この記事の読了目安: 646

鍋洗いの日々 問題 感想 答え 意味調べノート 学習の手引き 授業

 

『鍋洗いの日々』は、高校教科書・現代の国語で学ぶ文章です。定期テストなどの出題範囲にもなっています。

ただ、本文を読むとその内容が分かりにくい箇所もあります。そこで今回は、『鍋洗いの日々』のあらすじや要約、語句の意味などを含め簡単に解説しました。

『鍋洗いの日々』のあらすじ

 

本文は、行空きにより3つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①私は、憧れ続けていたホテルの調理場に配属された。そこでは洗い場を任され、「鍋屋」と呼ばれた。わくわくして仕事に励んだが、現実は甘くなかった。鍋の底に残ったソースから味を覚えようとしても、コックは塩を入れたりして、味見をすることができなかった。

②私が入ったこのホテルは、完全な能力給で腕次第だった。どの料理人も俺が日本一になるという気持ちで競い合い、熱気が渦巻いていた。私も六年間の修行で西洋料理はひととおり身につけている自負はあったが、今のホテルは日本一の調理場なので、基礎から勉強し直そうと決めていた。だが、ここでは料理人のこつを盗むことすらできないため、ショックだった。

③きっかけは、鍋磨きだった。鍋の内側を磨くのは料理人の基本だが、通常は外側はあまり磨かないため、汚れが頑固にこびりついている。私は休憩時間に外側も磨き始めた。初めはなかなか気が付かれなかったが、徐々にきれいな鍋が増えていくことで状況が変化し始めた。私が仕事に励んでいると、ソースが少し残った鍋が回って来て、シェフを見ると小さくうなづいてくれた。私の必死の行動が伝わったのだ。私は一つ一つの味を覚え、ひそかにメモに書き込んでいった。その後、シェフたちから声がかかるようになり、私は調理場の隅で働く資格を得たのだ。

『鍋洗いの日々』の要約&本文解説

 

200字要約私は憧れていたホテルで調理場に配属されたが、現実は甘くなく、鍋を洗うことしかできず味を覚えることもさせてもらえなかった。道が開けるきっかけは鍋磨きだった。私が鍋の内側だけでなく、外側も一生懸命こすってきれいにしたことで、先輩シェフたちは私の必死な行動を認めて、味を覚えることを許してくれた。その後、調理場から声がかかるようになり、私は調理現場の最前線で学び、そして働く資格を何とかつかみ取ったのだ。(199文字)

筆者は、名門ホテルの調理場で働くことになります。そこでは、色々な味や技術を教わることができるとわくわくしていました。ところが、任されたのはひたすら鍋を洗う仕事で、現実は甘くありませんでした。

この時に、筆者は鍋の底に残ったソースを指ですくい、味を覚えようとしたところ、先輩コックから石鹸水や塩などを入れられて味を盗むことができなかった、とあります。

筆者が働き始めたホテルは、自分の腕次第で給料が決まる完全な能力給でした。そのため、先輩コックたちは新人に自分たちの技術である味を教えるような行為はしなかったということです。

つらい現実に、筆者は焦りが募るようになります。変わり始めたのは、筆者が鍋の外側も洗い始めたことからです。

通常、鍋というのは内側しかきれいにしませんが、筆者はそこに目をつけ、外側も一生懸命こすってきれいにするようになります。

この必死な行動がきっかけで、先輩たちは筆者を仲間として認めるようになります。自分たちの商売道具である鍋をこれ以上ないほど大切にする筆者の姿に、料理人としての心構えが伝わったのだと考えられます。

仲間に加えられた筆者は、ソースの味見をすることを許され、そして調理場で手伝うようにも言われます。ここでの「手伝え」は、本文中だと「よく見て覚えろ」という意味だと述べられています。つまり、「好きなだけ俺たちの技術を盗め」と言ってくれたということです。

厳しい状況にも関わらず、筆者は不満や泣き言を言わず、自分ができることは何かを必死に考えて行動に移しました。そして、料理人として羽ばたいていくためのスタートラインに立つことを許されたことになります。

この文章は、料理人である筆者の体験談が元になっていますが、私たちの人生にも役立たせることができます。日々の仕事というのはつらいこともありますが、大切なのは自分の頭で考えて仕事を作り出すことです。

与えられた仕事を単にこなすのではなく、誰かのために自分で考えて仕事を行うことの大切さをこの作品は教えてくれるということです。

『鍋洗いの日々』の意味調べノート

 

【配属(はいぞく)】⇒人を割り当てて、それぞれの部署に定めること。

【雑用(ざつよう)】⇒雑多な用事。

【各人(かくじん)】⇒おのおの。一人一人。

【息吹に触れる(いぶきにふれる)】⇒生気や活気に触れる。

【励む(はげむ)】⇒つとめる。精を出す。

【思わく(おもわく)】⇒あらかじめ考えていたこと。

【調合(ちょうごう)】⇒数種類のものを混ぜ合わせること。

【もくろみ】⇒計画。企て。

【木っ端みじん(こっぱみじん)】⇒細かく粉々に砕け散ること。

【パイオニア】⇒先駆者。開拓者。

【集う(つどう)】⇒集まる。寄り集まる。

【設備(せつび)】⇒必要な機器として備えつけられたもの。

【導入(どうにゅう)】⇒外部から導き入れること。

【賓客(ひんきゃく)】⇒大切な客人。丁重に扱わなければならない客。

【接遇(せつぐう)】⇒接待。もてなし。

【厨房(ちゅうぼう)】⇒調理場。台所。

【嚆矢(こうし)】⇒物事の最初。はじまり。

【修業(しゅぎょう)】⇒学問や技芸を習って、身につけること。

【明け暮れる(あけくれる)】⇒ある物事に没頭する。終始その物事に熱中する。

【志望(しぼう)】⇒自分はこうなりたいと望むこと。

【雲の上(くものうえ)】⇒手のとどかない所。

【報酬(ほうしゅう)】⇒労働の対価として給付される金銭。

【査定(さてい)】⇒調べた上で決定すること。

【後進(こうしん)】⇒後輩。

【腕を上げる(うでをあげる)】⇒腕前や技術を進歩させる。

【気概(きがい)】⇒困難にくじけない強い意気。

【鍛錬(たんれん)】⇒厳しい訓練を積み、技能や心身を強くきたえること。

【群雄割拠(ぐんゆうかっきょ)】⇒同じような実力をもつ者が、互いに対立して争っていること。

【横溢(おういつ)】⇒気力などがあふれるほど盛んなこと。

【自負(じふ)】⇒自分の知識・才能などに自信と誇りを持つこと。

【場数を踏む(ばかずをふむ)】⇒多くの経験を積む。

【湯煎(ゆせん)】⇒容器を火に直接かけず、湯の中に入れて間接的に熱すること。

【多忙を極める(たぼうをきわめる)】⇒この上なく忙しくなること。

【最前線(さいぜんせん)】⇒仕事などの上で最も活動的な位置。

【募る(つのる)】⇒ますます激しくなる。

【道が開ける(みちがひらける)】⇒打開策が見つかる。解決の方法が見つかる。

【ちびる】⇒先がすり切れて短くなる。※「ちびた鉛筆」で「先がすり切れて短くなった鉛筆」という意味。

【帳面(ちょうめん)】⇒ノート。

【下宿(げしゅく)】⇒一定の期間、あらかじめ契約を結んで部屋を借り、部屋代・食費などを払って居住すること。また、その家。

【腕を振るう(うでをふるう)】⇒自分の技能や腕前を存分に人に見せる。

【全盛(ぜんせい)】⇒この上なく盛んなこと。

【健在(けんざい)】⇒ それまでと変わりなく、活動・存在していること。

『鍋洗いの日々』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①仕事にハゲむ。

②料理のシュギョウをする。

③年俸をサテイする。

④あせりがツノる。

チョウメンに書き込む。

ゼンセイ期の活躍。

解答①励 ②修業 ③査定 ④募 ⑤帳面 ⑥全盛
問題2「現実はそんなに甘くなかったのだ。」とあるが、具体的にどのような点が甘くなかったのか?
解答例調理場にいる名人たちに直接話を聞き、料理を習うことができると思っていたが、そのようなことはしてもらえなかった点。
問題3「塩を入れてくる人もいた。」とあるが、コックが塩を入れる理由は何だと考えられるか?
解答例鍋に残ったソースの味を筆者に盗まれないようにするため。
問題4「ショックだった。」「焦りばかりが募った。」とあるが、筆者がこのように思ったのはなぜか?
解答例以前働いていた店ではいいポジションだったが、今のホテルでは「洗い場」に配属され、料理をするどころか料理人のこつを盗むことさえできなかったため。
問題5当番のシェフを見ると、「小さくうなずいてくれた」とあるが、これはどのような意味だと考えられるか?
解答例鍋に残ったソースを味見してもよいという意味。
問題6筆者がこのホテルで料理人として認められた理由を答えなさい。
解答例鍋の内側だけではなく、外側もきれいに磨くという他人はやらないことを必死に行ったため。

まとめ

 

以上、今回は『鍋洗いの日々』について解説しました。ぜひノート代わりにして見直して頂ければと思います。

The following two tabs change content below.

国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。