教科書や参考書などを読む際に、「通読」という言葉がよく使われます。さらに、場合によっては「精読」が使われることもあります。
どちらも似たような場面で目にしますが、違いはどこにあるのでしょうか?本記事では、「通読」と「精読」の使い方、類義語・英語訳などを解説しました。
通読の意味・読み方
まずは、「通読」の意味からです。
【通読(つうどく)】
⇒始めから終わりまで読み通すこと。また、ひととおり目を通すこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「通読」とは「初めから終わりまで読み通すこと」を意味します。
例えば、教科書であれば一ページ目から最後のページまで読むことは「通読」です。また、会議の資料であれば、事前に一通りの内容に目を通すことも「通読」です。
このように、文章や資料などを最初から最後まで読むことを「通読」と言うわけです。
漢字の成り立ちを確認しておくと、「通読」は「通して読む」と書きます。すなわち、「ひととおり目を通す」ということです。
そのため、全体を通して最後まで読み通すような際にこの言葉を使うことになります。
精読の意味・読み方
続いて、「精読」の意味です。
【精読(せいどく)】
⇒細かいところまで、ていねいに読むこと。熟読。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「精読」とは「細かい所まで丁寧に読むこと」を意味します。
例えば、歴史の教科書であれば、「1192年に何があったか?」「織田信長は何をしたか?」など細かい所まで暗記して丁寧に読むようなイメージです。
また、会議の資料であれば、「今月は一万台の受注を増やす」「物販の手配を18時までに進める」などこちらも細かい所まで目を通すようなイメージです。
このように、細部までしっかりと丁寧に読むことを「精読」と言うわけです。
「精読」の語源も確認しておくと、「精」は「精巧」「丹精」などがあるように、「対象に対して心を込める」という意味があります。したがって、心を込めてしっかりと文章を読むような時に「精読」を使うことになります。
通読と精読の違い
「通読」=初めから終わりまで読み通すこと。「精読」=細かい所まで丁寧に読むこと。
ということでした。
両者の違いを簡潔に言うと、「読む目的」だと言えるでしょう。
「通読」の方は、全体を通して読むことでした。そのため、読む目的はあくまで全体像を把握するためです。
この時に細かい枝葉の部分を特に覚える必要はありません。とりあえずは、大まかな内容を理解できれば問題ないです。
一方で、「精読」の方は「細かく丁寧に読むこと」でした。したがって、こちらは文章自体を完璧に理解するために読むことになります。
この時に流し読みするということは決して許されません。一文一文を注意して読み、後から「何が書いてあったか?」を他人に説明できるレベルでないといけないです。
まとめると、
「通読」=全体像を理解するために行う。(理解度は7~8割程度でよい)
「精読」=完璧に理解するために行う。(理解度100%が求められる)
となります。
類義語・対義語
それぞれの「類義語」と「対義語」は以下の通りです。
見て分かるように、お互いの言葉同士が反対語となっています。そのため、「通読」の反対語は「精読」であることが分かるかと思います。
補足すると、「味読(みどく)」とは文章を味わいながらよく読むことです。また、「耽読(たんどく)」とは書物を夢中になって読むことです。
どちらも「精読」とは多少異なりますが、「文章をしっかりと読む」という点は共通しています。
基本的なイメージとしては、「通読」は「流し読みする」、「精読」は「熟読する」と覚えるのが一番分かりやすいかと思います。
通読と精読の英語訳
「通読」と「精読」は、英語だと次のように言います。
「through reading(通読)」
「careful reading(精読)」
「through」には「~を通って・通り過ぎて」などの訳があります。したがってこの場合は、「(全体を)通して読むこと」と考えるとよいでしょう。
また、「careful」には「注意深い・入念な」などの意味があるので、こちらは「注意深く読むこと」と考えれば分かりやすいです。
例文だと、それぞれ以下のような言い方をします。
You should get through with reading the book till tomorrow.(明日までにその本を通読しておくように。)
This book is worth careful reading.(この本は精読に値するね。)
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。
【通読の使い方】
- 英語の辞書をとりあえず精読するつもりです。
- キリスト教を知るために、聖書の通読を行う。
- Toeicの勉強は、まず通読することが重要だ。
- 通読と音読を合わせて行うと効果的と言われている。
- ブログの本文が長そうなので、とりあえず通読しよう。
- 通読のトレーニングを積み、1回であらすじを理解できるようになった。
【精読の使い方】
- 東大生から精読の極意を教えてもらった。
- 精読力をつけられる英語の参考書を購入する。
- 精読のやり方を英語の教材を通して学んだ。
- 英語では長文問題を精読できるかが合格の鍵だ。
- 分厚い国語辞典を精読するなんてあいつはすごいな。
- 精読のコツを英語の先生から教えてもらいました。
「通読」と「精読」は、どちらも幅広い文章に対して使うことができます。ただ、実際の用例としては英語に対して使うことが多いです。
特に受験英語などでは、「通読」と「精読」はどちらも重要な概念です。「通読」は全体をさっと読んで目を通すような時、一方で「精読」はじっくりと隅々まで読むような時に求められます。
どちらか一方が欠けても意味がありません。最終的にはどちらの能力も等しく要求されることになります。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「通読」=初めから終わりまで読み通すこと。(全体像を把握するため)
「精読」=細かい所まで丁寧に読むこと。(完璧に理解するため)
「類義語」⇒「一読・目を通す・流し読み」「熟読・味読・耽読」
「英語訳」=「through reading(通読)」「careful reading(精読)」
どちらも語学を学ぶ上で必ず出てくる言葉です。この記事によって、両者の正しい意味を理解して頂ければと思います。