現代文 旅する本 語句調べ 漢字 定期テスト

高校現代文の教科書で、『旅する本』という小説文を学びます。ただ、実際に本文を読み進めると、話の流れやその内容などが分かりにくいと感じる人も多いと思われます。

そこで今回は、『旅する本』のあらすじや語句の意味、テスト対策などを含め簡単に解説しました。

『旅する本』のあらすじ

 

本作は、行空きによって四つの部分に分けられていますが、内容としては三段落構成と考えます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

①職を失った男と本本はその時代の書物の形に変身しながら、長い時間を人の手から人の手に旅して生きてきた。今、本は職を失った男のもとにたどり着いた。男は本を読み始めた。物語は、リストラで仕事を首になった会社員が主人公だった。同じ境遇にある男は、共感を持って読み進めるようになった。そして、男は本との出会いにより、現実に立ち向かうきっかけと耐える力をもらった。
②愛犬を失った男の子と本男の子は、生まれたときからいっしょに暮らしてきた犬と死別し、悲しみの中にいた。男の子にとって、犬の死は理解することも納得することもできなかった。そんな中、男の子はブランコの上に誰かがおいていった絵本を見つけて開いた。それは一匹の犬の幸福な一生を描いた物語だった。男の子はその本との出会いにより、悲しみを乗り越え新たな出会いへと向かっていくことになる。
③失恋した女と本本は、悲しみにくれる失恋した女を待っていた。女は不実な男に何度も裏切られ、今また同じ苦しみの中にいた。女は街路樹の枝におしゃれに飾られたピンク色の本を見つけた。恋の謎を解き明かす自分だけの物語に魅せられて、女はその本を読み始めた。

『旅する本』の本文解説

 

テーマ解説

本はさまざまな人々により作られ、その時代を反映する形で姿も変えてきました。そんな一冊の本との何気ない出会いから、私たちは心を動かされ、新たな人生へと一歩を踏み出すことがあります。

『旅する本』では、「人」ではなく「本」を主人公にしているのがポイントです。本を主人公にすることで、人生における「本」の意味や存在、役割などが教訓的に描かれています。

まず冒頭では、「本は自分がいつ生まれたのか知らなかった」という一文から始まっています。これは「擬人法」と呼ばれる表現技法です。「擬人法」とは、人でないものをあたかも人のように表現する技法のことです。

つまり、本をまるで生きた人のように扱い、本そのものを視点にした世界が終始描かれているということです。

内容としては「職を失った男と本」「愛犬を失った男の子と本」「失恋した女と本」の3つのシーンが描かれていますが、ここでの「本」は「すべての本」の比喩となっています。そして、一冊の本でも、読む人によってその内容が異なって受け取られる場合もあるという比喩にもなっています。

例えば、同じ本を読むとしても、「その本といつ出会ったのか?」「どのような環境で出会ったのか?」「直前にどのような出来事があったのか?」などによっても、人の受け取られ方は全く異なってきます。

「本」を主人公にすることで、「本」自体の意味や存在について私たちの考え方を広げさせてくれるのが、この小説の大きな特徴と言えるのです。

『旅する本』の漢字・語句ノート

 

【束(つか)】⇒本の厚み。

【通勤ラッシュ(つうきんらっしゅ)】⇒朝夕の通勤時における交通機関の混雑。

【職業安定所(しょくぎょうあんていじょ)】⇒職業の紹介などを行う公共機関。ハローワーク。

【切り詰める(きりつめる)】⇒節約する。倹約する。

【繰る(くる)】⇒書物などのページを順にめくっていく。

【境遇(きょうぐう)】⇒その人が置かれた家庭環境・経済状態・人間関係などの状況。

【細部(さいぶ)】⇒細かい部分。

【奮戦(ふんせん)】⇒全力でがんばること。

【波瀾万丈(はらんばんじょう)】⇒変化がきわめて激しく、劇的であるさま。人生の浮き沈みがきわめて激しく、劇的であるさま。

【架空(かくう)】⇒想像で作られたもの。

【溺れる(おぼれる)】⇒心を奪われる。理性を失うほど夢中になる。

【一瞥(いちべつ)】⇒ちらっと見ること。

【グロテスク】⇒ひどく異様で、気味の悪いさま。

【大往生(だいおうじょう)】⇒長生きして死ぬこと。

【抽象的(ちゅうしょうてき)】⇒現実から離れて具体性を欠いているさま。

【歓声(かんせい)】⇒喜びのあまり叫ぶ声。

【臆病(おくびょう)】⇒ちょっとした物事にも怖がること。

【無二(むに)】⇒同じものが他に一つもないこと。並ぶものがないこと。

【遊歩道(ゆうほどう)】⇒散歩のためにつくられた道。

【参道(さんどう)】⇒神社や寺に参拝するために設けられた道。

【木漏れ日(こもれび)】⇒樹木の枝葉をかいくぐって漏れるように地上へ射し込む日光。

【見世物(みせもの)】⇒人々から興味の対象として見られること。また、そのもの。

【たかが】⇒取るに足りないさま。問題にするほどの価値のないさま。

【~に足りない】⇒~に値しない。~ほどの価値もない。

【不実(ふじつ)】⇒誠実でないこと。誠意や情味に欠けていること。

【泣き笑い(なきわらい)】⇒泣きながら笑うこと。泣いていることを笑うしかないようなどうしようもない感情を意味する。

【街路樹(がいろじゅ)】⇒街路に沿って並べて植えてある樹木。

『旅する本』のテスト問題対策

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①紙をタバねる。

②注意をハラう。

③会社へツウキンする。

サッカクを利用する。

⑤育児にフンセンする。

⑥雑誌のページをる。

⑦彼はフジツな男だ。

解答①束  ③通勤 ④錯覚 ⑤奮戦 ⑥繰 ⑦不実
問題2「本は自分がいつ生まれたのか知らなかった。」という一文の表現技法を何と呼ぶか?
解答擬人法。
問題3「架空の世界に溺れて、すこしだけ豊かになり、こちらの世界に帰ってくる。」とあるが、「こちらの世界」とはここでは何を表すか?
解答例仕事を失い、職探しに明け暮れる毎日を過ごす、厳しい現実の世界。
問題4「恋の皮肉である。」とあるが、ここでの「恋の皮肉」とはどういう意味か?
解答例信じるに足りない不実な男に限って、魅力的に見えてひかれてしまい、結局は苦しい恋に終わるということ。
問題5

次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。

(ア)本はその時代の書物の形に変身を繰り返しながら、百年千年の時間を、ただ人の手から人の手に旅して生きてきたのである。

(イ)職を失った男は本を読み始め、自分と同じ境遇にある男の物語に共感を持って読み進め、現実に立ち向かうきっかけと耐える力をもらった。

(ウ)男の子はブランコに座り、誰かがおいていった絵本を開き、一匹の犬の不幸な一生を描いた物語を読み、涙を流すこととなった。

(エ)不実な男に幾度と裏切られて失恋した女は、恋の謎を解き明かす、自分だけの物語に魅せられてその本を読み始めた。

解答(ウ)一匹の犬の幸福な一生を描いた物語だった。と本文中にはある。

まとめ

 

以上、今回は『旅する本』について解説しました。この小説は学校の定期テストなどにも出題されます。ぜひノート代わりにして見直して頂ければと思います。