「卒業」と「修了」は、どちらも履歴書の学歴欄において表記する名称です。ただ、両者の使い方は場面によって異なってきます。
特に大学や大学院、専門学校などに通う学生の方は、就職活動の際にどちらを書くか迷うと思われます。そこで本記事では、「卒業」と「修了」の違いや使い分けについて詳しく解説しました。
卒業と修了の違い
まず、それぞれの違いを簡潔に述べると以下のようになります。
「卒業」=学校の全課程を学び終えること。
「修了」=一定の課程を終えること。
「卒業」とは「学校におけるすべての課程を学び終えること」です。
例えば、小学校であれば6年間、中学や高校であれば3年間学校に通い、問題なく全ての課程を学び終えることを「卒業」と言います。
大学であれば、留年がなければ通常4年間が一般的です。専門学校であれば、2年~4年間ほど専門的な知識を学びます。
これらの期間で単位をしっかりと取得し、問題なく全課程を学び終えることを「卒業」と言うのです。
対して、「修了」の方は「(学校の中で)一定の課程を終えること」です。
例えば、中学2年生を終えて中学校3年生になると、「中学2年の課程を修了した」と言うことができます。
あるいは、専門学校でも最初の1年を終えて2年生になれば、「専門学校1年目の課程を修了した」と言うことができます。
つまり、学校における個々の課程を「修了」することを重ね、すべての課程を終えれば、晴れて「卒業」ということになるのです。
卒業の意味を詳しく
「卒業」の意味をもう少し詳しく見てましょう。「卒業」は、辞書では次のように定義されています。
【卒業(そつぎょう)】
①学校の全課程を学び終えること。
②ある段階や時期を通り過ぎること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
すでに説明したように、「卒業」は「学校の全課程を学び終えること」です。ここでいう「学校」とは、以下のようなものです。
幼稚園・小学校・中学校・高等学校・中等教育学校・大学・高等専門学校・専門学校・専修学校。
学校教育法では、学校の定義の中に「大学」も含まれています。
「大学」と聞くと何となく「学校ではないのでは?」と思うかもしれませんが、「大学」も法律上は「学校」です。
したがって、「大学」と名の付くものであれば、どの学部であろうと全課程を学び終えれば「卒業」ということになります。
その他、義務教育以外の幼稚園や専門学校、専修学校などの専門的な知識を学ぶ所も「卒業」を使います。
なお、辞書の説明にもあるように、「卒業」には「ある段階や時期を通り過ぎること」という意味もあります。
この意味の場合は、一種の比喩表現として使うと考えて下さい。
【例】⇒子供がおむつを卒業した。タバコを卒業した。
「修了」には、当然このような意味はありません。
修了の意味を詳しく
続いて、「修了」の意味も辞書で引いてみます。
【修了(しゅうりょう)】
⇒学業などの一定の課程を終えること。「全課程を修了する」「修了証書」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「修了」とは「学業などの一定の課程を終えること」です。
「学業」とは簡単に言うと「勉強する知識のこと」だと考えて下さい。
例えば、数学や英語などの義務教育で学ぶ基礎知識、物理や化学、プログラミング、会計、料理などの専門的な知識が「学業」に含まれます。
これらの知識を一定期間学び、その課程を終えることができれば「修了」と呼べるのです。
「修了」の方は、「一定」という点がポイントです。つまり、全課程を身に着ける必要はなく、ある一定の割り当てられた部分のみを身に着ければよいということです。
したがって、中学2年からの1年間であろうと、専門学校1年からの1年間であろうと、ある一定の割り当てられた課程を終えれば、それは「修了」と呼びます。
卒業と修了の使い分け
では、「卒業」と「修了」の使い方を整理しておきましょう。以下は、履歴書で書くことを想定した上での使い分けです。
小学校・中学校・高校
「小学校・中学校・高校」などは、「卒業」を用います。
これは「卒業式」などの言葉があるので、間違えるということはないかと思われます。以下、履歴書の記入例です。
【小学校を卒業した場合の書き方】
○○年 ○○月 ○○小学校 入学
○○年 ○○月 ○○小学校 卒業
【中学校を卒業した場合の書き方】
○○年 ○○月 ○○中学校 入学
○○年 ○○月 ○○中学校 卒業
入学と卒業は必ずセットで書き、どちらか一方が抜けるということはないようにします。
大学・短大・専門学校・高専
「大学・短大・専門学校・高専」なども「卒業」を用います。こちらも記入例です。
【大学を卒業した場合の書き方】
○○年 ○○月 ○○大学 ○○学部 ○○学科 入学
○○年 ○○月 ○○大学 ○○学部 ○○学科 卒業
履歴書の学歴欄には、学部だけでなく学科の方も書きます。また、小学校や中学校と同じく、「入学」と「卒業」の両方を書くようにします。
ただし、新卒で就職活動をする場合は、厳密には大学を卒業していない段階で履歴書を書くため、「卒業見込み」と表記します。
○○年 ○○月 ○○大学 ○○学部 ○○学科 卒業見込み
一度就職した後に転職するような場合は、前述のように「卒業」と表記します。
その他、卒業せずに中退した場合は文字通り「中退」と書くようにします。
大学院(修士・博士)
大学院の場合は、「卒業」ではなく「修了」を用います。
大学院には「修士課程」と「博士課程」があり、一定の単位取得以外に「修士」と「博士」の取得も教育課程に含まれます。
流れとしては、「修士」を取得した後に「博士」を取得すれば、晴れて大学院を卒業ということになります。
ただ、修士の学位はほとんどの大学院生が取得できるのに対し、博士の学位取得は非常に困難だと言われています。
通常は、大学の学部が4年生の場合、修士課程は2年間、博士課程は3年間のコースが多いですが、大学院在学中に博士の学位を取得できる人はほとんどいません。
この事から、大学院生の多くは博士号を取得しないまま大学院を去ることになり、厳密には卒業をしないまま履歴書を書く人が大半ということになります。
そのため、「大学院」に関しては「修了」を使うことになるのです。以下、「大学院修士課程」の場合の記入例となります。
【大学院修士課程を修了した場合の書き方】
○○年 ○○月 ○○大学大学院 ○○研究学科 ○○学修士課程 入学
○○年 ○○月 ○○大学大学院 ○○研究学科 ○○学修士課程 修了
【大学院修士課程をまだ修了していない場合の書き方】
○○年 ○○月 ○○大学大学院 ○○研究学科 ○○学修士課程 入学
○○年 ○○月 ○○大学大学院 ○○研究学科 ○○学修士課程 修了見込み
その他、「博士課程」の場合も「修了」を用います。
【大学院博士課程を修了した場合の書き方】
○○年 ○○月 ○○大学大学院 ○○研究学科 ○○学修士課程 入学
○○年 ○○月 ○○大学大学院 ○○研究学科 ○○学修士課程 修了
○○年 ○○月 ○○大学大学院 ○○研究学科 ○○学博士課程 入学
○○年 ○○月 ○○大学大学院 ○○研究学科 ○○学博士課程 修了
【大学院博士課程をまだ修了していない場合の書き方】
○○年 ○○月 ○○大学大学院 ○○研究学科 ○○学修士課程 入学
○○年 ○○月 ○○大学大学院 ○○研究学科 ○○学修士課程 修了
○○年 ○○月 ○○大学大学院 ○○研究学科 ○○学博士課程 入学
○○年 ○○月 ○○大学大学院 ○○研究学科 ○○学博士課程 修了見込み
なお、博士課程では仮に単位を取得できても博士論文が合格しないと学位を取得できません。
この場合は、博士の学位を取得しないまま大学院を離れることになるので、「単位取得退学」と記入します。
○○年 ○○月 ○○大学大学院 ○○研究学科 ○○学修士課程 入学
○○年 ○○月 ○○大学大学院 ○○研究学科 ○○学修士課程 修了
○○年 ○○月 ○○大学大学院 ○○研究学科 ○○学博士課程 入学
○○年 ○○月 ○○大学大学院 ○○研究学科 ○○学博士課程 単位取得退学
職業訓練学校
「職業訓練学校」の場合は、「修了」を用います。
「職業訓練学校」とは「ハローワークが主催する再就職者を支援するための施設」のことです。一定の技能や知識などを学び終えるという意味で、「卒業」ではなく「修了」を用います。
ただ、「職業訓練学校」については学歴ととらえるか職歴ととらえるかで見解が分かれています。そのため、現在では「自己PR」欄に書くのが一般的です。
もしもどちらの欄に記入するか迷った場合は、「自己PR」欄に記入しておくのが無難と言えるでしょう。
本記事のまとめ
以上、本記事のまとめです。
「卒業」=学校におけるすべての課程を学び終えること。
「修了」=(学校の中で)一定の課程を終えること。
「使い分け」=大学院、職業訓練所など一定の課程を終える場合は「修了」を使う。それ以外の小学校、中学校、高校、専門学校、大学などはすべて「卒業」を使う。
大学なども含めた全国の学校は、個々の課程というものが必ず設定されています。その個々の課程を「修了」することを重ね、学校におけるすべての課程を学び終えることが「卒業」だと覚えておきましょう。