「主観的」と「客観的」は、どちらも普段の文章からビジネス用途まで幅広く使われています。ところが、意味の違いを聞かれると多くの人が答えにくいかと思われます。
そこで今回は、「主観的」と「客観的」の違いを具体例を交え簡単に分かりやすく解説しました。後半では「類義語」や「対義語」「英語訳」などにも触れています。
主観的と客観的の意味
まず、それぞれの意味を調べると次のように書かれています。
【主観的(しゅかんてき)】
⇒自分ひとりのものの見方・感じ方によっているさま。
【客観的(きゃっかんてき)】
⇒特定の立場にとらわれず、物事を見たり考えたりするさま。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「主観的」とは「自分一人だけのものの見方や感じ方によっているさま」という意味です。
「主観」は「主(主体・自分)」が「観(み)る」ですから、自分の見方を表した言葉です。したがって、自分の立場からの見方や考えのことを「主観的」と言うことになります。
一方で、「客観的」とは「特定の立場にとらわれずに、物事を見たり考えたりするさま」という意味です。
「客観」は「客(他者)」が「観(み)る」ですから、他の人の見方を表した言葉です。そのため、自分の考えではなく、第三者の立場からの考えのことを「客観的」と言うことになります。
整理すると、
「主観的」=自分の立場からの見方や考え。「客観的」=第三者の立場からの考え。
となります。
主観的と客観的の違い
「主観的」と「客観的」の違いをもう少し掘り下げてみましょう。わかりやすいように、下記に具体例を用意しました。
- Aさん「この部屋は暑い。」
- Bさん「この部屋は暑くない。」
- Cさん「この部屋はちょうどいい温度だ。」
上の3つの文は、いずれも「主観的」な発言だと言えます。
なぜなら、みんな自分の立場から見た感想を言っているだけで、他の人からすれば見方が異なるからです。
一方で、以下のような文章は「客観的」な発言だと言えます。
D君「この部屋の温度を測ったら40度であった。とても暑い。」
この場合、部屋の温度が40度であることは誰の立場から見ても変わりようのない事実です。
その結果、「とても暑い」と言うのは理にかなっています。実際にこの部屋にいれば、100人中100人が暑いと感じるでしょう。
つまり、「主観的」とは頭の中で考えた自分にしか当てはまらないことを言い、「客観的」とは具体的な数字を使った事実など自分以外にも広く当てはまることを言うのです。
もう一つ分かりやすい例を挙げてみましょう。
「時間」という「概念」は、みんな平等に一日24時間与えられています。
しかし、平等に見える時間にも「主観的」な時間と「客観的」な時間が存在します。
例えば、同じ30分でも、スポーツが大嫌いな人にとってみれば、運動をする時間は長く感じるでしょう。
一方で、ゲームが大好きな人にとってみれば、30分という時間は短く感じるはずです。
このように、嫌なことをしている時間は長く感じ、好きなことをしている時間は短く感じるのは、頭の中の感情によって時間の感覚が異なるからです。
そのため、「主観的」な時間というのは、その時々の状況や感情により変化するものなのです。
一方で、「学校の試験」のようなものはどうでしょうか?
試験というのは、みんなで一斉に同じ時間で始め、最後も同じ時間に終わります。テストの時間が好きな人も嫌いな人も、感情に関係なく同時に終了します。
その理由は、人の頭の中の計算(体内時計)などではなく、時計のような物体でちゃんと時間を計測しているからです。
このような時間は、場所や感情などに左右されないため、客観的な時間だと言えます。
つまり、「客観的」な時間というのは状況や感情に左右されず、みんなに共通なものと定義することもできるのです。
主観的と客観的の類義語
次に、それぞれの類義語を見ていきます。
【主観的の類義語】
「主観的」の類義語はどれも、「自分だけの見方」を表す言葉で言い換えることができます。
「独断的」や「一面的」などは、まさにその人だけの見方を表した言葉だと言えます。
中でも一番意味が近いのが「主体的」です。「主体」とは「ものを思う人間のこと」を指します。
すなわち、「主体的」とは「自分の考えや判断によって、行動すること」を表します。「主体的行動をする」などの使い方が主なものです。
一方で、「客観的」の類義語は以下の通りです。
【客観的の類義語】
「客観的」の類義語は、「自分の感情や気持ちを排除した冷静な見方」を表した言葉です。主に「論理的・分析的」といった言葉で言い換えることができます。
いずれも個人的な感情を抜きにして、数字やデータなどを使って物事を見る際に使う言葉です。
両者はお互いが対義語の関係なので、当然、類義語も反対語同士ということになります。
主観的と客観的の英語訳
「主観的」と「客観的」は、英語だと次のように言います。
「主観的」⇒「subjective」
「客観的」⇒「objective」
例文だと、それぞれ次のような言い方です。
It was a subjective judgment.(それは主観的な判断であった。)
This is a objective idea.(これは客観的な考えです。)
「subjective」は他に「主観の・想像上の」などの意味もあります。対して、「objective」は他に「目標・目的・目標地点」など名詞としての意味もあります。
どちらも頻出の英単語なので、合わせて覚えておくとよいでしょう。
主観的と客観的の使い方・例文
最後に、「主観的」と「客観的」の使い方を実際の例文で確認しておきます。
【主観的の使い方】
- それはあなたの主観的な考えである。
- 彼の判断は主観的なもので、公平なものとは言えない。
- 小説を読み終わった後、彼女は主観的な感想を述べた。
- 主観的な判断により、全ての物事を決めると偏りが生まれる。
- 主観的な見方は、周りからすると受け取り方が異なることが多い。
【客観的の使い方】
- 客観的なタイプかどうか性格診断を行った。
- 彼は細かいデータを用いた客観的な主張が得意である。
- ビジネスでは、数字を用いて客観的に分析をすることが重要だ。
- 裁判官は感情に左右されず、客観的に物事を見なくてはいけない。
- 数学の問題を解く時には、客観的な解答手順が求められる。
補足すると、よく間違われる意味として「主観」≠「偏見や勘違い・思い違い」というのがあります。あくまで、「主観」というのは「自分の立場からの見方や考え」です。
過去のセンター試験だと、「主観」を「特定の主義に基づく、一つの方向に偏った主観的な分析」と記述して誤りの選択肢とするものがありました。混同しないように気を付けましょう。
「×」⇒「偏見や勘違い・思い違い」
「〇」⇒「自分の立場からの見方や考え」
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「主観的」=自分の立場からの見方や考え。(自分にしか当てはまらない)
「客観的」=第三者の立場からの見方や考え。(自分以外にも広く当てはまる)
「類義語」=(主)「主体的・独断的・感情的・一面的」など。(客)「中正・公正・論理的・合理的・分析的」など。
「英語訳」=「subjective(主観的)」「objective(客観的)」
どちらも普段の文章でよく使われる言葉です。これを機に両者の違いを正しく理解して頂ければと思います。