「状況」と「状態」にはどのような違いがあるのでしょうか?
どちらも普段からよく目にしますが、似たような場面で使われることが多いです。また、場合によっては「情況」が使われることもあります。
そこで今回は、「状況」と「状態」の使い分け、さらに「情況」についても解説しました。
状況の意味
まずは、「状況」の意味からです。
【状況(じょうきょう)】
⇒移り変わる物事の、その時々のありさま。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「状況」とは「移り変わる物事の、その時々のありさま」という意味です。主に社会や組織、仕事関係の様子などを表す際に使われます。
例えば、「事故現場の状況」であれば「事故発生からの時間」「パトカーの台数」「野次馬の人数」などを表したものとなります。また、「売上の状況」であれば「売れている商品」「販売個数」「お客の層」「前年との比較額」などを表したものとなります。
つまり、その時々の物事の様子や雰囲気などを意味する言葉が「状況」ということです。この時の様子というのは、基本的に周りや周辺などを含めた広い範囲のものとなります。
状態の意味
続いて、「状態」の意味です。
【状態(じょうたい)】
⇒人や物事の、ある時点でのありさま。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「状態」とは「人や物事の、ある時点でのありさま」という意味です。「状態」は人やモノに対して使うのが特徴です。
例えば、「健康の状態」であれば「体はちゃんと動くか?」「内臓に異常はないか?」「メンタルは問題ないか?」といった人の様子を表したものとなります。
また、「車の状態」であれば「傷や汚れがないか?」「臭いはしないか?」「エンジンはちゃんとかかるか?」といったモノの様子を表したものとなります。
つまり、ある時点における人やモノの様子を表した言葉が「状態」ということです。「状態」を使う際は、対象そのものの様子を表すというのがポイントです。この時に、対象以外の周りの様子は含まれないのが重要となります。
状況と状態の違い
ここまでの内容を整理すると、
「状況」=その時々の物事の様子。「状態」=ある時点での人やモノの様子。
ということでした。
両者は、二つの点から比較すると分かりやすいです。
一つ目は、「周囲の様子を含めるかどうか」です。
「状況」は、基本的に物事に対して使います。そのため、物事以外の周囲の様子も含めた出来事に使うのが一般的です。
一方で、「状態」の方は人やモノ自体に対して使います。したがって、こちらは周りの様子というよりも対象そのものの様子を表すような際に使うのです。
二つ目は、「時間的な違い」です。
「状況」は、その時々の様子を表した言葉です。そのため、「過去はAだったけど現在はB」のように時間的な経過も含めた様子を表します。
対して、「状態」の方はある時点での様子を表した言葉です。つまり、こちらは「現在の状態はA」のように、時間的に固定した様子を表した言葉となります。
以上、まとめますと、
「状況」=物事に使う。(時間の経過や周りも含めた様子)
「状態」=人やモノに使う。(対象を固定的に見た様子)
となります。
要するに、「状況」の方が空間的に広い概念ということになります。
情況の意味
同じ読み方の言葉で、「情況(じょうきょう)」があります。
「情況」とは「移り変わる物事の、その時々のありさま。」という意味です。つまり、意味としては「状況」と同じということになります。
多くの辞書で調べても、「状況」と「情況」は一つの項目として載っています。ただ、一部の辞書では、「状況」=外からみたありさま。「情況」=物事の動きゆく様子。のように別の意味を記述しているものもあります。
しかし、実際のところ、「状況」と「情況」を区別して使うケースはほとんどありません。
昭和29年の「法令用語改正要領」でも、「状況」と「情況」は統一して「状況」を用いるということが決まっています。したがって、一般的な場面では「状況」のみを使うと覚えておけば問題ありません。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。
【状況の使い方】
- 事故現場の状況をリポーターが詳しく伝えた。
- 野球は状況に応じて守備位置を変える必要がある。
- 教室に入ると、いつもと状況が違うことに気づいた。
- 今までの状況が好転し、良い運が運が回ってきたようだ。
- 初戦でいきなり負けたため、危機的な状況に追い込まれた。
【状態の使い方】
- この車はとても状態が良いので、高く売れるでしょう。
- 現在の関東地方は大気の状態が非常に不安定である。
- 普段と同じ自然な状態で試験に臨むつもりでいます。
- 今の彼女の精神状態は、非常に悪いと言えるだろう。
- 最近調子がいいのは常に身体の状態を把握しているためだ。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「状況」=移り変わる物事の、その時々のありさま。
「状態」=人や物事の、ある時点でのありさま。
「情況」=「状況」と同じ意味だが、一般的には使わない。
「違い」⇒「状況」は「時間の経過や周りも含めた様子」で「物事」に使う。「状態」は「対象を固定的に見た様子」で「人やモノ」に使う。
どちらも普段からよく使われている言葉ですが、違いが分かりにくいです。ぜひ正しい意味を理解した上で使用して頂ければと思います。