「近代」という言葉は、現代文では頻出の重要単語です。この言葉を一つ知っておくだけで、評論文のテーマ理解が深まると言われています。

ただ、そもそも「近代とはどんな時代」で「いつからいつまで」を指しているのかという疑問があります。そこで本記事では、「近代」の意味や使い方、時代背景などを含め詳しく解説しました。

近代とはいつからいつまでか

 

まず、「近代」の意味を辞書で引くと次のように書かれています。

【近代(きんだい)】

現代に近い時代。また、現代。

歴史の時代区分の一。広義には「近世」と同義であるが、一般には封建制社会のあとの資本主義の社会をいう。日本史では明治維新から太平洋戦争の終結まで、西洋史では市民革命・産業革命からロシア革命までの時代。

※「近代の英語訳」⇒「modern(モダン)」

出典:デジタル大辞泉(小学館)

近代」という時代は、日本とヨーロッパによって意味合いが異なります。

まず「日本」では「明治維新(1868年)から太平洋戦争の終わり(1945年)まで」を指します。

「明治維新」とは、当時は封建社会だった日本が近代化に向けて様々な運動をしたことです。

そして「太平洋戦争」とは簡単に言うと「日本とアメリカが戦った戦争」のことを意味します。

つまり、日本では一般にこの1868年~1945年までの約80年間を「近代」と呼んでいるということです。

一方で、ヨーロッパではどうかというと 「15、16世紀以降~20世紀中頃までの時代」を指します。

ヨーロッパでは、日本ほど時代区分が明確に分けられているわけではありません。

通常は大航海時代や宗教改革などが、ヨーロッパにおける近代の始まりとされています。

ただし、当時のヨーロッパでは様々な封建制度が残っていたため、市民革命(17世紀~)以後を「近代」とする見方もあります。

このあたりは、学者の中でも見解が分かれているようです。

なお、世界の時代区分は大まかに以下のように分けられています。

「原始時代」→「古代」→「中世」→「近世」→「近代」→「現代」

私たちが今生活しているのが「現代」ですから、「近代」は「現代の一つ前の時代」とも言えます。

近代とはどんな時代か?

近代とは 

近代とは、一言で言うと「理性や個人を重視した時代」でした。

まず、時代の流れを簡単にするために「近代」より前の時代を説明します。

「近代(モダン)」より前の時代は、「前近代(プレモダン)」と呼ばれていました。

プレ」は英語で「pre」と書き、「一つ前の・前の」などの意味があります。

すなわち、「モダン」より前の時代なので、「プレモダン」と呼んでいたということです。

「前近代」では、伝統・宗教・神様・自然・村落共同体などを重視する時代でした。

当時は、神様や宗教など非科学的なものを信じるのが当たり前だったのです。

ところが、ヨーロッパで変革が起こります。この変革は一度になされたものではなく、きっかけが複数ありました。

以下は、その主なものです。

  • 黒死病の流行(14世紀頃)
  • ルネサンス(14世紀~16世紀)
  • 宗教改革(16世紀~)
  • 科学革命(16~17世紀)
  • 市民革命(17世紀~19世紀)
  • 産業革命(19世紀~20世紀)

この中でも「黒死病(ペスト)の流行」は、人々に大きな影響を与えました。

当時のヨーロッパの人口の約3分の1もの人が、ペストによって命を落としたと言われています。

このペストにより、今まで神様を信じてきた人々が、次第に世の中に対して疑問を持つようになります。

なぜなら、神に祈っても祈ってもどんどんと人が亡くなっていくからです。

そして、今までは神様や宗教を信じていたのが、近代以降は科学的なものじゃないと信じないという考えに移り変わっていったのです。

例えば、「前近代」では熱を出して寝込んでしまった場合、「もののけが憑(つ)いた」とみなしていました。

「もののけ」とは、人間に憑く悪い霊のことです。もののけを除去するために、実際に神様に祈ったりもしていたのです。

しかし、近代以降は病気への考え方も変わりました。まず近代では人々は病気になった原因の病原菌をつきとめ、それを除去する薬を与えます。

そして、薬によってその病気を治療していくという考え方です。要するに、非科学的な現象は重視しないという時代に移行していったわけです。

その結果、時代は神様や宗教よりも、個人・自由・平等・理性・科学などを重視する時代になったのです。

近代で重視した価値観

近代 個人主義 合理主義

「近代」は、神に代わって個人が主役となった時代でした。

近代より前の時代は、神が絶対的な権力を持っており、人々は自分たちのことを神が作った自然や生き物の一部と認識していました。

そのため、近代の人は「自分が日本人である」とか「自分はイギリス人である」といった「アイデンティティ」は持っていなかったのです。

彼らは「村」や「島」の一員ではありましたが、「国」の一員ではありませんでした。

今では信じられないかもしれませんが、当時は「国家」や「国民」という概念がなかったのです。

近代になり、「国家」が誕生してから「国民」や「個人」という概念が生まれたのです。

そこから、「人間とは一人一人尊厳を持ったかけがえのない存在である」という考えが広まっていきました。

いわゆる、「個人主義」です。

また、個人が科学を勉強すると、「人間は動物とは違い、頭で考えて行動できる生き物だ」という考えも主流になりました。

この考え方が、「合理主義」です。

つまり、「人間は理性を持ったかけがえのない存在である」という結論にいたったわけです。

このように、個人」と「理性」を重視して世の中を発展させていこうという時代が「近代」だったのです。

そのような時代に移ったのは、神が絶対的な価値観を持っていた前近代から、人が中心的な価値観を持つ近代へ移っていったからだと言えます。

一方で、近代で重視した「個人主義」や「合理主義」にもデメリットがあります。

「個人主義」を徹底しすぎると、個人と個人の対立が避けられなくなります。また、世界の全てが合理的に解決できるわけではありません。

世の中には、「理性」ではなく「感性」で解決できることも多いのです。

この辺の主張はどちらもメリット・デメリットがあるため、筆者がどちらを重視しているか判断することが大事になってきます。

文章を読む時は、そういったことも意識しておく必要があると言えます。

近代と現代の違いは?

近代 現代 違い

「近代」と「現代」の違いはどこにあるのでしょうか?

「近代」とは「現代の一つ前の時代」でした。一方で、「現代」とは「我々が生きている時代」です。

したがって、両者の違いは以下のように定義することができます。

  • 日本史の「近代」⇒明治維新(1868年)から終戦(1945年)まで。
  • 世界史の「近代」⇒15世紀以降~20世紀中頃。
  • 日本史の「現代」⇒1945年以降(いわゆる戦後)~現在まで。
  • 世界史の「現代」⇒20世紀中頃以降。

ただし、これはあくまで歴史上の区分であり、明確な区分はないと主張している学者もいます。

近現代」という言葉もある通り、「近代」も「現代」も同じ時代と考えている人もいるのです。

その証拠に、冒頭の辞書の説明でも「近代」=「現代に近い時代。また、現代。」と記述されています。

しかしながら、一般的には1945年で分けるのが主流のようです。

1945年は、日本が敗戦した年です。それまでは大日本帝国憲法により国を統治していましたが、1945年以降は、GHQから与えられた日本国憲法により国を統治するシステムとなっています。

ここが近代と現代の境目というのは比較的分かりやすい見方です。そのため、1945年の終戦以降を現代と考えているわけです。

近代の使い方・例文

 

最後に、「近代」の使い方を実際の例文で紹介しておきます。

  1. 近代以前の中世では、伝統や宗教、神様などを信じる時代だった。
  2. 西欧では、近代世界に入り、理性を重視する時代へと突入した。
  3. 個人や自由、平等という概念は近代世界に入り生まれたものである。
  4. 近代以降のヨーロッパでは、病気への考え方が根本的に変化した。
  5. 近代初期に人々に大きな影響を与えたのが、産業革命と市民革命である。
  6. 現代では前近代にも無視できない考え方があったことが注目されている。

 

「近代」という言葉は、主に現代文の中で登場します。現代文では、「近代論」をテーマとした文章の中で、前後の時代と比較しながら用いられる場合が多いです。

特に「前近代(中世)」との比較はよくされます。その理由は、すでに説明した通り「近代」と「中世」では、それまでの人々の価値観がガラッと変わるほど世の中が大きく変革したからです。

現代文のテーマをしておきたいのであれば、過去の時代の理解もしておくことをおすすめします。「近代」の前後の時代背景については、以下の記事を参照してください。

まとめ

 

以上、本記事のまとめです。

近代」=日本では、明治維新(1868年)から終戦(1945年)まで。世界では、15世紀以降~20世紀中頃。

どんな時代か?」=理性や個人を重視する時代。(宗教中心の価値観から脱却した時代)

近代と現代の境目」=諸説あるが、一般的には1945年で分けることが多い。

近代という歴史の時代背景も解説したので、理解が深まったのではないでしょうか?この記事をきっかけに、現代文のテーマ理解が深まれば幸いです。