「準備万端」という四字熟語があります。
普段からよく使われるので、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。ただ、同時に誤用が多い四字熟語としても知られています。
また、似たような言葉である「準備万全」や「準備満タン」と混同しやすいといった特徴もあります。本記事では、そのような注意点も含め「準備万端」の意味や語源、使い方、類語などを解説しました。
準備万端の読み方・意味
最初に、この言葉の意味を辞書で引いてみます。
【準備万端(じゅんびばんたん)】
⇒諸般の準備、あるいは準備の全て、などの意味の表現。一般的には、準備万端整っているさま、万全の用意ができている状態などを意味するものとして用いられる。
出典:実用日本語表現辞典
「準備万端」は、「じゅんびばんたん」と読みます。「万端」は「まんたん」とは読まず、「ばんたん」と読むので注意してください。
意味は「諸般の準備」あるいは「準備の全て」を表したものです。「諸般(しょはん)」とは、「様々な事柄・色々な事柄」という意味です。
例えば、あなたが旅行に行くとして、持っていく荷物や身に着ける衣服などをすべて用意できたとします。旅行先で泊まるホテルなども予約し、もういつでも出発できるような状態です。
このような場合に、「準備万端、整っています。」などと言うわけです。つまり、「準備万端」とは「様々な事柄を含んだ準備そのもの」を表す四字熟語ということになります。
準備万端の語源・由来
「準備万端」は、「準備」と「万端」の二つに分けることができる四字熟語です。
まず、「準備」とは「前もって備える」という意味です。何かをする前に必要なものをそろえたり、予定通り動けるよう体制を整えたりすることを表します。
そして、「万端」とは「物事についてのあらゆる事柄」という意味です。「万」という字には「万物(ばんぶつ)」「八百万(やおよろず)の神」などの言葉があるように「すべて」という意味が含まれています。
さらに、「端」という字には、「多端」などの言葉があるように「事柄」という意味があります。したがって、「万端」=「あらゆる事柄」という意味になるのです。
以上の事から考えますと、「準備万端」を直訳すると「あらゆる事柄を前もって備えること」となります。転じて、「準備におけるすべて」という意味になるわけです。
準備万端の誤用表現
「準備万端」という四字熟語は、厳密に言うと準備が完了したことを直接示しているものではありません。多くの人が、「準備万端」=「準備完了」の意味で使っていますが、実はこれは誤用なのです。
「準備万端」は、「準備のすべて」のみを表したものです。したがって、後ろに「整う」などの動詞を付けるのが正しい使い方となります。
【正しい使い方(〇)】
- 準備万端整っています。
- 準備万端が整いました。
- 準備万端が整ったのでOKです。
逆に、正しくない使い方としては、この言葉自体で準備が終わっていることを伝えるような文です。
【誤った使い方(×)】
- 準備万端です。出発しましょう。
- 問題ないです。準備万端です。
- 荷物をそろえたので、準備万端です。
上記のように、単に「準備万端です」と言った場合、「準備がすべてです」というよく分からない意味になってしまいます。相手からしても、「だから何?」と聞き返されてしまうのがオチでしょう。
「準備万端」だけでは「準備が完了した」という意味にはならないということを覚えておいてください。
準備万端の類義語
続いて、「準備万端」の「類義語」を紹介します。
「準備万端」を言い換えた表現はいくつかありますが、「用意万端」と「諸事万端」はほぼ同じ意味です。したがって、この二つは「準備万端」の同義語だと考えてよいでしょう。
また、「用意周到」と「準備万全」も似たような意味ですが、これらは「すでに用意や準備が完了したこと」を表す四字熟語です。会話などで使う際は、「用意周到です。」「準備万全です。」などのように使うことができます。
この点で、また準備が完了していないことを表す「準備万端」とは意味が異なる四字熟語です。
その他、ことわざや慣用句的な表現だと、「抜け目がない」「そつがない」なども類義語に含まれます。一般的な言い方だと、「万全の準備」「万全の体制」「万全の備え」などもよく用いられます。
なお、冒頭で紹介した「準備満タン」という言葉は誤用なので注意してください。このような言葉は実際には存在しません。
「準備満タン」は、「準備万端」と「満タン」が混ざってしまった誤記です。「満タン」という言葉自体は、「レギュラー満タン」などのように燃料を満杯に入れる際に使われる言葉となります。
準備万端の対義語
「準備万端」の「対義語」は、「準備不足(じゅんびぶそく)」です。文字通り、「準備が不足しているような状態」を表すような時に使います。
「万端」とは「すべての事柄」を表すので、「すべてが揃っていない事柄」すなわち「部分的に不足している事柄」を意味する四字熟語となります。他には、「用意不足」「計画不足」なども反対語に含まれます。
準備万端の英語訳
「準備万端」は、英語だと次のように言います。
- 「I am all ready.」(準備万端、問題ないです。)
- 「Everything is in order.」(準備万端、整っています)
- 「Things are all set.」(準備万端、整った。)
「ready」には、「準備ができて・用意ができて」などの意味があります。この「ready」に「all」をつけて強調することで、「すべて準備ができていている」という訳になります。
また、「in order」は熟語で「整った・秩序立った」という意味です。物事がちゃんと整った状態を表す時に使う表現なので、「すべてが整った」⇒「準備万端」と訳すことができます。
最後の文は、直訳すると「事が完了された」という意味です。「set」には、「打ち付ける・設置する」などの訳があり、ここでは「完了する」という意味で使われています。
他には、「All the preparations are completed.」などの表現も可能です。意味としては、「すべての準備は完了された」ということです。
準備万端の使い方・例文
最後に、「準備万端」の使い方を例文で確認しておきます。
- 準備万端整った。ようやくこれで出発できます。
- 準備万端怠らないつもりで仕事に取り組むつもりです。
- 明日の試験に向けて、準備万端整えておくように。
- 皆が到着した時には、彼はすでに準備万端整っていた。
- まだ準備万端整っていないので、もう少し待ってください。
- あいつは万一の事に備えて準備万端整えているに違いない。
例文のように、「準備万端」は、「整える」「怠らない」などの動詞を補うことにより使います。後ろに動詞を付けずに、「準備万端です」のようには使いません。
もしも後ろに動詞が来ない使い方をする場合は、「準備万全です」のように言い換えるのが適切です。特に、ビジネスなどで相手に要件を伝える際は、この「準備万全です」という言い方は非常に便利です。
なぜなら、「準備は万端です。整いました」などと言うよりも、一言「準備万全です」と言った方が簡潔で分かりやすいからです。
「準備万端」という四字熟語は多くの用途がありますが、ビジネスにおいては必ずしもこの四字熟語を使う必要はないと考えて下さい。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「準備万端(じゅんびばんたん)」=諸般の準備・準備の全て。
「語源・由来」=「あらゆる事柄を前もって備えること」から。
「類義語」=「用意万端・諸事万端・用意周到・準備万全」
「対義語」=「準備不足・用意不足・計画不足」
「英語訳」=「I am all ready.」「Everything is in order.」「Things are all set.」
「準備万端」のように、誤用されやすい四字熟語は世の中に多くあります。この機会にぜひ正しい使い方を整理しておきましょう。