スキマが育む都市の緑と生命のつながり 解説 意味調べ 語句 学習の手引き

『スキマが育む都市の緑と生命のつながり』は、教科書・現代の国語で学ぶ評論文です。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくい箇所もあります。そこで今回は、本作のあらすじや要約、意味調べなどを含め解説しました。

『スキマが育む都市の緑と生命のつながり』のあらすじ

 

本文は、内容により3つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①都市のコンクリートやアスファルトなどのスキマには、豊富な種類の植物が存在する。それはスキマの植物にとって暮らしやすい環境だからだ。多くの植物は、最も不足しやすい光を得るために、他の植物と背丈を競い合う。それは、隣の植物の葉が自分の葉にかぶると、質の悪い光となるからだ。だが、スキマはスペースが狭いため、他の植物がやってくる可能性は低く、太陽光を独り占めできる理想的な環境である。そのため、スキマには多くの植物がやってくる。

②もちろん、都市部にも公園などの緑地がある。これは緑地の管理上、丈夫で手のかからない種類が選ばれているため、人為的に植えられた木が寒々しく並び、命のつながりを感じられない無機的な空間となりがちだ。だが、スキマは違う。スキマの植物が住み始めることで、他の生き物も息づき始める。つまり、都市部において生態系の重要の基盤はスキマの植物なのだ。スキマの植物こそが、都市部の生態系の本質的部分なのだ。

③昨今、都市部の緑の在り方については、有機的なものになりえない反省がなされている。今後、都市部の緑の在り方を考える上では、スキマに息づく生き物たちの役割を積極的に取り組む都市計画があってしかるべきだろう。

『スキマが育む都市の緑と生命のつながり』の要約&本文解説

 

200字要約都市の象徴としてのコンクリートやアスファルトの隙間は、植物にとって暮らしやすい環境なため、豊富な種類が存在する。一方で、都市部にも公園などの緑地があるが、緑地の管理上、無機的な空間になりがちだ。そのため、都市部における食物連鎖に基づく生態系の重要基盤はスキマの植物だと言える。今後、都市部の緑の在り方を考えるうえでは、スキマに息づく生き物たちの役割を積極的に取り組む都市計画があってしかるべきだ。(198文字)

筆者はまず、都市部にあるコンクリートやアスファルトの隙間には、思いがけないほど多くの植物が存在するのだと言います。その理由は、スキマという環境が植物にとって暮らしやすいためです。

植物は日光を浴びて光合成をしないと生きることができません。この光合成に必要な光、二酸化炭素、水の内、最も不足しやすいのが光なのだと筆者は述べています。

なぜなら、植物というのは常に他の植物と背丈を競争することで、自分の葉に他の植物の葉がかぶさってくる場合が多いからです。

ところが、都市部の隙間にある植物というのは狭いスペースであるため、隣に他の植物が入ってくる可能性はたいへん低いです。したがって、多くの植物というのはスキマを好むということです。

そして、この隙間に植物がいることで、そこには葉を食べにくる虫がやって来ます。虫がやってくると、今度はその虫を食べるために小鳥がやってきます。こうして、都市部の生態系が保たれているのだと筆者は述べているのです。

この事を本文中では、「都市部において、命のつながり、すなわち食物連鎖に基づく生態系の、その重要基盤は、スキマの植物なのだ」と書かれています。

一方で、都市部の公園などは、緑地を管理する都合上、殺虫剤などが散布された人為的な木々が並んでいるのが現状です。こうした現状を変えるためにも、スキマに息づく生き物たちの役割を取り組む都市計画が必要だと、筆者は結論付けています。

全体的な筆者の主張をまとめると、「隙間に住む植物がいるからこそ、都市部の生態系は保たれている」ということになります。

『スキマが育む都市の緑と生命のつながり』の意味調べノート

 

【気を留める(きをとめる)】⇒注意を向ける。特に注意を払う。

【夕刻(ゆうこく)】⇒夕暮れ時。夕方。

【すだく】⇒虫が集まって鳴く。

【色彩(しきさい)】⇒色合い。

【糧(かて)】⇒食糧。食物。活力の源泉。

【象徴(しょうちょう)】⇒抽象的なものを具体的なものによって表現すること。

【隙間(すきま)】⇒物と物との間の少しあいている所。

【亀裂(きれつ)】⇒ひびが入った裂け目。

【石畳(いしだたみ)】⇒道路や庭などに、平らな敷石を敷き詰めた所。

【石垣(いしがき)】⇒石を積みあげて造った垣。「垣(かき)」とは、家や庭の区画を限るための囲いや仕切りを表す。

【事欠かない(ことかかない)】⇒不足することがない。※「事欠く」とは「不足する」という意味。

【宝庫(ほうこ)】⇒多く産出するところ。

【全貌(ぜんぼう)】⇒物事の全体のすがた。

【多様性(たようせい)】⇒色々な種類のものがあること。

【後述(こうじゅつ)】⇒あとで述べること。

【豊富(ほうふ)】⇒ふんだんにあること。

【端的(たんてき)】⇒てっとり早く要点をとらえているさま。

【とうてい】⇒どうやってみても。どうしても。

【擬人的(ぎじんてき)】⇒人間でないものを人間に見立てるさま。

【根本的(こんぽんてき)】⇒物事が成り立っているおおもとに関するさま。

【新緑(しんりょく)】⇒夏の初めころの、若葉の緑色。

【緑陰(りょくいん)】⇒青葉の茂ったかげ。こかげ。

【盛夏(せいか)】⇒夏の暑さのさかり。真夏。

【旺盛(おうせい)】⇒活力が非常にさかんなこと。

【抜きん出る(ぬきんでる)】⇒ひときわ高く出る。

【構築(こうちく)】⇒組み立てて築くこと。

【コスト】⇒ここでは、「時間」や「労力」を意味する。

【一城の主(いちじょうのあるじ)】⇒誰からも干渉されず、独立した領分をもつ者。

【生長(せいちょう)】⇒草木が生い育つこと。

【理想郷(りそうきょう) 】⇒想像上の理想的な世界。ユートピア。

【緑地(りょくち)】⇒草木のおい茂っている土地。

【乏しい(とぼしい)】⇒十分でない。足りない。

【定番(ていばん)】⇒ありふれた事柄。きまりきっていること。

【ついばむ】⇒鳥がくちばしで物をつついて食う。

【しばしば】⇒たびたび。幾度も。

【散布(さんぷ) 】⇒まきちらすこと。

【人為的(じんいてき)】⇒自然のままではなく、人の手が加わっているさま。

【等間隔(とうかんかく)】⇒同じ間隔。等しい感覚。

【無機的(むきてき)】⇒生命力を感じられないさま。

【習性(しゅうせい)】⇒同種の動物に一般的にみられる行動特性。

【依存(いぞん)】⇒他に頼って存在または生活していること。

【食物連鎖(しょくもつれんさ)】⇒自然界の生物が、食う食われるの関係で鎖状につながっていること。

【根絶(こんぜつ)】⇒根本から徹底的に絶やすこと。

【一掃(いっそう)】⇒残らず払いのけること。

【刊行(かんこう)】⇒書籍などを印刷して世に出すこと。

【従来(じゅうらい)】⇒今まで。これまで。

【有機的(ゆうきてき)】⇒多くの部分が密接に結びついて、全体を作っているさま。

【造園(ぞうえん)】⇒庭園・公園などをつくること。

【育苗(いくびょう)】⇒苗を育てること。

【排除(はいじょ)】⇒おしのけてそこからなくすこと。

【憩い(いこい)】⇒からだや心を休めること。休息。

【意図(いと)】⇒何かをしようとすること。おもわく。

【対極(たいきょく)】⇒反対の極。対立する極。

【路線(ろせん)】⇒進むべき道筋や方向。方針。

『スキマが育む都市の緑と生命のつながり』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①建物にキレツが入る。

キョウソウをし合う。

③貴重なシゲンを手に入れる。

④植物をカンサツする。

⑤食物レンサの頂点。

⑥悪事をコンゼツする。

⑦障害物をハイジョする。

解答例①亀裂 ②競争 ③資源 ④観察 ⑤連鎖 ⑥根絶 ⑦排除
問題2「スキマはその理解の鍵となる舞台だ。」とあるが、ここでの「理解」とはどういうことを意味するか?
解答例虫やチョウ、鳥といった都市部にいても私たちが見かけるような生き物が、何を食べてどこに暮らしているかを認識すること。
問題3「狭い、乾く、騒がしい、など、擬人的に見ると多くのデメリットを感じるからだ。」とあるが、ここでの「擬人的」とはどういうことを意味するか?
解答例植物の暮らしを、まるでヒトが生活しているかのように見立てること。
問題4「都市部に暮らす私たちにとっては、スキマの植物こそが、都市部の緑やそれを取り巻く生態系の、本質的部分なのだ。」とあるが、「本質的」だと言えるのはなぜか?本文中の語句を用いて説明しなさい。
解答例スキマの植物は都市部における食物連鎖に基づく生態系の重要基盤であるため、もしスキマの植物たちをなくすと、都市部は虫も鳥もいない寒々しい緑だけとなってしまうため。

まとめ

 

以上、今回は『スキマが育む都市の緑と生命のつながり』について解説しました。ぜひ本文の内容を正しく理解して頂ければと思います。