『夢十夜(ゆめじゅうや)』は、夏目漱石の作品として非常に有名です。学校の教科書などでもよく取りあげられ、定期テストの問題としても主題されています。
ただ、作中に出てくる語句は辞書に載っていないものも多く読解する上で分かりにくいものもあります。そこで今回は、『夢十夜』に登場する言葉の意味を、第一夜~第十夜まで含め一覧にしてまとめました。
第一夜の言葉一覧
【腕組(うでぐみ)】⇒両方の腕を胸の前で組むこと。傍観する時や考えこむ時などにする動作。
【仰向け(あおむけ)】⇒顔の表面を上に向けること。
【輪郭(りんかく)】⇒物の外形を形づくっている線。
【瓜実顔(うりざねがお)】⇒瓜の種に似て、色白・中高で、やや面長 (おもなが)な顔。古くから美人の一典型とされた。
【ほどよく】⇒ちょうど良い具合に。
【無論(むろん)】⇒もちろん。言うまでもなく。
【とうてい】⇒どうやってみても。どうしても。(後に打消しの語を伴う)
【潤い(うるおい)】⇒適度に水分を含むこと。
【つや】⇒なめらかで張りがあり美しいこと。
【ねんごろ(懇ろ)】⇒心がこもっているさま。親身であるさま。
【みはる(瞠る)】⇒目を大きく開いて見る。
【一心(いっしん)】⇒心を一つの事に集中すること。専念。
【真珠貝(しんじゅがい)】⇒アコヤガイの別名。真珠養殖の母貝に用いられる。
【墓標(はかじるし)】⇒埋葬箇所に建てる目印の石や木の柱。
【縁(ふち)】⇒物の端の部分。
【勘定(かんじょう)】⇒物の数量または金銭を数えること。
【唐紅(からくれない)】⇒鮮やかな濃い紅の色。
【天道(てんとう)】⇒太陽。
【のそりと】⇒動作が鈍くて遅いさま。
【斜(はす)】⇒ななめ。
【百合(ゆり)】⇒ユリ科ユリ属の多年草の総称。
【滴る(したたる)】⇒水などがしずくになって垂れ落ちる。
【接吻(せっぷん)】⇒くちづけ。キス。
【拍子(ひょうし)】⇒ちょうどその時。とたん。
【暁(あかつき)】⇒夜明け。明け方。太陽の昇る前のほの暗い頃。
【瞬く(またたく)】⇒光が明るくなったり暗くなったりすること。
第二夜の言葉一覧
【和尚(おしょう)】⇒僧侶。寺の住職。
【行灯(あんどう)】⇒小型の照明器具の一つ。ろうそくや油脂を燃料とした炎を光源とする。
【灯心(とうしん)】⇒行灯 (あんどう) ・ランプなどの芯。灯油に浸して火をともすひも状のもの。
【丁子(ちょうじ)】⇒フトモモ科の常緑高木。芳香があり、葉は楕円形で両端がとがっている。
【朱塗(しゅぬり)】⇒朱色に塗ること。また、塗ったもの。※「朱色」黄色みを帯びた赤色。
【蕪村(ぶそん)】⇒与謝蕪村(よさぶそん)のこと。江戸中期の俳人・画家。
【襖(ふすま)】⇒木で骨組みを作り、両面に紙または布を張った建具。
【遠近(おちこち)】⇒あちらこちら。
【漁夫(ぎょふ)】⇒漁業に従事する者。漁師。
【笠(かさ)】⇒日光や雨、雪などが当たらないように頭にかぶるもの。
【海中文殊(かいちゅうもんじゅ)】⇒智慧(ちえ)を象徴する菩薩(ぼさつ)。菩薩とは仏の位の次にあり、悟りを求め、衆生を救うために多くの修行を重ねる者。
【軸(じく)】⇒掛け物。掛け軸。
【線香(せんこう)】⇒香料の粉を松やになどで練り固めて線状にしたもの。火をつけて仏前に供える。
【森閑(しんかん)】⇒物音一つせず、静まりかえっているさま。
【立膝(たてひざ)】⇒片ひざを立てて座ること。
【悟る(さとる)】⇒迷いや煩悩 などをなくし、永遠の真理を会得する。
【口惜しい(くちおしい)】⇒くやしい。
【自刃(じじん)】⇒刀物で自分の生命を絶つこと。
【朱鞘(しゅざや)】⇒刀のさやで朱塗りのもの。
【短刀(たんとう)】⇒短い刀。
【束(つか)】⇒梁 (はり) の上や床下などに立てる短い柱。
【鞘(さや)】⇒刀の刀身部分を納めておく筒。
【切先(きっさき)】⇒刀身の最先端、横手筋より先の部分のこと。
【殺気(さっき)】⇒人を殺そうとする気配。
【籠める(こめる)】⇒ある感情や気持ちを注ぎ入れる。
【無念(むねん)】⇒くやしいこと。また、そのさま。
【九寸五分(くすんごぶ)】⇒刃の部分の長さが9寸5分(約29センチ)の短刀。
【やむをえず】⇒しかたがなく。どうしようもなく。
【たちまち】⇒すぐ。即刻。
【全伽(ぜんが)】⇒禅宗の座り方の一種。両方の足を互いの太ももに乗せる姿勢。
【趙州(じょうしゅう)】⇒中国唐代の禅僧。
【はがみ(歯噛み)】⇒歯ぎしり。怒りや悔しさから歯をかみしめて音を立てること。
【こめかみ】⇒目と耳のつけ根のほぼ中間にある場所。
【懸物(かけもの)】⇒掛軸。書画を軸物に表装し、床の間・壁などに掛けて飾りとするもの。
【薬缶頭(やかんあたま)】⇒はげて薬缶のようにつるつるになった頭。はげあたま。
【鰐口(わにぐち)】⇒人の横に広い口をばかにして言う語。
【嘲笑う(あざわらう)】⇒ばかにして笑う。
【怪しからん(けしからん)】⇒道理にはずれていて、はなはだよくない。
【ほろほろ】⇒静かにこぼれ落ちるさま。
【一思い(ひとおもい)】⇒たった一度の苦しい思い。
【忍ぶ(しのぶ)】⇒耐える。じっとこらえる。
【残刻(ざんこく)】⇒残酷。無慈悲でむごたらしいこと。
【違い棚(ちがいだな)】⇒床の間の脇にある棚で、二枚の棚板を左右食い違いに取り付けたもの。
【現前(げんぜん)】⇒目の前に現れること。
【忽然(こつぜん)】⇒物事の出現・消失が急なさま。
【座敷(ざしき)】⇒畳を敷きつめた部屋。特に、客間。
第三夜の言葉一覧
【青坊主(あおぼうず)】⇒髪の毛を剃った青々とした頭。丸刈りにした頭。
【相違ない(そういない)】⇒間違いない。確実である。
【鷺(さぎ)】⇒コウノトリ目サギ科の鳥の総称。くちばし・くび・脚が長い特徴を持つ。
【打っ遣る(うっちゃる)】⇒投げ捨てる。
【井守(いもり)】⇒有尾目イモリ科の両生類。
【躊躇(ちゅうちょ)】⇒ためらうこと。あれこれと迷い、決心できないこと。
【盲目(めくら)】⇒目の見えないこと。
【一筋道(ひとすじみち)】⇒分かれ道のないただ一筋の道路。一本道。
【嘲る(あざける)】⇒ばかにして悪く言ったり笑ったりする。
【寸分(すんぶん)】⇒少し。わずか。
【這ひ入る(はいいる)】⇒這って中へ入る。手足を地面につけて入る。
【一間(いっけん)】⇒尺貫法の長さの単位。1間は通常6尺(約1.82メートル)の長さ。
第四夜の言葉一覧
【涼み台(すずみだい)】⇒暑さをしのぐために、軒先などに置いた腰掛け台。
【将棋(しょうぎ)】⇒盤上に各20枚の駒を並べて戦う遊戯の一つ。
【煮染め(にしめ)】⇒濃いめの味で、野菜や干物などをじっくり煮上げたもの。
【ありたけ】⇒ありったけ。あるだけ全部。
【筧(かけひ)】⇒地上にかけ渡して水を導く、竹や木の樋 (とい)。
【かみさん】⇒商人・職人などの妻。また、その家の女主人。
【前垂れ(まえだれ)】⇒前掛(まえかけ)。衣服の前面、特に腰から下を覆うひも付きの布。エプロン。
【瓢箪(ひょうたん)】⇒ウリ科の蔓性 (つるせい)の一年草。
【浅黄(あさぎ)】⇒薄い黄色。淡黄色。
【股引(ももひき)】⇒脚に合わせて仕立て、腰と足首とをひもで締める形にした木綿地の仕事着。
【袖無し(そでなし)】⇒袖のついていない衣服。
【足袋(たび)】⇒和装の際に足にはく袋状の履き物。
【柳(やなぎ)】⇒ヤナギ科ヤナギ属の落葉樹。低木または高木で街路樹や庭園樹などにされる。
【手拭い(てぬぐい)】⇒手や顔、体などをふき、ぬぐうための布。
【かんじんより】⇒和紙を細く切り、指先でよって糸のようにし、それをさらに2本より合わせたもの。
【真鍮(しんちゅう)】⇒銅と亜鉛との合金。
【草鞋(わらじ)】⇒わらで編んだ草履状(ぞうりじょう)の履物。
【爪立てる(つまだてる)】⇒つま先で立つようにする。
【抜足(ぬきあし)】⇒音を立てないように、足をそっと抜き上げるようにして歩くこと。
【頭巾(ずきん)】⇒頭や顔を覆う布製のかぶりもの。
【葦(あし)】⇒イネ科の多年草。根茎は地中をはい、沼や川の岸に大群落をつくる。高さは2~3メートルになる。
第五夜の言葉一覧
【神代(かみよ)】⇒神が治めていたという時代。日本神話では神武天皇の前までの時代。
【戦(いくさ)】⇒「戦い・戦争」のやや古風な言い方。
【いけどり】⇒生け捕ること。また、その捕らえた人や動物。
【引据える(ひきすえる)】⇒つかまえて、その場に座らせる。
【藤蔓(ふじづる)】⇒藤のつる。藤とはマメ科の落葉低木。
【漆(うるし)】⇒ウルシの樹液に油・着色剤などを加えて作った塗料。
【素朴(そぼく)】⇒自然のままに近く、あまり手の加えられていないこと。
【酒甕(さかがめ)】⇒酒を貯蔵するかめ。
【虜(とりこ)】⇒生け捕りにした敵。捕虜。
【腰を掛ける(こしをかける)】⇒物の上に尻をおろす。
【胡床(あぐら)】⇒両ひざを左右に開き、両足を組んで座ること。
【わらぐつ】⇒わらを編んで作ったくつ。
【篝火(かがりび)】⇒夜間の警護・照明や漁猟などのためにたく火。
【習慣(しゅうかん) 】⇒長い間繰り返し行う内に、そうするのがきまりのようになったこと。
【屈伏(くっぷく)】⇒相手の強さや勢いに負けて従うこと。
【楓(かえで)】⇒カエデ科カエデ属の落葉高木の総称。
【掌(たなごころ)】⇒てのひら。手の裏。
【狼狽える(うろたえる)】⇒驚いたり慌てたりして取り乱す。
【勇ましい(いさましい)】⇒勇敢なさま。意気が盛んで勢いがあるさま。
【鞍(くら)】⇒人が乗りやすいように牛・馬などの背に置く具。
【鐙(あぶみ)】⇒馬具の一。鞍 (くら)の両脇につるして、乗り手が足を踏みかけるもの。
【裸馬(はだかうま)】⇒鞍 (くら) を置いてない馬。
【いっさんに(一散に)】⇒いちもくさんに。わき目もふらずに走るさま。
【しきりなしに】⇒切れ目なく続くさま。絶え間のないさま。
【蹄(ひづめ)】⇒馬や牛などの足先にある堅い角質のつめ。
【篝(かがり)】⇒かがり火。鉄製のかごを用いて燃やす火。
【空様(そらざま)】⇒空の方向。上の方。上向き。
【発止と(はっしと)】⇒堅い物同士がぶつかるさま。
【諸膝(もろひざ)】⇒左右の膝。りょうひざ。
【のめる】⇒からだが前に倒れる。
【淵(ふち)】⇒底が深く水がよどんでいる所。
【あまのじゃく】⇒民間説話に出てくる悪い鬼。物まねがうまく、他人の心を探るのに長じる。