「てきかく」という言葉は、「的確な判断で~」「適確な措置により~」などのように複数の漢字が使われています。
さらに、似たような漢字の「適格」もあるので、非常に困惑するでしょう。そこで今回は、この「てきかく」の違いや使い分けについて詳しく解説しました。
的確・適確の意味
まず、「てきかく」の意味を調べると次のように書かれています。
【的確/適確(てきかく)】
⇒的 (まと) をはずさないで、まちがいがないこと。また、そのさま。てっかく。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「てきかく」とは「的を外さないで、間違いがないこと」という意味です。
上記のように、「的確」と「適確」は同じ項目として統一されています。言いかえれば、辞書としての意味はどちらもほぼ同じということです。
また、場合によっては以下のような記述をする辞書もあります。
- 的確(適確とも書く)
- 的確(適確と書く向きもある)
- 的確(適確は当て字)
多くの場合、「的確」を先頭に書き、「適確」は後ろ(補助的)に書くことが多いようです。いずれにせよ、共通しているのは「どの辞書も別々には分けられていない」ということです。
では、そもそも同じ意味なのになぜ二つの漢字が記載されているのでしょうか?実は両者には明確な違いがあります。その辺りの詳しい違いを解説していきたいと思います。
的確と適確の違い
両者の語源を確認しておくと、「的確」の方は中国の古典にも見られる漢字です。一方で、「適確」の方は中国の古典には見られません。
つまり、時系列としては「的確」の方が元からあり、後から「適確」が作られたことになります。その証拠に、一部の漢和辞典では「適確」が載っていないものもあります。
「漢和辞典」というのは、国語辞典よりも漢字の意味や成り立ちを正確に記述します。そのため、「適確」の方を載せていないのです。
では、なぜ「適確」という漢字も使われるようになったのかと言いますと、それは「適正確実」「適切確実」を略した形が漢字として広まったからです。
「適正確実」とは「正しく確実であること」、「適切確実」とは「ふさわしく確実であること」という意味です。
どちらも現在の意味である「大事な点を押さえ、間違いがないこと」と比較的内容が近いです。ここから、「適確」が「的確」に近い意味として使われるようになったわけです。
よって、両者の違いを簡単に言うと
「的確」=正式な漢字。「適確」=当て字。
ということになります。
「当て字」とは「漢字本来の意味を無視して作った字が、一般的に広まったもの」です。つまり、両者の違いは意味にあるのではなく漢字の種類にあるということです。
的確と適確の使い分け
以上の事から、両者の使い分けは、原則として「的確」の方を使うということが分かるかと思います。
すでに説明した通り、「的確」の方が正式な漢字ということでした。そのため、現在では新聞やテレビなどのメディアでも「的確」を使うことで統一しています。
したがって、一般的には「的確」の方を使えば何も問題はありません。
ただし、これには例外があり、法令用語として使う場合です。法令用語として使う場合は、「適確」を使う方が望ましいケースもあります。
例えば、「地方自治法」の一文には以下のような記述があります。
普通地方公共団体の長は、条例その他議会の議決を要すべき案件があらたに予算を伴うこととなるものであるときは、必要な予算上の措置が適確に講ぜられる見込みが得られるまでの間は、これを議会に提出してはならない。
出典:地方自治法 第222条第1項
この場合の「適確」は、「(予算上の措置を)具体的かつ明確に」という意味です。すなわち、具体的で分かりやすい予算措置がとられて、初めて「適確に講ずる」ということです。
このように、法令用語としての「てきかく」は、一般用語としての「てきかく」よりも若干意味が異なるため、例外的に「適確」が使われているのです。
なお、「適確」は一般用語として使うこともあります。
- 適確な措置を講じる。
- 適確な任務を行う。
なぜ上記2つに「適確」を使うかと言いますと、法令用語としての意味に近いからです。
「適確」を使うのは「単に間違いがない」だけでなく、「それが正しい方法で行われている」という意味も含む場合です。
そのため、前後の文脈としては「措置」「任務」など「正しい方法」が求められる言葉がくるのです。
適格の意味
似たような言葉で、「適格」があります。
【適格(てきかく)】
⇒資格にかなっていること。必要な資格を十分に備えていること。また、そのさま。てっかく。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「適格」とは「必要な資格を備えていること」を表した言葉です。
ここで言う「資格」とは、英検や簿記などの資格ではなく、「ふさわしいかどうか」という意味だと考えてください。
例えば、Aという人物は頭が良くて統率力があり、部下からも尊敬されているとしましょう。
そんな時、「Aはキャプテンとして適格だ」などと言うわけです。要するに、「キャプテンにふさわしい人物」ということです。
「適格」という言葉は、基本的に人に対して使います。したがって、人以外の幅広い対象に使う「的確/適確」とは異なることがすぐに分かるでしょう。
なお、「適格」の対義語は「欠格」と言います。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。
【的確の使い方】
- 的確な指示を行い、プレイヤーを誘導する。
- 彼女の言いたいことを的確に伝えてください。
- 内容を的確に説明して、相手に理解してもらう。
- まずは状況を的確に把握する必要があるだろう。
- 専門家として、的確な診断を下すことが重要だ。
【適確の使い方】
- テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約等の適確な実施を確保し~【犯罪による収益~(中略)~に関する法律 第1条】
- これらの行為の処罰に関する国際約束の適確な実施を確保するとともに~【放射線を~(中略)~処罰に関する法律 第1条】
- 国土交通大臣は、(中略)公正かつ適確な実施上不適当となったと認めるときは~【建築基準法 第77条】
【適格の使い方】
- 社長に適格な人物が選ばれた。
- 彼はマネージャーとしては不適格だ。
- 教師として適格に欠く言動をとってしまった。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「的確/適確」=大事な点を押さえ、間違いがないこと。
「適格」=必要な資格を備えていること。ふわさしいこと。
【違い】⇒「的確」は正式な漢字だが、「適確」は当て字。
【使い分け】⇒原則として「的確」を使うが、法令文などには「適確」を使う。
一般的な場面では、「的確」を使えば問題ありません。公文書などで使う時も、法令文以外は「的確」を使います。その他、「ふさわしいかどうか」を表す際は「適格」を使うようにしてください。