所有 保有 違い 所持 意味 使い分け

何かを手に入れて持つことを「所有」あるいは「保有」と言います。また、場合によっては「所持」と言ったりもします。

これらの言葉はどう使い分ければよいのでしょうか?今回は、「所有」と「保有」の違い、さらに「所持」についても解説しました。

所有の意味

 

まずは、「所有」の意味からです。

【所有(しょゆう)】

自分のものとして持っていること。また、そのもの。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

所有」とは「(形のあるものを)自分のものとして持っていること」を意味します。多くは財産的に価値のあるものに対して使われます。

【例】

  • 車を所有する。
  • 土地を所有する。
  • 時計を所有する。

「所有」する対象は大小を問いませんが、財産的でないものには使いません。例えば、「ジュースを1本だけ所有する。」のような使い方は誤用です。

また、「所有」は基本的に長く持つことが前提なので、所有した後にむやみやたらにすぐ売ったり貸したりはしません。

さらに、形のあるものに使うという点も重要なポイントです。例えば、家や土地、車、時計などの財産はすべて姿や形があります。

このように、目に見えるような具体的なものを持つときに「所有」を使うことになります。

「所有」は「自分の(ゆう)する」と書きます。したがって、自分の所に具体的なものがあり、自由に使える状態にするような行為を表すわけです。

保有の意味

 

続いて、「保有」の意味です。

【保有(ほゆう)】

自分のものとして持っていること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

保有」とは「(形のないものを)自分のものとして持っていること」を意味します。例えば、以下のような使い方をします。

【例】

  • 株式を保有する。
  • 権利を保有する。
  • 資格を保有する。

「保有」は手放すまで一時的に持っているような場合に使います。株式などは分かりやすい例でしょう。

ずっと株を持っていて売らない人などはいないですよね。また、権利や資格なども将来的に剥奪されることもあります。

さらに、「保有」は形のないものに使うのも特徴です。株式などは今は電子取引ですので、実際には形があるものではありません。

権利や資格なども何か具体的な形があるわけではないです。このように、目に見えないような対象を持つときに「保有」を使うわけです。

「保有」の語源も確認しておくと、「保有」=「ってる」と書きます。したがって、手放す前提のものを「一時的に保っている」というのが本来の意味であることが分かるかと思います。

所有と保有の違い

所有 保有 違い 使い分け

以上の事から、形のあるものを長期的に持つのが「所有」で、形のないものを一時的に持つのが「保有」ということになります。

「所有」は、形のあるものを将来的に長い間持ち続けます。したがって、今も将来も持ち続けて自分のものにするような際に使うことになります。

よく法律用語で「所有権」という言葉が出てきますが、まさにこれは「所有」の役割を表したものだと言えます。

対して、「保有」の方は形のないものを「一時的に持っている」あるいは「現在は持っている」というニュアンスが強い言葉です。

そのため、仮に保有していたとしても常に売買や貸借の対象となり、売却や返却・処分などによって手元からなくなる可能性があります。

これらの説明から両者を比較してみると、「友人から借りたバッグを保有する」とは言いますが、「友人から借りたバッグを所有する」とは言いません。なぜなら、後者の方だと「長期的にずっと持つこと(勝手に自分のモノにすること)」になりかねないからです。

また、「所有権」という法律用語はありますが、「保有権」という法律用語は存在しません。なぜなら、「一時的に持っていられる権利」などあっても使い道がないからです。

所持の意味

 

似たような言葉で、「所持」もあります。

【所持(しょじ)】

身につけて持っていること。

法律で、物を事実上支配していると認められる状態。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

所持」とは「身につけて持っていること」を意味します。

【例】

  • 時計を所持する。
  • アクセサリーを所持する。

「所持」は「所有」と同様に、形のあるものに使うことができます。この時点で形のないものに使う「保有」とは異なる言葉であることが分かるかと思います。

そして、「所持」と「所有」の違いですが、人とモノとの距離によって使い分けるのが適切です。

「所持」は、人とモノとの距離が限りなくゼロの時に使います。言い換えれば、実際に肌身離さず持っているような時に使うということです。

逆に、「所有」の方は人とモノの距離が離れているような時でも使います。そのため、少しまぎらわしいのですが、土地や車は手で持つことができないので「所持」とは言いません。この場合は、「所有」と言います。

一方で、ペンや帽子など手で持って身に着けることができるものは「所持」を使います。ちなみに、パソコンやお金などは、手に持っていたりカバンに入っていたりすれば「所持」になりますが、家に置いてあれば「所有」となります。

使い方・例文

 

最後に、それぞれの使い方を具体的な例文で紹介しておきます。

【所有の使い方】

  1. この時計は父が所有する品である。
  2. 彼はお金持ちなので高級外車を所有している。
  3. 東京ドーム1個分の広大な土地を所有する。
  4. 彼女はクレジットカードを10枚所有している。
  5. 不動産の所有権について登記簿で確認した。

【保有の使い方】

  1. 株式を1000株ほど保有しているので、配当をもらう。
  2. 国民は「職業選択の自由」という権利を保有している。
  3. 著作権を保有しているテレビ局から通達が来た。
  4. 核兵器を保有する国として、A国が認定された。
  5. 個人投資家が保有している資産は上昇傾向にある。

【所持の使い方】

  1. スマホを所持して出かける。
  2. ボールペンを所持してくるように。
  3. 大金を所持しているので、気を付けなさい。
  4. 入場時に所持品をすべて検査された。
  5. 麻薬を所持している疑いで逮捕された。

 

補足すると、核兵器など国が持つ兵器に関しては「保有」を使うことが多いです。これは「形のある・なし」などの条件には当てはまらないので例外と考えて下さい。

個人ではなく、国家や政府など公の機関が主語になる時はこのように「保有」を使うようにします。

まとめ

 

以上、本記事のまとめとなります。

所有」=長期的に持つこと。保有」=一時的に持つこと。

所持」=身につけて持つこと。

違い」⇒「所有」は形のあるものに使い、「保有」は形のないものに使う。「所持」は実際に肌身離さず持っているような時に使う。

どれも「持つこと」を表した言葉ですが、それぞれの使い方は異なります。ぜひ正しい意味を理解した上で、使い分けて頂ければと思います。