「聖人君子」と呼ばれる四字熟語があります。中国由来のものですが、普段の生活やビジネスなどでもよく使われています。
この「聖人君子」ですが、そもそも一体誰のことを指しているのでしょうか?もしも男性であれば、女性に対して使ってよいのかも気になる所です。
本記事では、「聖人君子」の意味や読み方、語源、類語、対義語などを詳しく解説しました。
聖人君子の読み方
まず、読み方ですが「聖人君子」は「せいじんくんし」と読みます。「しょうにんくんし」とは読まないので注意してください。
一応、「聖人」は「しょうにん」とも読める漢字ですが、「しょうにん」と読む場合は仏教用語として使うのが特徴です。四字熟語の一部として用いる場合は仏教としての意味は含まれません。
そのため、「聖」は「しょう」とは読まず「せい」と読みます。「聖」は、「聖地」「聖域」などの熟語と同じ読み方だと考えると分かりやすいです。
聖人君子の意味
次に、「聖人君子」の意味です。
【聖人君子(せいじんくんし)】
⇒立派な人徳やすぐれた知識・教養を身につけた理想的な人物。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「聖人君子」とは「立派な人徳があり、すぐれた知識や教養を身につけた人」のことを意味します。「人徳がある」というのは「品行や言動などが非常にすぐれていること」だと考えて下さい。
つまり、普段から立派な言動をしていて周りから尊敬されるほど人柄がよく、なおかつすぐれた知識も身に着けた人を「聖人君子」と呼ぶわけです。
聖人君子である人は、非の打ち所がない理想的な人物を指すため、実際には世の中に数えるほどしか存在しません。歴史上の人物で例えるなら、ブッダやマザーテレサ、ガンジーなどと言った人物でしょうか。
人によってイメージは異なりますが、国や世界のシステムなどを抜本的に変えるような偉大な人物を指すということだけは確かです。
聖人君子の語源・由来
「聖人君子」は中国由来の四字熟語です。
中国では昔から「聖人」のことを「偉大さ・崇高さ・高貴さの三つを兼ね備えた人物」を表していました。また、「君子」に関しても「知識や学識があり、徳が高い人物」を表していました。
どちらも政治的な指導者にふさわしい人物を指していましたが、「聖人」が最も位の高い呼び名で、「君子」はそれに次ぐ呼び名でした。このことから、「聖人」と「君子」を合わせて「非の打ち所がない理想的な人物」を表す四字熟語が生まれたということです。
「聖人君子」は、元々は儒教社会から生まれたものなので、政治や思想などの分野で使われていたという背景があります。しかし、現在ではそこから派生し、「誰もが望む理想的な人物」という意味で幅広い分野で使われています。
なお、「聖人君子」のことを「聖人君主」とするのは誤りです。これはよくある間違いなので注意してください。
「君主」とは「世襲により国家を治める統治者」のことを意味し、簡単に言えば「王」や「皇帝」などのことを指します。
女性の場合はどう使うか?
「聖人君子」は、女性に対しては原則使わない四字熟語です。理由は簡単で、古代中国においては、聖人や君子と呼ばれる立場の人に女性がいなかったためです。
現代の世の中では男女平等が基本ですが、当時は女性の社会進出がなかった時代でした。「男尊女卑(だんそんじょひ)」と言い、男性の方が女性よりも尊重され、優位な立場にある社会だったのです。
今の常識からすると考えられない社会ですが、女性には本来使わなかった言葉なので現代で使うという習慣はありません。そのため、「聖人君子」を使う場合は女性ではなく男性を対象とするのが基本となります。
もしも女性に対して使うような場合は、「聖女(せいじょ)」「淑女(しゅくじょ)」「貞女(ていじょ)」などの言葉で言い換えるのがよいでしょう。
「聖女」とは文字通り「神聖な女性」を指し、多く宗教的なことに生涯を捧げた女性を意味します。また、「淑女」とは「おしとやかで上品な女性。品格の高い女性」のことを意味します。「貞女」とは「夫以外の男性に身や心を許さない女性」のことです。
聖人君子の類義語
「聖人君子」の「類義語」は以下の通りです。
この中では「聖人賢者」が最も意味としては近いです。「聖人君子」は知識と人徳の両方を併せ持つ人なので、そこから派生して「高潔な人・悟りを開いた人」なども広い意味で類義語だと言えます。
聖人君子の反対語
逆に、反対語としては次のような四字熟語が挙げられます。
「聖人君子」の対義語は「人徳がないこと」、すなわち「良心を持たない人」といった意味を持ちます。そこから派生して、「悪さや悪事などをすること」を意味する前者二つの四字熟語が含まれます。
他には、四字熟語以外だと愚かさや頭の悪さを意味する「愚鈍」「低能」なども反対語だと言えるでしょう。
聖人君子の英語訳
「聖人君子」は、英語だと次のように言います。
「saint(聖人・聖者・聖徒)」
「whiter than white(純白な・汚れのない)」
「saint」は「聖人・聖者・聖徒」以外に「君子・立派な人・高徳な人」などの意味がありますが、一般的にはキリスト教の「聖人」を表すことが多いです。
英語では日本語ほど翻訳に神経質になる必要はなく、「saint」という単語一つで「聖人君子」を表すことができます。
また、 「whiter than white」は直訳すると、「白よりも白い」という意味です。白よりも白いのは、何の汚れもないほど純白な様子を意味するので、崇高さや高貴さを意味する聖人君子と訳すことができます。
例文だと、それぞれ以下のような言い方です。
He is like a saint prince.(彼はまるで聖人君子のような人だ。)
She is whiter than white.(彼女は汚れのない人である。)
聖人君子の使い方・例文
「聖人君子」という言葉は、実際の例文ではどう使えばよいのでしょうか?以下に分かりやすい例文を紹介しておきます。
- 彼は聖人君子のような人だ。私たちとは住む世界が違う。
- 孔子の思想は奥が深いね。聖人君子に近いものがあるよ。
- 聖人君子のように立派な考えを持って生きて行くつもりです。
- ここまで周りから尊敬されると、聖人君子にでもなった気分です。
- 社長と言っても聖人君子ではないので、多少のミスはするものだ。
- 浅はかな人間性・知識なので、彼は聖人君子にはなれないだろう。
「聖人君子」は、普通の人では到底なれないような知識・人間性を併せ持った人物を指すということでした。したがって、基本的には相手を褒める場面で使うと考えていいです。
ただ、実際は非常に現実離れした意味を持っているので、「~のような」「~のように」など一種の比喩表現を伴って用いられることが多いです。また、例文5や6のように「~でない」「~にはなれない」など否定を伴って用いられることも多いです。
いずれにせよ、通常の文章の中ではあまり使われないのが「聖人君子」の特徴だと言えます。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「聖人君子」=立派な人徳があり、すぐれた知識や教養を身につけた人。
「語源・由来」=「聖人」は「偉大・崇高・高貴」、「君子」は「知識があり徳が高い人物」。
「類義語」=「聖人賢者・雲中白鶴・名僧知識・高材疾足」
「反対語」=「極悪非道・悪逆無道・蕩児愚人」
「英語訳」=「saint」 「whiter than white」
「聖人君子」と呼ばれる人は、今の世の中には少ないかもしれません。しかし、比喩や否定を伴うことにより、一般に使うことができる四字熟語でもあります。この機会にぜひ正しい使い方を理解しておきましょう。