「私」中心の日本語は、森田良行による評論文です。高校教科書・論理国語においても学習します。
ただ、本文を読むとその内容が分かりにくいと感じる人も多いと思われます。そこで今回は、「私」中心の日本語のあらすじや要約、テスト問題などを解説しました。
「私」中心の日本語のあらすじ
①日本語では、「私、あなた、彼、彼女」などの代名詞があり、とくに自分自身を指す言葉が数多くある。外国人からすると驚くほど人称に関する語彙が豊かだが、なぜそうなのだろうか?
②日本人は、話者自身を指す「私」の視点で周りの事物や人物を捉え、常に己との関係で自分を取り巻く対象を把握する。古代社会においては、「私」とは「公」に対する概念で、社会を、己を中心に据えたうえでの”他人との関係”として捉えていた。「私」は「公」(世の中・人々)の中の一員ではなく、「人」は私から見て対立的に捉えられた”他人”を意味する。
③「世間」や「人」は、自分を取り巻く周囲の人々を呼ぶ言葉で、他人の意味で使われる。日本語の「人」を含む表現には、他人に見られていることへの神経質なまでの意識や受動的な態度が見られる。これは、「世の中」「世間」対「己」の関係における受けの姿勢、受けの視点の現れだろう。
④日本語の「人」はほとんどが、”己の目で捉える他人”の意味である。慣用的な句から複合語に至るまで、日本語の「人」には、その対象たる人物(他人)を見る”人の目”が常につきまとっている。
「私」中心の日本語の要約&本文解説
本文は、その内容から四つの段落に分けることができます。まず第一段落では、日本語は人称に関する語彙が豊富であることが述べられています。
例えば、自分自身を指す言葉だけでも「僕、おれ、わたし、わし、あたし、拙者」など実に多くの語彙が使われています。これはなぜなのか?ということを読者に問題提起しています。
次の第二段落以降では、その理由について述べられています。
日本人は、「私」の視点で周りの物事をとらえて、常に己との関係で自分を取り巻く対象を把握します。例えば、相手や周囲との関係によって「私」と「あなた」になったり、あるいは「俺」と「お前」になったりといったように、様々な人称の使い分けをしています。
また、古代社会では、「私」は「公」に対立する言葉であり、社会を「私」中心に捉えた上で、「他人との関係」として捉えていました。このような歴史的な背景も関係しているのではと筆者は考察しています。
第三段落では、日本人は「人」を「他人」の意味として使うことが多いという内容が述べられています。「人目に立つ」「人目につく」などの「人」は、まさに「他人」を意味する慣用句として使われています。
これは日本人が持つ、他人に見られていることへの神経質なまでの意識と受動的な態度によるものなのではと筆者は分析しています。
第四段落では、最終的な筆者の結論が述べられています。
日本語の「人」は、ほとんどが「己の目で見る他人」の意味であること、そして日本語の「人」には、その対象である人物を見る「人の目」が常につきまとっている。という内容で締めくくられています。
全体を通した筆者の主張としては、最後の一文に集約されています。つまり、日本語の「人」には、その対象である人物(他人)を見る”人の目”が常につきまとっている。という箇所です。
ポイントは、日本語というのは「私」中心の世界観を持つ言語だということです。
本文では、日本語は、「私」と「公」、「私」と「世間」、「私」と「世の中」などのように、常に「私」中心の考え方を持つことが述べられています。
そのため、世間や世の中は私に対してどのような影響を持つのか、私は他人からどう見られているのかといったことを日本人は気にし、受動的な態度を表すということが述べられています。
日本語が「私」中心の考え方を持つ言語だからこそ、日本語の「人」には、その対象を見る”人の目”が常につきまとっているということを筆者は結論付けているのです。
「私」中心の日本語のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①日本語からハセイした言葉。
②世の中をハアクする。
③国家をトウチする。
④ドロボウを捕まえる。
⑤当意ソクミョウに答える。
⑥ハクジョウな性格を直す。
⑦相手とスモウをとる。
①「後にそれによって統治される国家・社会をさすようになった。」
②「今日「公務」「公職」「公用」「公立」と使うあの「公」がそれで、」
とあるが、①と②の「それ」は何を指すか?
まとめ
今回は、「私」中心の日本語について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。なお、本文中の重要語句については以下の記事でまとめています。