまでの内容を整理すると、
「配分」=割り当てて配ること。(配ったときの割合)
「分配」=分けて配ること。(分ける行為)
ということでした。
つまり両者の違いを簡潔に言うと、「配分」は割合に重点が置かれた言葉、「分配」は分けるという行為に重点が置かれた言葉ということです。
「配分」は割り当てて配られた量なので、その与えられた量や割合、程度などのことを表します。一方で、「分配」の方は分けて配ることなので、お金や利益などを分けて配るという行為の部分を表します。
分かりやすい例で比較してみると、例えば、40個のケーキを4人に分け与えるとします。
A→10個 B→10個 C→10個 D→10個
この時に分け与えられたケーキの分量(10個)を「配分」と言います。対して、40個を10個ずつ4つに分けるという一連の行為のことを「分配」と言うのです。
以上の事から考えますと、「分配した結果、配分が決定される」と言うこともできます。
「分配」というのは行為を表すものなので、物事を分けるという過程の部分です。対して、「配分」の方は過程によって生み出された結果なので分配よりも配分の方が後に決定されるのです。
なお、「配分」の方は場合によっては名詞ではなく動詞として使うこともあります。
- 株と現金を2対1に配分する。
- 資源ごみと粗大ごみを配分する。
この場合は、「配分する」という動詞の前に、配分割合や配分内容などが付くのが特徴です。
本来は名詞として使うものですので、動詞として使う場合はこのように詳細を付け加えて用います。
同じく、「分配」の方も動詞ではなく名詞として使うこともあります。
- 分配金が配られる。
- 分配方法を決める。
どちらも名詞、動詞として使うことができますが、「配分」の方は「割合を考えて分けること」、「分配」の方は「全体を均等に分ける」という意味で使うことが多いです。
そのため、「比例配分」とは言いますが「比例分配」とは言いません。
なぜなら、比例というのは数字が増えていけば増えていくほどその分量も増えていくことであり、均等に分けることではないからです。
また、利益を分けるような場合でも、均等に分けるのであれば「分配」、個々の割合によって分けるのであれば「配分」を使うことが多いです。
ただし、これはあくまで慣習的なものであり、絶対的な使い分けとなっているわけではありません。
多くの場合は、「割合」か「行為」のどちらに重点を置くかという観点で使い分けされているのが実情です。
経済学における違い
「分配」と「配分」は、経済学の用語としても用いられている言葉です。経済学の中で用いられる場合は、また意味や使い分けが異なってきます。
まず、「配分」はお金以外の財を分ける時に使います。対して、「分配」の方はお金そのものを分ける時に使います。
例えば、マクロ経済に出てくる政府の役割として、景気の調整に財政政策が行われることがあります。財政政策では、道路などをつくる公共事業を行い、最適な数、最適な量の道路をつくらなければいけません。
このような時に、「公共財(ここでいう道路)の最適配分を決める」などと言うわけです。当然、道路はお金以外の財ということで「配分」の方を使うことになります。
一方で、「分配」の方はお金のみに対して使います。
例えば、「所得の再分配」という言い方がありますが、これは「所得を均等に分ける」という意味の経済用語です。
大企業や所得の多い高額所得者などに多くの税金をかけ、それを社会保障給付などで所得の低い人にも分けることを表します。
生活保護などもこの「所得の再分配」に該当します。「所得の再分配」は、「所得の再配分」とは言わないので注意してください。
使い方・例文
最後に、「配分」と「分配」の使い方を実際の例文で確認しておきます。
【配分の使い方】
- 政府は今年度の予算の配分を見直すことを決めた。
- 効率的に進められるように、仕事の配分表が従業員に配られた。
- 無計画で始めるのではなく、時間配分を考えてから行動すべきだ。
- 株の配当金を受け取る方式を、株式数比例配分方式に決定した。
- ミクロ経済学の観点から、合理的な資源の配分を研究する。
【分配の使い方】
- 大量にもらったお米を人数分ずつ等しく分配する。
- 残ったお金は私たちの間で公平に分配するつもりです。
- 企業の利益は配当金として等しく投資家に分配される予定だ。
- 投資信託の収益から投資家に還元するお金を分配金と呼ぶ。
- 政府では所得の再分配が必要かどうかという議論がなされた。
例文のように、「配分」の方は主に「名詞」として使われていることが分かるかと思います。一方で、「分配」の方は主に「動詞」として使われていることが分かるかと思います。
どちらも一応は名詞、動詞の両方で使うことができます。ただ、「配分」は「量や程度などの割合」を重視し、「分配」は「均等に分けること」を重視する時に使われることが多いです。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「配分」=割り当てて配ること。(分けた割合に焦点が当てられた言葉)
「分配」=分けて配ること。(分ける行為に焦点が当てられた言葉)
「違い」=「配分」は「割合を考えて分けること」、「分配」は「全体を均等に分ける」という意味で使うことが多い。その他、経済用語として使う場合は、「配分」は「お金以外のもの」、「分配」は「お金のみ」に対して使う。
「配分」と「分配」は、似たような意味を持っています。ただ、基本的な使い方は異なりますので、ぜひそれぞれの正しい意味を理解して頂ければと思います。