「ともに」という語は、漢字で書く場合とひらがなで書く場合があります。
「両親と共に笑う」「就職とともに結婚した」。さらに、これら以外にも「供に」という表記を目にすることもあります。
ただ、それぞれの使い分けをどう行うのかというのは非常に分かりにくいです。特に、公用文に関してはどれを使えばよいのかという疑問があります。
そこで今回は、「共に」と「ともに」の意味の違い・使い分けを詳しく解説しました。
「共に」か「ともに」か
まず最初に、「ともに」という言葉を辞書で引いてみます。
とも‐に【共に/×倶に】
①一緒にあることをするさま。また、そろって同じ状態であるさま。「父と―行く」「私も兄も―健康だ」
②あることに伴って、別のことが同時に起こるさま。「雪解けと―草木が芽吹く」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「ともに」には、二つの意味があります。一つ目は、「一緒にあることをするさま・そろって同じ状態であるさま」という意味です。
【例文】⇒父と―旅行へいく。私も兄も―健康です。
そして二つ目は、「あることに伴い、別の事が同時に起こるさま」という意味です。
【例文】⇒雪解けと―草木が芽吹く。雨が降り出すと―雷も鳴り響いた。
さらに、「共」という語も辞書で引いてみます。
とも【共】
①同じであること。同一。「コートと共のドレス」「共の生地」
② 一緒。また、同時。「起居を共にした仲」
㋐名詞の上に付いて、一対のものが同類である、また、同じ性質であるという意を表す。「共働き」「共切れ」「共蓋 (ぶた)」
㋑名詞の下に付いて、それが一緒に込められている意を表す。「送料共一〇〇〇円」「付録共五〇〇円」
㋒複数を表す名詞に付いて、それが全部同じ状態であることを表す。「二人共学生だった」「男女共若かった」→共に
出典:デジタル大辞泉(小学館)
以上をまとめますと、「ともに(共に)」は、「一緒に」「同時に」という意味があり、「共」には「同じ」「一緒」「同類」などの意味がある事が分かります。
ただ、「漢字とひらがなのどちらを使うべきか?」という件については辞書では触れられていません。
そのため、一般に使う際には漢字とひらがなのどちらを使っても構わないということになります。言い換えれば、どちらが正しい、どちらが誤りなどの答えはないということです。
公用文での使い分けは?
しかしながら、公用文などの国が作成する文書に関しては別です。公用文については、『公用文における漢字使用等について』という資料が参考になります。
この資料は内閣府が出している公的なものであり、公用文の漢字使用や送り仮名の付け方などについてそのルールが記されています。以下、実際の該当箇所となります。
1 漢字使用について
(2)「常用漢字表」の本表に掲げる音訓によって語を書き表すに当たっては,次の事項に留意する。
キ 次のような語句を,()の中に示した例のように用いるときは,原則として,仮名で書く。
例 ある(その点に問題がある。)
いる(ここに関係者がいる。)
こと(許可しないことがある。)
できる(だれでも利用ができる。)
とおり(次のとおりである。)
とき(事故のときは連絡する。)
ところ(現在のところ差し支えない。)
とも(説明するとともに意見を聞く。)
上記の「とも」は、「同時に」という意味での用例です。つまり、「同時に」という意味で用いる時は、「ともに」はひらがなで書くのが公用文でのルールとなります。
また、その他の資料だと例えば、文部科学省の用字用語例を見ると、次のようにも記載されています。
「共」⇒共倒れ、共に(副詞)、共々(副詞)
「とも」⇒…とともに、今後とも、両方とも
出典:文化庁 新訂公用文の書き表し方の基準
以上の事から、「共倒れ」「共に」「共々」などのように一緒に物事を行うような際には漢字の「共」を用いる事が分かります。
一方で、「~とともに」「今後とも」「両方とも」などのように、同時に物事を行ったり全部同じ状態である事を伝えたりするような際はひらがなの「とも」を用いる事が分かります。
さらに文法的な面から両者を比較すると、「とも(共)」には「共倒れ」のように名詞の前に付く場合と「両方とも」のように名詞の後ろに付く場合があります。
後者の場合は、「今後とも」「両方とも」「親子とも」「公私ともに」などのようにいずれもひらがなでの表記です。したがって、名詞の後ろに付くような場合は「ひらがな」で書くと覚えても構いません。
ただ、これは公用文に限った話ですので、その他の文章の使い分けにまで言及するものではありません。一般的にはその他の文章、例えば新聞記事や小説文、ビジネス文書に関してもこれに倣って使われることが多いです。
「供に」の意味と使い方
同じ読み方をする語で「供に(ともに)」という語があります。
「供に」という語は「共に」という語の当て字です。「当て字」とは漢字本来の意味を無視して作った字が、一般に広まったものを指します。
したがって、「供」という漢字自体に何か深い意味や語源などがあるわけではありません。
「供に」は、人偏(にんべん)を使うことにより、人と一緒である様子を強調していますが、「供に」という漢字しか使えない状況というのはないのです。一般に使う際は「供に」を使う必要性はないと言えます。
これと同じような理由で、「子供」の「供」に関しても無理に使うべき表記とは言えません。
「こども」を「子供」と表記すると、場合によっては「子を供えるとは一体どういうことか?」などと非難されてしまう可能性もあります。そのため、「子ども」や「こども」などと表記されることが多いのです。
「供に」という表記に関しても、「供に」が使える場面ではすべて「共に」を使うことができます。そのため、漢字で書く場合は「共に」一択にするという結論になります。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「共に・ともに」=①一緒にあることをするさま・そろって同じ状態であるさま。②あることに伴い、別の事が同時に起こるさま。
「使い分け」=一般に使う際は漢字とひらがなのどちらでも構わないが、公用文に関しては「一緒に」という意味の場合は「共に」、「同時に」という意味の場合は「ともに」を用いる。その他、名詞の後ろに付くような場合はひらがなを用いる。
「供に」=「共に」の当て字なので、原則として使わない。「供に」が使える場面ではすべて「共に」を使うことができる。
「共に」と「ともに」は、意味自体に違いはありません。ただ、場面によっては使い分けが必要になってきます。特に公用文に関してはルールが定められているのでそれに従うようにしてください。